Web音遊人(みゅーじん)

ギグリーマン

われら音遊人:誰もが聴いたことがあるヒット曲でライブに来たすべての人を笑顔に

2019年末からのコロナ禍は、アマチュアバンドの活動にも多大な影響を及ぼしています。
活動休止を余儀なくされるバンドも少なくないなか、感染防止対策を徹底しながら、「今できること」に精いっぱい取り組んでいるバンドの様子をご紹介します。

4人の個性がアレンジになるアマチュアセッションバンド

銀座3丁目のビルの3階。偶数月第2火曜の「MR.OLDIES」から聴こえてくるのは思わず体が動いてしまうポップスの数々。演奏するのは結成8年のギグリーマンだ。

ギグリーマン

2022年10月11日に「MR.OLDIES」で行われた定期ライブ。ライブは2ステージで、この日もロックからポップスまで14曲を熱演。

2013年7月に会社の同僚だったヒロさんをタツさんが誘い、新橋の音楽居酒屋「さんろすLIVE」でセッションしたことが始まり。2人ではつまらないからと、当時のドラムのハマさんと現在も一緒に活動しているベースのブンさんを誘い、4人構成に。2014年に「さんろすLIVE」で行われた東日本大震災の復興ライブに出演することとなり、タツさんが“ギグするサラリーマン”で「ギグリーマン」と命名。当時は全員がサラリーマンで、会社帰りにワイシャツ+ネクタイで演奏をしていた。

バンドでさまざまなイベントに参加しつつ、ヒロさんは個人的に憧れのあったライブバー「MR.OLDIES」のオーディションを受けた。無事合格したが、10人の客を連れて来るという条件を一人でクリアするのは難しく、バンドで出ようとメンバーに声をかけた。以来、この店をホームに演奏を続けている。

ライブは毎回大盛況だ。ロック、ポップスを中心にオールディーズ、歌謡曲とジャンルは幅広く、年代問わず楽しめる。「せっかくライブに来てくれたのに、知ってる曲がなかったとはしたくないんです」とヒロさん。演奏中はお客さんも一緒に歌を口ずさみ、スイングする。

「基本的に僕がよく聴いていた曲を演奏します。季節感や話題性などを考えながら、さまざまなジャンルの曲を織り交ぜています」

集まっての練習は、ライブの前に2回程度だ。メンバー全員、担当する楽器の演奏歴は学生の頃から。「楽器スキルのあるメンバーだから、楽譜を渡しておけば、集まったときにはパッとすぐにセッションができちゃうので、自由度が高いんです」とタツさん。練習に時間をかければさらにクオリティは上がるが、レパートリーもジャンルも広く、限られた時間のなかでどこまで持っていけるかは毎回のチャレンジだという。

左からドラムのシノケンさん、ベースのミックさん、ギターのタツさん、ボーカル&ピアノのヒロさん。

「たくさん練習すれば間違いも減るけど、逆に緊張感がなくなるというデメリットもある。次にどうなるのか、ドキドキしながら演奏するのがいいんですよ」とミックさん。メンバーの個性もひとつのアレンジとなり、それらが混ざり合ったものがギグリーマンの音楽となる。

音楽を奏でる楽しさをコロナ禍で痛感

「コロナ禍までは定期的にライブができていて、活動は順調でした。コロナの流行に加えて、お店が閉店してしまったのがきつかった。もうダメだなと思いましたね」とヒロさん。

2020年2月のライブを最後に活動休止。喪失感を抱えながらも演奏できる機会はないかとリサーチし、バンド結成の地・新橋に戻ったり、横浜に繰り出したり、自由が丘や新宿でも演奏した。そうしている間に「MR.OLDIES」が場所を変えて再開することが決定。ギグリーマンにも声がかかった。

2020年後半に行ったライブの様子。この時は、女性ドラマーのミノリさんとベースのブンさんが演奏。(写真提供:ギグリーマン)

「コロナ禍を経て、やっぱり音楽の楽しさを痛感しました。それまでは当たり前のように演奏していたけど、演奏すること自体を禁じられているようでとてもつらく、閉塞感のようなものがあって、普通に演奏できることがなんてすばらしいんだろうって。本当にうれしいです」

取材日のライブに応援に来ていた元ドラムメンバーのミノリさん(右から2番目)と「MR.OLDIES」のオーナー・傳田啓登さん(右端)と。

1980年代の楽曲を中心に、これまでに200曲以上を演奏してきた。今後はこれまで積極的ではなかったオリジナル曲にも挑戦していく予定だ。タツさんのコードにヒロさんが歌詞をのせる。どんな楽曲が発表されるのかが楽しみだ。

お客さんが飲んで食べて過ごす時間に、自分たちの音楽でさらに味付けができれば。みんなが楽しめる曲を披露するために、ギグリーマンは今夜も“ギグ”する。

ギグリーマンのQ&A

Q.コロナ禍でチャレンジしたことは?
YouTubeに動画をアップするようにしました。生配信にもチャレンジしたのですが、初めての生配信ライブはトラブルで配信できず……(笑)。今後はオリジナル曲を発表する場にするなど、ライブとは違った視点で活用して、生配信にも再チャレンジしたいなと思います。

Q.ファッションのこだわりは?
ギグリーマン最初のライブからこの4色サテンシャツです。ヒロは真ん中だから赤。戦隊シリーズですね(笑)。これを着るとモチベーションが上がりますし、チーム感を出すのにも、このシャツが一役買ってます!

バンド紹介

●バンド名:ギグリーマン
●結成時期:2014年3月
●活動内容:東京・銀座3丁目の「MR.OLDIES」で偶数月第2火曜に定期ライブを開催
●練習頻度:ライブ直前に2回程度、メンバーで集まって練習を行う
●平均年齢:58歳
●メンバー:タツ/礒 弘達(ギター)、ヒロ/井上博行、(ボーカル、ピアノ)、ミック/戸田道男(ベース)、ブン/吉野文隆(ベース)、シノケン/篠原健二(ドラム)
オフィシャルサイト

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photo/ 田中真光
取材協力/MR.OLDIES 東京都中央区銀座3-14-16 第二ミズホビル3F 03-6264-1433

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