Web音遊人(みゅーじん)

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

世界的に有名なアミューズメント施設が多くの人を集め、一方では東京都心へのベッドタウンとして発展してきた千葉県の浦安市。東京湾岸を走るJR京葉線の新浦安駅周辺は、一流ホテルやマンション群、ショッピングセンターなどが集まり、さらなる発展が期待されているエリアだ。

2017年の春、市民からの期待と要望に応えて駅のそばにオープンした浦安音楽ホールは、沿線および周辺エリアで珍しいクラシック音楽専用ホールを有し、ここへ集う人たちに新しい音楽体験と「聴く喜び、弾く(または歌う)喜び」を提供している。

ホールのエントランスはビルの3フロア分ある吹き抜けになっており、螺旋階段でホールへと上る。広い窓からの眺望もよく、ここで小さなコンサートをすることもあるようだ。

ビルの5階にある開放的なロビーから螺旋状の階段を上っていくと、303席(車椅子席含む)のシューボックス型「コンサートホール」(室内楽・リサイタルホール)へ。落ち着いた雰囲気を醸し出すダークブラウンの客席と、2階席を取り囲むようなオフホワイトの壁によるツートンカラー状の内装が、独特の気品を生み出している。

「浦安市には、アマチュアで楽器や合唱などを楽しんでいらっしゃる方、クラシック音楽がお好きな方、プロの音楽家などが多く、音響の優れたコンサートホールを待ち望む声は以前から多数ありました。そうした要望に応えるべく、音響設計のスペシャリストである清水寧先生(銀座のヤマハホールや八ヶ岳高原音楽堂ほか多くのホールを担当)に音響コンサルタントとして携わっていただき、空席時に最大で1.8秒という残響をもつ空間が実現できたのです。演奏家や歌手の方からも『自分の音がきちんと自分の耳に戻ってくるため、とても弾きやすい』『無理をせず自然な声で歌える』といったお声をいただき、もちろんお客様からも好評をいただいています」(ホールマネージャー、嶋田拓生さん)

たとえば、繊細な音のクラシックギターを2階席の最後列で聴いても、演奏者が意図する絶妙なニュアンスがしっかり聴きとれるほどだ。客席は階段状になっており、ステージの高さは低めに設定されているため音楽家と聴き手との距離が近く感じられ、両者の親密度を高めているのもこのホールの特徴。さらには素晴らしい音響を実現するため、独自の工夫も凝らしているという。

「ステージ上に配置された浮雲(反射板)の高さを調整したり、2階席両サイドの壁際に可動式のカーテンを設置したり、状況に応じて音響を変化させるシステムを備えています。また1階席前方にある両サイドの壁面は格子状になっており、その奥には通路を設けるなど、壁近くの席で音が不自然にならないように配慮。加えてその通路が低音を2階席まで伝える役目も果たしています」

(写真左)どの席からもステージが見やすく、繊細な音楽表現を聴きとれるコンサートホールの内部。1階席後方の左右には「中2階」と称したくなるブロックもあり、とてもユニーク。(写真右)ステージの上部、高い天井からは音を反射・拡散させるための「浮雲」が設置されており、残響の微調整も可能に。

このように優れた音響を実現しているホールゆえ、浦安市民を中心に周辺の自治体およびJR京葉線沿線在住者、その他の音楽ファンへと、徐々に評判は広がっている。著名な国内外のアーティストを招いた主催公演(年間20公演超)はもちろん好評だが、「地域密着」と「生涯学習」を目的とした種々のコンサート、講座、企画などが充実していることも見逃せない。

「市民の方にコンサートや発表会でご利用いただくことも多く、みなさんに『音がいい』ことを実感していただいています。誰でもホールのグランドピアノを演奏できたり、修学旅行で浦安にいらっしゃった学校の生徒さんにホールで演奏していただいたりといった体験企画も好評ですし、ピアノコンクール直前にご利用いただいて好成績をあげた方もいらっしゃいました。また、市内在住の音楽家に出演していただく親子向けのワンコイン・コンサートもあり、地域社会に貢献できる場としての役割も担っていきます」

ほかにも昭和音楽大学の協力を得て音楽講座を開講したり、合唱団を創設してオペラを上演したり、ホールのレジデンシャル・アーティストであるクァルテット・エクセルシオ(弦楽四重奏団)のメンバーが市内の子供たちに楽器演奏の指導を行ったりと、幅広い層が集まる音楽体験の場としても、充実した活動を展開中だ。

「コンサートホール」以外にも、多彩なジャンルの音楽やダンスなど多目的利用ができる「ハーモニーホール」があり、練習スタジオも充実。市内の音楽団体に所属して吹奏楽や合唱を楽しんでいる事務局スタッフも多いそうで、市民との気軽な関係を築き上げている。豊かで生き生きとした音楽が聴ける空間として、地域に愛される場として、今後もますます期待される施設なのだ。

可動式の客席により自由な空間を作れる「ハーモニーホール」には、ヤマハの音場支援システム(AFC)を導入。各種のコンサートや、このエリアでも人気が高いダンス公演ほか、さまざまな催し物が人気を博している。

■浦安音楽ホール

所在地:千葉県浦安市入船1-6-1
TEL:047-382-3035
ホール形式:シューボックス形
席数:303席
詳細はこちら

 

特集

秋川雅史さん「今は声を磨くことが楽しい。まだまだ成長途中で、人生を上っている段階です」

今月の音遊人

今月の音遊人:秋川雅史さん「今は声を磨くことが楽しい。まだまだ成長途中で、人生を上っている段階です」

11983views

音楽ライターの眼

偉大な音楽家たちによる、ベートーヴェン生誕250年記念アルバム

2979views

マーチング

楽器探訪 Anothertake

見て、聴いて、楽しいマーチング

15956views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バイオリンの購入ポイントと練習のコツ

20757views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

11700views

オトノ仕事人

リスナーとの絆を大切にする番組作り/クラシック専門のインターネットラジオを制作・発信する仕事

5689views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

7373views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

9062views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22918views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

6001views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

8835views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10381views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

11700views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

24648views

ジャズとデュオの新たな関係性を考える

音楽ライターの眼

ジャズとデュオの新たな関係性を考えるvol.2

4283views

鬼久保美帆

オトノ仕事人

音楽番組の方向性や出演者を決定し、全体の指揮を執る総合責任者/音楽番組プロデューサーの仕事

2694views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:人を楽しませたい!それが4人の共通の思い

6750views

ギター文化館

楽器探訪 Anothertake

歴史的ギターの音を生で聴けるコンサートも開催!

7429views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

5521views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

6907views

楽器のあれこれQ&A

ドの音が出ない!?リコーダーを上手に吹くためのアドバイスとお手入れ方法

189480views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

14386views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30922views