今月の音遊人
今月の音遊人:仲道郁代さん「多様性こそが音楽の素晴らしさ、私自身もまだまだ変化していきます」
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クレイジーケンバンドで渋い歌声を響かせ、作詞作曲も手がける横山剣さん。2016年は、ボーカリスト、作詞作曲家としてのデビュー35周年にあたります。音楽に対する思いをうかがうと、妥協のないサウンドと同様、独特のこだわりが次々にあふれ出てきました。
小学校4、5年生の時にヘビーローテーションしていたのが『円楽のプレイボーイ講座12章』というアルバム。12曲の中で1曲挙げるとすれば『貴方と夜と音楽と』という曲ですね。先代の三遊亭円楽さんが、「第1章 女」「第2章 ギャンブル」というふうに、プレイボーイのマニュアルを語り、そのMCが終わると音楽がかかるという構成のアルバムでした。MCは完全にコピーして、遠足のバスの中で披露していました。
音楽も、早く大人になりたいと思わせるセクシーな響きのあるものでしたね。演奏は「前田憲男とプレイボーイズ」というバンドで、ドラムが日野元彦さん、ギターが沢田駿吾さん、ピアノが前田憲男さんなど、そうそうたるメンバー。真っ赤な夜の音楽という感じで、聴くとものすごく興奮するんです。素っ気ないぐらいのクールさを漂わすジャズミュージシャンのプレイが大人っぽくて良かった。
5年生の時、中古レコードの実演販売のお手伝いをしていたことがあって、このアルバムをかけながらのMCもしました。インストゥルメンタルなので、その上に自分のメロディーを即興作曲するんです。その時期は鍵盤で一から作曲することもやっていましたが、既存音源を流用するヒップホップな作曲法も、今につながっていますね。
ジェームス・ブラウンは「ミュージック」と「ビジネス」、クインシー・ジョーンズは「ミュージック・ビジネス」と言ったように、ビジネスだからこそ音楽がよりエキサイティングになると思うんです。子どもの頃から商業音楽が発する緊張感にしびれました。演奏をしながらやたらと時計を気にしたりして、契約に対する苛立ちとスリリングな緊張感、それが張りのある音とか演奏にも反映される。逆に、自分の楽しみだけで音楽に接してる人の演奏を聴いても、楽にはなれるけどスカッといかない。音楽には、癒やしよりも刺激や興奮を求めているのかも。
自分は怠け者で楽な方へ行きがちなので、緊張感を持って音楽をやっているジェームス・ブラウンのような人に、余計に憧れを持ちますね。自分はまだ何かを成し遂げたという感じがないので、もっとビッグな存在になりたい。愚痴や文句を言うのはその後でいい。「世の中、金じゃないよ!」ってことを本気で言えるぐらい売れてみたい(笑)。なんせ、11人もいてやたら経費のかかるバンドなので。それでも足りない、ストリングスが欲しいという時もある。そういう欲求に対して、まあいいかとは言えない。メロディーだけ良ければいいのではなくて、サウンド的な充実という欲もあるのでね。売れるということは、その分たくさんの人が聴くってことなので、拘りを持ってないと終わるのも早いですからね。
僕の創作活動自体が、そうなのかもしれないですね。音楽のことを考えて音楽が出てくるのではなく、香りとか、見たものとかがメロディーに変換されるんです。サウンド的に影響を受けた音楽はいっぱいあるけれど、それらを真似て、似て非なるものを作っても面白くない。音楽と関係ないものを音楽に変換すれば、聴いたことのない曲が自然と出てくるんですね。
クルマの運転が大好きなので、8割は車の運転中に生まれます。それぞれの土地から発生している磁場みたいなものから反応して出てくるものもあれば、『タイガー&ドラゴン』みたいに『トンネル抜ければ海が見えるから』と、見た景色がそのまま歌になっている曲もある。あれは、運転しながら歌詞とメロディーが同時に出てきました。スタジオで「さあ曲を作ってください!」って言われたからって出て来るものじゃないし、ホテルに缶詰になったからって歌詞が浮かぶわけじゃないですからね。
箱根に行けば箱根の曲、バリ島に行けばバリの曲、タイに行ったらタイ。行ってすぐより、たいがいは忘れた頃に思い出して曲になります。旅行のような、ちょっとした刺激に押し出されるのかな。
横山 剣〔よこやま・けん〕
歌手/作曲家/プロデューサー。1960年横浜市生まれ。1978年にクールス・ロカビリークラブのローディーとして音楽業界に入り、1981年頃からボーカリストとしての活動を開始。1997年にクレイジーケンバンドを結成し、翌年アルバム『PUNCH! PUNCH! PUNCH!』でデビュー。テレビやライブ活動を通じて全国的な人気を博す。SMAPやTOKIO、和田アキ子らへの楽曲提供をはじめ、執筆やラジオなど、幅広いジャンルで活躍。2016年は「横山剣デビュー35周年」を記念したアルバム『香港的士』をリリースした。
クレイジーケンバンド オフィシャルサイト http://www.crazykenband.com/
文/ 仁川清
photo/ 後藤泰宏
tagged: インタビュー, 今月の音遊人, 横山剣, クレイジーケンバンド
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