Web音遊人(みゅーじん)

クラシック・キャラバン2021 クラシック音楽が世界をつなぐ~輝く未来に向けて~コンサート全国ツアーがスタート

コロナ禍の現在、クラシック音楽界はコンサートの中止や延期が相次ぎ、アーティストをはじめ数多くの事業者、芸術団体、関連産業などが困難に直面している。最近は徹底した感染対策を実践し、少しずつコンサートも行われるようになり、私も対面のインタビューなどが可能になっているものの、まだ不安要素は多く、さまざまな模索が続いている。

アーティストに話を聞くと、この時期にはレパートリーを広げたり、以前演奏した作品をもう一度見直したり、楽譜の整理をしたりと、スケジュールに追われて時間がないときにはできなかったことをしていると語る人が多いが、やはり海外公演を含めコンサートがなくなったことに心を痛めている人が目立つ。

音楽家にとって、生の演奏は命。ホールを埋め尽くした聴衆の前で演奏し、聴き手と一体感を抱いて作品を享受することこそ演奏の醍醐味である。こうした場が閉ざされてしまうと、演奏する側も聴く側も、そしてすべての音楽関係者も、閉塞感に陥ってしまう。

もちろん、多くの人々の尽力により、少しずつ生の演奏を聴く機会が増えてきたが、久しぶりにホールに集う聴衆の嬉々とした笑顔、生の音楽を全身にまとう喜びは、ホール全体を輝かしい空気に包み込んでいる。ステージでは聴衆を前に演奏できるアーティストたちの晴れ晴れとした表情が際立ち、いまこそ持てる限りのすばらしい演奏を行おうと、みな驚異的な集中力を発揮している。

こうしたなか、クラシック音楽界が一致団結し、クラシックの名曲を生演奏によって全国のファンに届けようという試みが始まることになった。題して「クラシック・キャラバン2021 クラシック音楽が世界をつなぐ~輝く未来に向けて~」。各地の大ホールではオーケストラ編成による華麗なガラ・コンサートやオペラ・アリア、ベートーヴェンの『第九』、小ホールでは今年没後100年を迎えるサン=サーンスの『動物の謝肉祭』、ストラヴィンスキーの『兵士の物語』などがプログラムに組まれている。

各会場、緊急事態宣言の対象地域では収容定員の50%を上限にするなど感染症対策に最大限配慮して開催される。声援ではなく、大きな拍手で気持ちを伝えたい。

 

クラシック・キャラバン2021 クラシック音楽が世界をつなぐ~輝く未来に向けて~
詳細はこちら

伊熊 よし子〔いくま・よしこ〕
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)など。2010年のショパン生誕200年を記念し、2月に「図説 ショパン」(河出書房新社)を出版。近著「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書 電子書籍有り)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)。共著多数。
伊熊よし子の ークラシックはおいしいー

facebook

twitter

特集

今月の音遊人:葉加瀬太郎さん

今月の音遊人

今月の音遊人:葉加瀬太郎さん「音楽は自分にとって《究極のひまつぶし》。それは、この世の中でいちばん面白いことだから」

11491views

ジャズとロックの関係性

音楽ライターの眼

ジャズ・ギターの革命児がビートルズに出逢うまでのプロローグ

3951views

楽器探訪 Anothertake

人気トランペッターのエリック・ミヤシロがヤマハとタッグを組んだ、トランペットのシグネチャーモデル「YTR-8330EM」

4550views

楽器のメンテナンス

楽器のあれこれQ&A

大切に長く使うために、屋外で楽器を使うときに気をつけることは?

52472views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

11209views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

思い描く声が出せたときの感動を分かち合いたい/ボイストレーナーの仕事(後編)

9162views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

7081views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6693views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22413views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

5724views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

5183views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9944views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

17160views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

30599views

J・シュトラウス2世の《美しく青きドナウ》は、オーストリアの第2国歌のような存在

音楽ライターの眼

J・シュトラウス2世の《美しく青きドナウ》は、オーストリアの第2国歌のような存在

20735views

オトノ仕事人

音楽をやりたい子どもたちの力になりたい/地域音楽コーディネーターの仕事

8835views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

5798views

NU1XA

楽器探訪 Anothertake

アコースティックピアノを演奏する喜びをもっと身近に。アバングランド「NU1XA」

2621views

水戸市民会館

ホール自慢を聞きましょう

茨城県最大の2,000席を有するホールを備えた、人と文化の交流拠点が誕生/水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)

4960views

山口正介 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

この感覚を体験すると「音楽がやみつきになる」

8380views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

26953views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5375views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25128views