今月の音遊人
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結成10周年記念、2年ぶりのアルバム!心揺るがす美声でドラマチックな世界を表現『TEATRO CLÁSICO』/LE VELVETSインタビュー
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2018.11.9
tagged: LE VELVETS, アルバム, TEATRO CLÁSICO, ルヴェルヴェッツ
2018年に結成10周年を迎えるクラシック・ヴォーカルグループLE VELVETS。バリトンの宮原浩暢、テノールの佐賀龍彦、日野真一郎、佐藤隆紀、メンバー全員が音大卒という確かな技量に加え、クラシックをベースにロックやジャズ、民謡も取り入れる多彩な音楽性で、音楽チャートのクラシック部門を席巻。コンサートも国内はもとより海外でも行うなど、華々しい活動を展開している。
佐賀「結成当初は、今の状況なんて想像できなかった。なんせ路上ライブをやってましたから。パワーの感じられない歌だと、誰も立ち止まってくれなくて……辛い経験でしたね」
宮原「今でこそホールのコンサートやディナーショーなど、いろんなことをやらせていただいていますが、当時はそんな幅広い世界があることもしらず、とにかく歌うことに必死で……」
日野「グループを組むのも初めてだし、クラシックを学んできたから、ジャズとか民謡を歌うことに戸惑うばかりで。宮原さんが言ったように、とにかく目の前のことを一生懸命にやって、それを日々こなしていく感じでしたね」
佐藤「メンバー同士でぶつかったこともありました。でもその山あり谷ありの10年間が、アーティストとしても人間としても成長させてくれた。メンバーの結束は、今一番強くなってますね」
ジェントリーな佇まいからは想像できない、葛藤しながら進み続けた日々。そこで培ったチャレンジ精神は、2年振りとなるアルバム『TEATRO CLÁSICO』で、これまで以上に発揮されている。
例えばシンフォニックジャズの代表曲であるガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」は、ピアノと管弦楽で成立する楽曲だが、それに日本語の歌詞を付けドラマチックに歌いあげている。
宮原「メロディ構成が難しくて“歌がのるかな?”とも思いましたけど、僕達は4人いるから音域が広く、表現にも幅が出たので、形にできたんだと思います」
佐賀「歌詞に“届いたメールが心の灯をともす”など、現代的な要素を入れているのも、新たな挑戦ですね」
世界的ロックバンド、ザ・ポリスの「ロクサーヌ」は、情熱的なタンゴにアレンジ。娼婦に恋をした男が、他の男に抱かれる彼女に心狂わす物語が、より一層狂おしく歌われている。
佐藤「この曲は宮原さんの怒りに満ちた語りで始まり、各人が繋いでいくんですが、日野さんの声が……いやらしいんですよ(笑)」
宮原「ちょっとウィスパーボイスでね。燃え上がる怒りというよりは、沸々とした嫉妬という感じで」
日野「こ、この野郎って(笑)」
佐賀「それぞれみんなが、自分にしか出せない表現をしているのが面白いですよね」
モーツァルトの曲を大胆にアレンジした「クアトロ・ジョヴァンニ~アイネ・クライネ・ナハトムジーク」などは、ポップなサウンドや艶っぽい歌詞が、クラシックの隠れたキャッチーさを引き出している。
佐賀「これは予想以上に面白い感じになりました。クラシックの声で歌っているけど、あえてラジオボイス(=籠った響き)っぽい加工もしているし。歌詞も僕ら4人をドン・ジョヴァンニに例えて、ひとりの女性を誰が口説き落とすか、みたいに仕上げられていて」
佐藤「ミュージカルを意識した、遊び心のある作品ですよね」
そうしたチャレンジングな作品が並ぶ一方で、オリジナル曲「FLEUR~花」のように、美しいピアノの響きと大切な人への想いを綴った歌詞で、ストレートに心をふるわす楽曲もある。
日野「気づいたら口ずさんでしまうようなメロディにしたいなと思って、まず曲を作って、歌詞は聴く人によっていろんな風に解釈できる感じで進めていたんですが、作詞家の方とやりとりしているうちに、大切な人や家族をテーマにすることになったんです」
アルバム最後を飾る曲「VIVERE」も、雄大な歌声がみずみずしいエネルギーを放ち、音楽の力、仲間との絆、応援してくれるファンの愛情を信じる彼らの姿を感じさせる。
宮原「路上ライブ時代から歌っていますが、歌があるから僕達は生きられる、そういうメッセージ性がピッタリだなって思うんです」
佐賀「今回のアルバムは2年ぶりなので、自分たちにとって勝負だと思っています。でもその一方で、自分たちが楽しんで生まれた音楽こそ人に伝わるのだとも思うので。レコーディング中も互いのソロ・パートを聴きながら “じゃあ僕はこうしてみよう”という感じに、物語を4人で作っていくようで楽しかったですね」
10年という節目を迎え、新たなステージに踏み込んだLE VELVETS。劇場という意味のTEATRO(テアトロ)を冠した最新アルバムは、彼らの新たな舞台の幕が開いたことを告げているのだ。
『TEATRO CLÁSICO』
発売元:株式会社ハッツアンリミテッド
発売日:2018年10月10日
価格:CD+DVD 4,200円、CD3,500円(いずれも税込)
11月15日(木)ももちパレス(福岡)
11月23日(金・祝)昭和女子大学人見記念講堂(東京)
11月29日(木)森ノ宮ピロティホール(大阪)
12月5日(水)アートピアホール(愛知)
文/ 飯島健一
photo/ 宮地たか子
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