今月の音遊人
今月の音遊人:挾間美帆さん「私は音で遊ぶ人のために作品を作っているのかもしれません」
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今月の音遊人:菅野祐悟さん「音楽は、自分が美しいと思うものを作り上げるために必要なもの」
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2023.12.1
作曲家として、映画、ドラマ、アニメなど幅広いメディアやアーティストに数多くの楽曲を提供している菅野祐悟さん。作曲活動のみならず、オーケストラによるコンサートを開催するなど活躍の場を広げ、2023年には映画監督にも挑戦した菅野さんに、音楽と映画の関係性や、音楽との向き合い方などを聞いた。
日々音楽に接する中で、よく聴く曲というのは常に変わっていくのですが、その中でも聴き続けている曲はあります。ジャンルごとにお話しさせていただくと、ジャズだとキース・ジャレットの『ザ・ケルン・コンサート』というアルバム、クラシックならモーリス・ラヴェルの『ピアノ協奏曲ト長調』、映画音楽なら坂本龍一さんの『戦場のメリークリスマス』とエンニオ・モリコーネの『ニュー・シネマ・パラダイス』です。自分にとって最も身近な楽器がピアノということもあって、ピアノが入った曲が多いですね。
ただ、僕が子供のころから現在にかけて、たとえばサンプラーを使った音楽制作が増えて、音の素材を切ってつなげていくような手法が多く見られるようになりましたし、映画音楽はメロディーを重視したものから雰囲気を重視したものに変わっているように感じます。
作曲をするうえで影響を受けているのは主にクラシックやジャズの楽曲ですが、世の中で好まれる音楽の傾向や幅が一気に拡張する時代を自分が生きてきたこともあり、さまざまなジャンルの音楽を聴いてきました。
音楽は、僕にとって「自分をいちばん表現することのできるもの」、そして「自分が美しいと思うものを作り上げるために必要なもの」だと思います。
2023年に初めての監督作品として『DAUGHTER(ドーター)』という映画を制作したのですが、そのときに役者さんの演技はもちろん、照明や美術など、あらゆるものにこだわり、理想的な空間を作ろうとする中で、あらためて音楽の存在の重要さを意識しました。音楽がなくても映画は成立しますが、そこに音楽があることで、より空間は美しくなり、感動的になります。今まで僕の音楽を必要としてくれた映画監督の皆さんは、音楽を心から求めて依頼してくれていたのだなと実感しました。
ある意味、音楽というものはインテリアのように、空間を作るもののひとつだと思うのです。かけがえのない一分一秒を生きている人々の思い出となる空間を作り上げているように感じています。
こうした考えに至ったのは、さまざまな時間と空間を彩る映画音楽を作り続けてきたからかもしれません。
音楽は本当に豊かなものなので、「音で遊ぶ」というのは最高に贅沢なことだと思います。「音で遊ぶ人」というと、最近の若いアーティストの皆さんは、とても音で遊んでいるように見えます。新鮮な感覚で音楽と触れ合っていますよね。新しいものには、常に驚きや感動があります。若くて才能のある人が出てくると、自分とはまったく違うものを見つけることができてワクワクします。
これまでの時代にも天才的なアーティストが数多くあらわれ、すばらしい音楽を発信していますが、それぞれの世代でサウンドがまったく異なります。これからもきっと、さらに違った音楽が出てきて感動を与えてくれるのでしょう。僕も、感動や驚きなどのワクワクした気持ちが感じられることを、音楽と向き合う上で大切にしています。
これまで音楽を作り続けてきたからこそ、今の自分があると思っています。音楽が大好きな両親のおかげで、小さなころから音に囲まれた生活を送り、常にいい音楽を聴かせてもらいました。それがきっと今の自分の栄養になっているはずです。いつも頭の中で音楽が鳴っていて、夢の中でも作曲しているくらいに音楽が大好きです。
音楽を職業にしていると、音楽が好きという想いを忘れがちになることもあるのですが、時代の移り変わりとともに更新されていく美意識に常にアンテナを張りながら、遊び心や新鮮さを忘れず、これからも音楽を作り続けていきたいと思っています。
菅野祐悟〔かんの・ゆうご〕
1977年生まれ。東京音楽大学作曲科卒。
ドラマ『ラストクリスマス』でドラマ劇伴デビュー。NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』、連続テレビ小説『半分、青い。』の音楽を担当。映画、テレビドラマ、アニメーションを中心に、幅広いメディアで活躍中。
【主な作品】映画『沈黙のパレード』『カイジ』『昼顔』、ドラマ『CODE-願いの代償-』『あなたがしてくれなくても』『罠の戦争』『MOZU』『ガリレオ』、アニメ『PLUTO』『SAND LAND』『劇場版名探偵コナン ハロウィンの花嫁/黒鉄の魚影』『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン/黄金の風/ダイヤモンドは砕けない/スターダストクルセイダース』『ガンダム Gのレコンギスタ』、 他多数。
オフィシャルサイト
日時:2024年3月9日(土)17:00開演(16:15開場) ※未就学児入場不可。
会場:北とぴあ さくらホール(東京都北区)
料金(一般):1階席5,500円 2階席4,500円
※その他料金設定あり。詳しくは下記リンク「詳細はこちら」からご確認ください。
一般発売日:2023年12月25日(月)
詳細はこちら
監督・音楽:菅野祐悟
出演:竹中直人 関川ゆか 上地由真 近藤勇磨 若林瑠海 松代大介 奥田圭悟 ゆのん 美莉奈/かとうれいこ
脚本:宇咲海里
2023年12月15日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
詳細はこちら
文/ 長井進之介
photo/ 坂本ようこ
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