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今月の音遊人:東儀秀樹さん 「“音で遊ぶ人”といえば僕のことでしょう。どのような楽器の演奏でも、楽しむことだけは忘れません」
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ホワイトスネイクが新編成ベスト三部作の完結編『ザ・ブルース・アルバム』を発表
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2021.3.17
tagged: 音楽ライターの眼, The BLUES Album
2021年2月、ホワイトスネイクの『ザ・ブルース・アルバム』が発売となった。
2020年の『ザ・ロック・アルバム』『ラヴ・ソングス』に続く新編成ベスト・アルバム“レッド・ホワイト&ブルース”三部作の完結編で、“白”、“赤”に続いて“青”をイメージ・カラーとする本作。前2作と同様、『スライド・イット・イン』(1984)から『フォーエヴァーモア』(2011)までの6枚のスタジオ・アルバムやデヴィッド・カヴァーデイルのソロ作『イントゥ・ザ・ライト』(2000)からの曲を収録している。今回は未発表曲こそないものの、全曲をリミックス、楽器パートの差し替えなどを行っている。
『スライド・イット・イン』からの「スロー・アンド・イージー」、『白蛇の紋章』(1987)からの「クライング・イン・ザ・レイン」など、ホワイトスネイクのライヴでお馴染みのクラシックスも収録されているが、いわゆるグレイテスト・ヒッツとは一線を画する選曲で、ニュー・アルバムを聴いているような新鮮さを感じることが出来る。『ライヴ…イン・ザ・シャドウ・オブ・ザ・ブルース』(2006)収録のスタジオ・トラック「イフ・ユー・ウォント・ミー」などの隠れた秀曲がフィーチュアされるのも楽しい。
三部作すべてについて言えることだが、既発曲であっても従来のものとは異なったヴァージョンになっている。特に、元々デヴィッドのソロ・アルバムとなる前提で作られた『レストレス・ハート』(1997)からの楽曲のニュー・ヴァージョンは新たにジョエル・ホークストラのギターとデレク・シェリニアンのキーボードが加えられて、よりロックな厚みを増したものだ。
なお、デレクは自らの演奏について、筆者(山﨑)とのインタビューでこう語っていた。
「デヴィッドはオリジナルの1980年代風シンセのサウンドが気に入らなくて、よりヴィンテージ・ロック風のオルガンを被せたんだ。もしジョン・ロードが弾いたら?みたいなイメージで弾いたよ」
三部作はそれぞれ異なったテーマがあり、楽曲が重複することはないが、唯一の例外が「ギヴ・ミー・オール・ユア・ラヴ」だ。『白蛇の紋章』からシングル・カットもされたこの曲だが、『ザ・ロック・アルバム』にはジョン・サイクスがギター・ソロを弾くヴァージョン、『ザ・ブルース・アルバム』にはMTVでヘヴィ・エアプレイされたビデオと同様のヴィヴィアン・キャンベルが弾くソロがフィーチュアされている。両ギタリストともゲイリー・ムーア直系のマシンガン・ピッキングを披露しているが、2人のフレージングがかなり異なっていて面白い。
3枚いずれも音楽だけでも楽しめるが、デヴィッドによる英文ライナーノーツ(日本盤には邦訳も添付)はアルバムをさらに楽しいものにしてくれる。普段ツイッターでさまざまなギャグを提供しているだけあり、その語り口は軽妙で、新しい話題も豊富に提供。2022年、『レストレス・ハート』新装盤から一連のアルバムがボックス・セット仕様で順次再発されるとか(「5年から7年をかけて再発する」と語っている)、元々デヴィッドのソロ作として発表された『イントゥ・ザ・ライト』を「これからはホワイトスネイクの作品扱いにする」と宣言するなど、思わず身を乗り出す新ネタが次々と飛び出す。
なお『トラブル』(1978)から『セインツ・アンド・シナーズ』(1982)までの初期作品に関しては「元マネージャーの管理下にあって、自分にはアーティスティックな発言権がない」と語っており、海外でリリースされた初期作のボックス・セット『Box ‘O’ Snakes』(2011)が初期ホワイトスネイクへの“別れの挨拶”となったという告白も貴重だ(近年でも海外ではレーベルを超えたベスト盤が編まれ、初期曲も収録されているため、まるっきり過去と決別したわけでもないようだが)。
最新アルバム『フレッシュ・アンド・ブラッド』を引っ提げて2020年3月にジャパン・ツアーが予定されていたホワイトスネイクだが、新型コロナウィルスの影響で中止に。そんな状況下で、ファンの渇きを癒やし、バンドの音楽を新たな光で照らすのが“レッド・ホワイト&ブルース”三部作だ。1951年生まれ、70歳へのカウントダウンが始まったデヴィッドのロック最終章を彩るベスト・アルバムは、その栄光の軌跡に相応しい充実した作品だ。
アルバム『The BLUES Album』
発売元:RHINO
発売日:2021年2月19日
価格:2,750円(税込)
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山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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