
今月の音遊人
今月の音遊人:May J.さん「言葉で伝わらないことも『音』だったら素直に伝えられる」
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存在感がありながら他の楽器となじむシンフォニックなサウンドが光る、Xeno(ゼノ)トロンボーンの最上位モデル
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2021.9.1
tagged: Xeno, 楽器探訪AnotherTake, テナーバストロンボーン, YSL-825, YSL-825G
「テナーバストロンボーン『YSL-825/YSL-825G』は、ヤマハのカスタムトロンボーン『Xeno(ゼノ)』の最上位モデルで、読売日本交響楽団の首席奏者である桒田晃(くわた・あきら)さんと共に、約10年かけて開発を行いました。桒田さんにオーケストラの本番で何度も試奏いただき、時間をかけて改良、調整を加えました」。そう語るのは、開発担当の金剛明彦さん。
開発初期、試行錯誤したというのが、奏者の息の流れを切り替える「バルブ」の構造と「F管」の形状。F管とは低音域を拡張するための管で、B♭管のテナートロンボーンに、F管を装着したのがテナーバストロンボーンです。F管の形状にはさまざまなものがありますが、「YSL-825/YSL-825G」は、バルブの出入り口で管が交差する珍しい形状になっています。
「F管の形状からすると息の抵抗が強そうに見えるかもしれませんが、予想を裏切るフリーな吹奏感がこのモデルの特徴です。試奏すると思ったよりスムーズに息が入るので、みなさん驚かれるようです」と、マーケティング担当の加藤平祐さん。
F管が上下に交差する構造は、他のモデルでは見られないもの。「YSL-825/YSL-825G」を象徴するデザイン要素でもある。バルブは心地良い吹奏感を生む構造、素材の組み合わせになっている。
F管の出入り口が交差する構造は、主管とF管の息の流れを同じにする意図もあります。通常、F管の息の流れは主管と逆方向なことが多いですが、「YSL-825/YSL-825G」では同方向にすることで、より自然で、スムーズな吹奏感を実現しています。
「楽器の構造的に、息の流れの方向に優劣はないと思います。また、吹奏感を左右するのは息の流れだけではありません。ただ『YSL-825/YSL-825G』の場合は、主管とF管の息の流れを同方向にすることで、結果的に、主管で吹くときも、F管に管を延ばしたときも同様の吹奏感を実現でき、吹きやすさにつながっていると思います」(金剛さん)
主管とF管の息の流れが同方向になる設計を採用。バルブを切り替えても吹奏感が変わらないため、奏者は演奏に集中できる。
「YSL-825/YSL-825G」は、異なる素材を組み合わせたハイブリッドモデルであることも特徴。「ベル」と「主管・F管の抜差管」で素材を変え、それぞれの素材が持つ特性をバランスよく生かすことで、豊かで、ほかの楽器ともなじみやすい音、響きになっています。
また、Xeno(ゼノ)としてはじめて、ゴールドブラスのスライドを採用。開発の途中でイエローブラスからゴールドブラスに変えたことが、「YSL-825/YSL-825G」を進化させたといいます。
「スライドの素材を思い切って変えてみたことで、特に奏者自身が感じる音色、吹奏感が大きく変わり、楽器としての表現力が上がりました」(金剛さん)
「開発当初は、既存のモデルをベースに改良を重ねていましたが、どうしても納得のいくものができませんでした。そこで、開発協力プレイヤーである桒田さんのアドバイスもあり、ヤマハの管楽器のノウハウは生かしつつ、一から新しい楽器をつくろうという発想に変えたところ、これまでのゼノにはない吹奏感や響きを持つ『YSL-825/YSL-825G』が生まれました」と金剛さん。
(写真左)開発担当の金剛明彦さん。(写真右)マーケティング担当の加藤平祐さん。「YSL-825」と「YSL-825G」では音色のタイプが異なるため、吹き比べて、自分の音楽を表現できるほうを選んで欲しいと語る。
マーケティング担当の加藤さんによると、トロンボーンの基本形はB♭管のテナートロンボーンですが、近年は全ての音楽ジャンルにおいて、奏者の大半がテナーバストロンボーンを使っているのだとか。
「ジャズ系ではテナートロンボーンを愛用する方もいますが、低音域を出すのに便利なF管が付いたテナーバストロンボーンのほうが、より演奏性が高く、幅広い表現ができると考える奏者が多いようです。ヤマハのテナーバストロンボーンには多彩なモデルがありますが、『YSL-825/YSL-825G』は、より細かい音のコントロールを求める奏者のための楽器です。ぜひ一度試奏いただき、心地よいフリーな吹奏感をご体感ください」と加藤さん。
クライマックスの迫力ある重低音や、ピアニッシモで吹く繊細なメロディ、複数のパートによるユニゾンなど、幅広い表現、役割が求められるトロンボーン。存在感のある響きながら、ほかの楽器となじみがよいシンフォニックなサウンドの「YSL-825/YSL-825G」ならば、オーケストラ、アンサンブル、ソロと、幅広い編成で活躍してくれそうです。
高い次元において最高のパフォーマンスを求める奏者のために開発されたXeno最上位モデル
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文/ 武田京子
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