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今月の音遊人:今井美樹さん「私にとって音楽は、“聴く”というより“浴びる”もの」
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2021.1.5
1986年、シングル『黄昏のモノローグ』で歌手デビューしてから2020年に35周年を迎えた今井美樹さん。美しい声とその世界観に溢れた歌は、多くの人々に愛されています。アニバーサリーイヤーを迎える今井さんにとっての音楽についてお聞きしました。
常に音楽は日常に寄り添ってくれていますし、最近はほぼ無意識のうちに色々なジャンルの曲を聴いていることもあり、“これ!”と1曲に絞るのがとても難しいのですが……。青春時代、意識して集中的に聴いたということで、オスカー・ピーターソンのアルバム『ガール・トーク』の第1曲、『オン・ア・クリア・デイ』を挙げさせていただきます。オスカー・ピーターソンは、幼い時に父がいつもレコードをかけていたこともあって、自分のベースを作っていると言えるほど、当たり前にそばにいてくれる音楽でした。『ガール・トーク』は実家を離れてから、どうしても聴きたくなって、父に「お願い、レコード送って!」というほど大好きなアルバムでした。仕事で海外に行く度にも聴きたくなって、ニューヨークやフランスで同じCDを買ったりしていたほどです(笑)。『オン・ア・クリア・デイ』はアルバムの最初の曲で、聴くたびに子供の頃の日曜日の景色が浮かんできます。
音楽を聴いていると、流れる音の奥に、写真のように止まっているものではなく、映像が感じられるのです。例えば、降り注ぐ太陽や潮騒、風、何かのゆらぎ……。それらの生み出す波動が、心の波立ったものを落ち着かせてくれたり、逆に高揚させてくれたりもします。ですから私にとって音楽は、“聴く”というより“浴びる”もの。現実で何かあって心が乱れたとしても、自分を取り戻させてくれたり、力を与えてくれたりしますし、会いたい人や大切な人へと想いを馳せることもできます。そうして常に私を自分らしくいさせてくれるのです。絶対になくてはならないものです。
日常に音楽がないことなんて考えられない、自分の日常を音楽が彩ってくれることを楽しめる人たちではないかなと思います。あとは音楽を通じて“旅”ができる人、だとも思います。
以前、カエターノ・ヴェローゾのライブに行ったときに、彼がステージで繰り広げる音楽から、様々な情景が浮かんでくるような体験をしました。あまりにも感動してしまって涙が止まらなかったのですが、それをきっかけに、私の好きな音楽は、情景や物語が必ず浮かぶものだということに気が付いたのです。それからというもの、自分自身はもちろん、聴いてくださる方の日常のサウンドトラックになるような作品を届けたいと思いながら歌い続けています。
今井美樹〔いまい・みき〕
1983年にモデル、84年に女優としてデビュー後、1986年5月に『黄昏のモノローグ』で歌手デビュー。4thシングル『彼女とTIP ON DUO』のブレイク以降、『瞳がほほえむから』や『PRIDE』など、リリースするシングルが次々に大ヒット。常に多くの女性の憧れの存在であり続ける日本のトップシンガーである。2021年にデビュー35周年を迎える記念として、2020年11月にこれまでの代表曲をオーケストラサウンドにアレンジしたセルフカバー・アルバム『Classic Ivory』をリリース。 オフィシャルサイト
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