Web音遊人(みゅーじん)

ディープ・パープル

ディープ・パープル、最後の来日となるか?2018年10月、The Last Goodbyeジャパン・ツアー決定!

2018年のロック界で頻繁に話題になるのが、アーティストの引退問題だ。

ロックの高齢化が進んでいき、70歳を超えるベテラン・ミュージシャンも決して珍しくない昨今。サラリーマンだったらとうに定年退職という年齢ゆえ、ハードなツアー活動で体調を崩してしまう前にリタイアするのも選択肢のひとつだろう。2018年にさよならツアーを行うことを発表したアーティストにはエルトン・ジョン、プリティ・シングス、ポール・サイモン、オジー・オズボーン、レーナード・スキナード、スレイヤーなどがいる。スレイヤーは最高年齢のトム・アラヤが1964年生まれの56歳と、ほかのアーティストと比べるとひと世代下だが、その激しい音楽性を考えると、仕方がないかもしれない。

ディープ・パープルもまた、2017年から“ザ・ロング・グッドバイ”ツアーを開始。ツアー活動からの撤退を示唆している。

1968年に結成、「ブラック・ナイト」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」「ハイウェイ・スター」「紫の炎」などハード・ロックの歴史に輝く名曲を発表してきた彼ら。2017年の最新アルバム『インフィニット』もイギリスのチャートで6位、ドイツで1位とヒットを記録している。

バンドの終着の地についてはまだ発表がないものの、メンバーたちは今回が最後の大規模ワールド・ツアーになると宣言している。シンガーのイアン・ギランは「良いライヴができるうちに終わりたい。これまでディープ・パープルは何も計画を立てずに50年やってきたけど、最後の幕引きぐらいはきっちりやろうかと考えている」と語っているし、ギタリストのスティーヴ・モーズも「ヨボヨボなのに自分だけがそれに気付かない状態で活動を続けるのは避けたい」と説明している。キーボード奏者のドン・エイリーは創設メンバーだったジョン・ロードに代わって2001年からバンドと行動を共にしてきたが、当初は「10年もやれば十分」だと考えていたそうだ。『ナウ・ホワット?!』(2013)と『インフィニット』という2枚でバンドの創造性が再燃したことで、彼は留まることになったが、いよいよゴールが迫ってくるのを感じたと語っている。

ギランは「バンドの創造性は干上がっていないし、おそらくアルバムは作り続ける」と言っているが、モーズの手の関節炎や、ドラマーのイアン・ペイス(もはや唯一のオリジナル・メンバーだ)が2016年に心臓発作を起こすなど、健康面を考えると、ディープ・パープルがいつまで存続するかは神のみぞ知る、である。

キッスが20年以上“さよならツアー”を続けたり、サバトンが『ザ・ラスト・スタンド』というアルバムの題名に引っかけて“ザ・ラスト・ツアー”と銘打ったりなど、ロック・アーティストの“最後”はあてにならないものだが、ディープ・パープルの場合は年齢的な部分もあり、そのフィナーレは決して遠い未来ではないだろう。
2017年、当初は『インフィニット』に伴うツアーという色合いが濃かったが、徐々にクラシックスの割合が増していき、同年末の時点ではまさにさよならツアー的なベスト選曲のショーとなっている。

ディープ・パープル

そして発表されたのが2018年10月の日本公演だ。ディープ・パープルと日本の関係は長く、深いものだ。1972年8月の初来日公演を収めた『ライヴ・イン・ジャパン』はロックのライヴ・アルバム最高峰のひとつに挙げられ、彼らの評価を高めることになった。イアン・ギランとロジャー・グローヴァーを含む“黄金の第2期”が最後のライヴを行ったのも日本だったし、トミー・ボーリンが参加した第4期でも『ラスト・コンサート・イン・ジャパン』が録られている。1993年11月にギタリストのリッチー・ブラックモアが電撃脱退、12月の日本公演は急遽ジョー・サトリアーニを迎えて行われた。波乱に富んだバンドの歴史のいくつかのターニングポイントを目撃してきた日本のファンに、彼らが最後の挨拶をしに来るのだ。

半世紀にわたりハード・ロック界を照らしてきた太陽といえるディープ・パープルの歴史が、幕を閉じようとしている。名盤『ライヴ・イン・ジャパン』から46年、我々はその最終章を見届けねばならない。

■ディープ・パープル The Long Goodbye

2018年
10月14日(日):幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
10月15日(月):名古屋国際会議場センチュリーホール
10月17日(水):大阪フェスティバルホール
10月20日(土):広島上野学園ホール
10月22日(月):福岡サンパレス ホテル&ホール
詳細はこちら

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に850以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
ブログインタビューリスト

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:五嶋龍さん「『音遊人』と聞いて、子どもの頃に教えてもらったギリシャ神話のことを思い出します」

12124views

音楽ライターの眼

“よろしからぬもの”だったジャズは徐々にクラシックへ近づいていった

4487views

NU1XA

楽器探訪 Anothertake

アコースティックピアノを演奏する喜びをもっと身近に。アバングランド「NU1XA」

4650views

FGDPシリーズ

楽器のあれこれQ&A

新たな可能性を秘めた楽器、フィンガードラムパッドに注目!

1509views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

14425views

誰でも自由に叩けて、皆と一緒に楽しめるのがドラムサークルの良さ/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

オトノ仕事人

リズムに乗せ人々を笑顔に導く/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

7915views

HAKUJU HALL(白寿ホール)

ホール自慢を聞きましょう

心身ともにリラックスできる贅沢な音楽空間/Hakuju Hall(ハクジュホール)

27053views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

11226views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

9620views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブル仲間が集う仲よしサークル

11126views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

6164views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28219views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

11280views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

14592views

音楽ライターの眼

流れる色彩美、内省的な深まり/ダン・タイ・ソン ピアノ・リサイタル

2996views

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

オトノ仕事人

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

18028views

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う 結成30年のビッグバンド

われら音遊人

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う、結成30年のビッグバンド

11539views

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

25695views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

14283views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

5289views

これからアコースティックギターを始める際のギターの選び方や準備について

楽器のあれこれQ&A

これからアコースティックギターを始める際のギターの選び方や準備について

18148views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

8751views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11817views