Web音遊人(みゅーじん)

エース・フレーリー

2018年9月、エース・フレーリーが来日。キッスの名曲オンパレードとなるか

エース・フレーリーが2018年9月、来日公演を行う。

1970年代、キッスの黄金時代を支えたギタリストであるスペース・エースの久々の日本上陸。2009年のラウド・パーク09フェスへの参戦が直前に中止になったため、2001年3月のキッス”フェアウェル・ツアー”以来となる来日だろうか。ソロとしては1993年以来となる。

現在ではキッスのメンバーではないエースだが、そのライヴはキッスの名曲のオンパレードになることが予想される。筆者(山崎)は2017年8月、米国”サイコ・ラスヴェガス”フェスで彼のステージを見ることができたが、1曲目からキッス時代の「パラサイト」。さらに「ショック・ミー」やソロでの看板ナンバーである「ニューヨーク・グルーヴ」を披露した。さらに遠慮なくポール・スタンレーが書いた「デトロイト・ロック・シティ」や「ラヴ・ガン」、ジーンの「デュース」などキッス・クラシックスもプレイしている。そのギター・プレイも絶好調で、愛器ギブソン・レスポールから煙が噴き出すパフォーマンスも行って、フェスの観衆から大声援を浴びていた。このライヴが日本のクラブ規模の会場で再現されたら、あまりの熱気に天井が抜けてしまうだろう。

近年、キッスはバンドとしての”終活”の準備に入りつつあるように思える。2018年現在でも”世界最高のロックンロール・バンド”として人気を誇る彼らだが、主要メンバーは60代後半と、巨大なステージを走り回るにはキツイ年頃になってきた。さらにバンドの枠内でやるよりも自分が本当にやりたいことを追求するためか、それぞれのメンバーの単独活動が目立ってきている。2017年10月にはジーン・シモンズがジーン・シモンズ・バンドでラウド・パーク17に参戦しているし、ポール・スタンレーも2018年1月、ポール・スタンレーズ・ソウル・ステーションで来日公演を行っている。2018年9月のエース公演を加えると、約1年の間に全盛期のメンバー3人を日本で、しかもそれぞれ別バンドで見られるのだ。

エース・フレーリー

なおエースとジーン、ポールは近年、交流が盛んで、エースのカヴァー・アルバム『オリジンズVol.1』(2016)にポールが友情参加。エースが制作を始めたという新作にはジーンが2曲でゲスト参加しているという。ジーンとエースはステージ共演も果たし、2018年8月下旬~9月上旬にはジーン・シモンズ・バンドとエースのダブル・ビルでオーストラリア・ツアーも行われる。

そうなるとエースのキッス復帰もあるのでは……? と勘ぐってしまうが、2017年10月の時点でジーンはそれを完全否定している。

「あり得ないね。エースはキッスを3回辞めている。4回目は考えられない。夫婦が離婚して、再縁することは滅多にないだろ? エースとは3回離婚したし、もうそろそろ終わりでいいと思う」

一方、ポールのこんな発言を聞くと、”4度目の復縁”も不可能ではない気もする。

「キッスの哲学は”予測不能を予測せよ”なんだ。もしかしたら、明日になったら気が変わるかもしれない」

“復縁”が実現するかはともかく、エースの来日公演は日本のファンはもちろん、エース自身にとっても待望のライヴだ。彼はこう語っている。

「俺にとって日本が特別な場所だということは、初めてのジャパン・ツアーで弾いたレスポール・カスタムをギブソンが”BUDOKAN”レスポールという名前で完全復刻したことからもわかるだろう?」

“スペース・エース”が並々ならぬ意気込みで臨む日本公演、必見である。

【談話はいずれも筆者とのインタビューより】

■エース・フレーリー 来日公演

●ビルボードライブ(東京)
2018年9月3日(月)、4日(火)、5日(水)
1st:開場17:30・開演18:30/2nd:開場 20:30・開演 21:30
●ビルボードライブ(大阪)
2018年9月6日(木)
1st:開場17:30・開演18:30/2nd:開場 20:30・開演 21:30
詳細はこちら

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に850以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
ブログインタビューリスト

 

特集

前橋汀子

今月の音遊人

今月の音遊人:前橋汀子さん「同じ曲を何千回、何万回演奏しても、つねに新しい発見や見え方があるのです」

3003views

音楽ライターの眼

没後25年、アイルランドのギター・ヒーロー、ロリー・ギャラガーの魂の炎は燃え続ける

10600views

reface

楽器探訪 Anothertake

個性が異なる4機種の特徴、その楽しみ方とは?

7917views

バイオリンを始める時に知っておきたいこと

楽器のあれこれQ&A

バイオリンを始める時に知っておきたいこと

8994views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

4770views

調律師 曽我紀之

オトノ仕事人

演奏者が望むことを的確に捉え、ピアノを最高のコンディションに整える/コンサートチューナーの仕事

4168views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

12693views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5614views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8629views

上海ブラスバンド日本支部

われら音遊人

われら音遊人:上海で生まれた縁が続く大家族のようなブラスバンド

2599views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

5789views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10373views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

8861views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

24638views

音楽ライターの眼

偉大な音楽家たちによる、ベートーヴェン生誕250年記念アルバム

2975views

一瀬忍

オトノ仕事人

ピアノとピアニストの絆を築く、アーティストリレーションの仕事

4061views

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

われら音遊人

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

8927views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

やさしい指使いと豊かな音色を両立させた、「分岐管」と「蛇行管」

1views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

22901views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5592views

楽器のあれこれQ&A

目的別に選ぼう電子ピアノ「クラビノーバ」3シリーズ

3213views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6986views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30896views