今月の音遊人
今月の音遊人:木嶋真優さん「私は“人”よりも“音楽”を信用しているかもしれません」
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まるで一曲のシンフォニーのようなアルバム ~上原ひろみ『ALIVE』~
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2014.6.19
これはもう、とてつもなく、カッコよくてスゴい“アルバム”なのだ。
あまりにも月並みだけど、こう言うしかないのである。
アンソニー・ジャクソン(コントラバスギター)とサイモン・フィリップス(ドラム)という強力過ぎるメンバーとのトリオ・プロジェクトの3作目。この『ALIVE』というタイトルには、「生きる」と「a live(ひとつのライブ)」の二つの意味が込められている。
さて、曲を聴いていく。
ドラマチックかつスリリングに幕を開ける「ALIVE」、メランコリックな展開とアンソニー・ジャクソンのソロにグッとくる「WANDERER」、グルーヴ感が半端ない「DREAMER」、「PLAYER」、「WARRIOR」、AOR好きにも気に入られそうな「SEEKER」、哀愁の「FIREFLY」と「SPIRIT」、特に黒っぽいフィーリングたっぶりの「SPIRIT」はモダンジャズや古いソウルのファンでも感動必至だと思う出来。そして、〈トゥー・ビー・コンティニュード〉という感じが満載の「LIFE GOES ON」はアルバムの締めくくりというか、早くも次なる旅に向かって走り出していくようだ。
個人的には、サイモン・フィリップスの超絶ドラムが全編にわたって楽しめるのがいい。
いつも芯の通ったコンセプトを持ってアルバムを作る上原ひろみのことだから、ある程度想定はできたけれど、これはもうアルバム一枚が壮大なシンフォニーのようで、思わずため息が出てしまう。こんなふうに自由自在に音楽を操れたらさぞかし楽しいだろうな、と。もちろん、上原の並み外れた努力と、才能があってこそ、とわかってはいるけれど。
正直に告白すると、僕は上原ひろみの熱心なファンであるとはいえない。たまにライブを観たりアルバムを聴くたびに「スゴいなぁ」と感動するのだけど、どこか、アクロバティックな面ばかりに気を取られてしまって、落ち着かない感じがする。
だけど本作は、どの曲も絶えず動き回っているように思える一方、腰の座った印象も受ける。3人の、ここ数年のライブ活動で培われた信頼関係の賜物なのだろう。
ライブだと、3人のインタープレイも、もっとスゴいんだろうなぁ、と思いつつ、初回限定盤に付いているDVDを観るとしよう。DVDには、「FIREFLY」と「SPIRIT」のライブ、そしてトレイラーが収められている。
Hiromi The Trio Project performing “Alive” (live in the studio)
『ALIVE』
演奏:上原ひろみ(ピアノ)、アンソニー・ジャクソン(コントラバスギター)、サイモン・フィリップス(ドラム)
発売元:ユニバーサルミュージック
価格:初回限定盤(SHM-CD+DVD) UCCT-9029 3,200円(税抜)
プラチナ盤(SHM-CD) UCCT-40001 3,300円(税抜)
通常盤(SHM-CD)UCCT-1244 2,600円(税抜)
発売日:2014年5月21日
待望の日本ツアー決定!
●上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス 『ALIVE』 日本ツアー2014