今月の音遊人
今月の音遊人:五条院凌さん「言葉で表現するのが苦手な私でも、ピアノなら自分の感情を、音を通して表現できる」
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30年前、子どもたちが通っていた保育園のママ友が、園のお月見会のためにバンドを結成した。メンバーは全員、フルタイムで働くお母さん。その後、メンバーの入れ替えはあったものの、子どもたちが成長してからも活動を継続してきた。教師に保育士、栄養士、会社員……。「フルタイムで働いているという共通点があったので、自分だけが大変なんじゃないと思えました」
仕事に家事、育児と多忙ななかで音楽を続けてきた「とまと」のメンバーはそう話す。
結成当初は幼児だった子どもたちは、今や30代だ。今年はメンバーの最後のひとりが定年になり、全員が〝定年退職者〞となった。
「子どもたちには『まだやってるの?』と励まし半分、半ば呆れてそう言われます」
サブリーダーの大塚淑子さんはそう笑う。しかし、継続は力なり、だ。音楽教師だったリーダーの竹村洋子さんのほかは、結成当初、ピアノが弾ける人は二人だけ。そのほかは、人前で演奏したことなどまったくない〝ど素人集団〞だったというが、「とまと」の活動をきっかけにフルート、マリンバ、オカリナ、ギター、ピアノなどを、メンバーが次々と始めだした。それらの音を美しくまとめ上げるのは、演奏だけでなく、選曲やアレンジ、企画構成、指導までを一手に引き受ける竹村さんの手腕だ。「すべてのパートを分解し、やさしく演奏できるようにアレンジしています。たとえ一人ひとりが片手弾きでも、何人かで弾けば立派なアンサンブルになります」
「とまと」の演奏スタイルは、独自で変幻自在。一曲ごとに楽器編成も人数も変わる。曲のジャンルもクラシック、ポップス、ラテンなど、実にさまざまだ。
1992年から2年に一度開催してきたコンサートでは、毎回100人以上の観客を動員してきた。「元気をもらえた」「毎回新しい楽器が加わっていて楽しみ」というファンも多い。
2017年からは、より近い距離で聴き手と楽しめるよう、喫茶店などを借り切って、一年ごとにライブを開催することに。「お客さんが飲食しながらだと、こちらも気が楽です(笑)」とメンバーのひとり。自分たちも観客も飽きないために、一度ステージで演奏した曲は次回以降は使わず、いつも新鮮な企画を心がけているそう。
この日の練習時、竹村さんからある発表があった。
「今度のライブでは、ウクレレをやってもらいます」
メンバーはこうやって、音楽の幅を広げていく。しなやかで柔軟な「とまと」は、まだまだ進化を続ける。
●バンド名:とまと
●結成時期:1988年
●モットー:音あそび
●練習頻度:月に2回、主に地元の公民館で。本番前には1泊の合宿を行うことも。
●平均年齢:「全員、定年は過ぎました」
●メンバー:竹村洋子(リーダー/アレンジ、企画構成、演出、指導、ボーカル、ピアノ、ギター、フルート、ピアニカ)、大塚淑子(サブリーダー/ピアノ、ベースギター、ギター、ピアニカ、パーカッション)、妙子(キーボード、リコーダー、パーカッション)、伊津子(キーボード、ピアニカ、リコーダー、グロッケンシュピール)、直美(フルート、ピアニカ、リコーダー) 、和子(ピアノ、キーボード、大正琴、マンドリン、ピアニカ)、鏡子(キーボード、大正琴、ピアニカ、リコーダー)、ゆう子(ドラム、パーカッション、グロッケンシュピール、ピアノ、ピアニカ)
●活動内容:愛知県犬山市で、1992年から2年ごとにコンサートを、2017年からは1年ごとにライブを行う。
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文/ 福田素子
photo/ 村川荘兵衛
tagged: アマチュアミュージシャン, われら音遊人, とまと
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