Web音遊人(みゅーじん)

雲井雅人サックス四重奏団 - Web音遊人

師弟サックス四重奏団が作り出す響きの美学/雲井雅人サックス四重奏団インタビュー

メンバーが同じ門下生や同窓生だというアンサンブルは珍しくないものの、師弟が組むケースは少ないかもしれない。雲井雅人と3人の門下生による「雲井雅人サックス四重奏団」は、同じ音楽言語から生まれる美しい響きを追究したいという雲井の発案によって生まれたグループ。1996年に結成されて20年、数多くのサックス四重奏団の中でもリーダー的な存在となっている。

「サクソフォンを演奏していてカルテットの面白さを知らないなんてもったいないと思いますし、ソプラノやアルトなどそれぞれの楽器から自分に合ったものを探す楽しみもあります。原点であるフランスはもちろん、日本でも伝統のあるアンサンブル形態ですので、吹奏楽を楽しんでいる方にも一人で楽器を演奏している方にも、また弦楽四重奏が好きだという方にも、管楽器が作るハーモニーや響きの素晴らしさを知っていただきたいのです」(雲井)

師弟だからといって佐藤渉(アルト)、林田和之(テナー)、西尾貴浩(バリトン)という3人が萎縮することなく、伸び伸びと活動している。 「『負うた子に教えられて浅瀬を渡る』ということわざがありますけれど、今では僕がいろいろ彼らから教えてもらっているくらいで、教師冥利に尽きますね」(雲井)
そうした雰囲気があってこそ、常に新鮮な活動を続けることが可能なのだろう。かつて生徒だった3人も四重奏におけるそれぞれの役割を認識しながら、一人の音楽家として自らを主張する。サクソフォン四重奏というアンサンブルの秘密を垣間見るようで面白い。

雲井雅人サックス四重奏団 - Web音遊人

写真左より、雲井雅人(ソプラノ)、佐藤 渉(アルト)、西尾貴浩(バリトン)、林田和之(テナー)

「アルトは内声、特にハーモニーの中で三度(長三度、短三度)を担当することが多く、和音の中に自分の音をはめ込む心地よさは格別。さらには、同じ短三度でも暗くて沈んだ音色から明るい音色までありますから、その幅を追究して全体の響きを左右することも面白いところです」(佐藤)
「テナーの場合は同じ内声でもメロディがほとんど回ってきませんので、和音の一部をずっと吹いているという感覚。でも、そういった中に和音でメロディや対旋律を歌う楽しみを感じてしまうと、もうテナーからは逃げられません」(林田)
「バリトンパートはテンポも提示できますし、和音を作るときも自分が根音を迷いなく吹いて地固めをし、ほかの3人が寄ってきてくれる感覚ですから、周囲を気遣うことは少ないですね」(西尾)
「われわれ3人はそれに操られて、いつもヒーヒー言っているわけだよ」(雲井)
「演奏する曲やレパートリーも自由に選びますし、面白いと思ったら全員でまず音を出してみます。雲井先生と佐藤君がアメリカで出会ったデイヴィッド・マスランカという作曲家は僕たちにとって大切な存在ですが、彼のオリジナル曲や僕たちのためにアレンジしてくれたJ.S.バッハの『ゴルトベルク変奏曲』などは、宝物のような作品です」(林田)
「それと対になる『ソングス・フォー・ザ・カミング・デイ』という委嘱作品も既にCD化しており、ゴルトベルク変奏曲を次の録音プロジェクトにするかもしれないですね」(佐藤)

ヤマハホールでは何度もコンサートを行っているが、響きを熟知したその空間で2016年7月29日(金)に行われるコンサートも興味深い。彼らが敬愛するジャン=イヴ・フルモーをゲストに迎えるなど、2016年の雲井雅人サックス四重奏団を象徴するプログラムだろう。
「いかにもフランスらしい対位法を駆使したベルノーと、東洋的な精神が音になったようなシュナイダーは対照的な作品。シュナイダーの曲は4人で音を出してみたら、本当に不思議な響きでした」(林田)
「人気のあるカール・ジェンキンスの作品も演奏しますので、ぜひたくさんの方に聴いていただけるとうれしいです」(雲井)

■雲井雅人サックス四重奏団 ~ジャン=イヴ・フルモー氏を迎えて~

出演:雲井雅人(ソプラノ)、佐藤 渉(アルト)、西尾貴浩(バリトン)、林田和之(テナー)
日時:2016年7月29日(金)19:00開演(18:30開場)
会場:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14 ヤマハ銀座ビル7F)
料金:一般4,000円、学生3,500円(すべて税込)
曲目:E.シュナイダー/万物流転~サクソフォン四重奏のためのマントラ~、A.ベルノー/サクソフォン四重奏曲、D.チマローザ(N.プロスト 編)/オーボエ協奏曲 ほか
公演の詳細はこちら

■その他の公演情報

詳細はオフィシャルサイトでご確認ください。
オフィシャルサイトはこちら

 

特集

坂本龍一さん

今月の音遊人

【プレゼント】今月の音遊人:坂本龍一さん「かつて観たテレビアニメの物語は忘れたけど、主題歌は鮮明に覚えている。音楽の力ってすごいよね」

16348views

音楽ライターの眼

アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭の「イル・トロヴァトーレ」でヴェルディを堪能する

3307views

Pacifica

楽器探訪 Anothertake

「自分の音」に向かって没入できる演奏性と表現力/エレキギター「Pacifica」

1644views

楽器のあれこれQ&A リコーダー

楽器のあれこれQ&A

リコーダーを長く楽しむためのお手入れ方法

10836views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

10161views

オトノ仕事人

新たな音を生み出して音で空間を表現する/サウンド・スペース・コンポーザーの仕事

7597views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

23402views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7858views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

23254views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブル仲間が集う仲よしサークル

10037views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

5483views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10601views

脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

11071views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

23254views

ジャズとデュオの新たな関係性を考えるvol.4

音楽ライターの眼

ジャズとデュオの新たな関係性を考えるvol.5

4210views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

8976views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

7495views

楽器探訪 Anothertake

目指したのは大編成のなかで際立つ音と響き「チャイム YCHシリーズ」

11572views

アクトシティ浜松 中ホール

ホール自慢を聞きましょう

生活の中に音楽がある町、浜松市民の音楽拠点となる音楽ホール/アクトシティ浜松 中ホール

15256views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

6995views

知って得する!木製楽器の お手入れ方法

楽器のあれこれQ&A

木製楽器に起こりやすいトラブルは?保管やお手入れで気を付けること

22123views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5773views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26442views