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日本のギター界を牽引する4人が登場!渡辺香津美と押尾コータローが絶妙な呼吸で聴かせた、圧巻の「ボレロ」/Acoustic Guitar Festival Special Concert Vol.2

ヤマハ銀座ビルの10周年を記念して開催されたアコースティックギター・フェスティバルの最終日、2020年1月26日のヤマハホールには、ジャンルもさまざまに各界の第一人者が登場、熱い演奏を繰り広げた。

トップバッターは、2019年デビュー50周年を迎えたクラシック・ギターの名匠、荘村清志で、スペインの作曲家F.ソルの代表作「モーツァルト『魔笛』の主題による序奏と変奏曲」を披露。同じスペインの巨匠ナルシソ・イエペスに師事した荘村のギターは、穏やかさとほのかな哀愁が入り混じる響きが脳裏にかの地を浮かばせ、心地よい気分に浸らせてくれる。しかもその雄弁な音が、アンプを通さずに聴けるのである。荘村自身も演奏後に熱弁していたが、ヤマハホールがアコースティックギターを堪能するのに最適なホールであることを、荘村の妙なる演奏によって実感した。

荘村清志

次いでの登場は、日本を代表するボサノヴァ・ギタリストの伊藤ゴロー。一般的にイメージされる“明るい”ものとは異なる伊藤のボサノヴァは、エフェクトをかけたギターサウンドの幽玄さ、凛としたメロディとハーモニーの美しさが、息をするのを忘れさせるほどの緊張感を放っているが、故郷の青森を題材にした「Fly me to the Aomori」では温かく優しい旋律が顔を出し、心の緊張を解きほぐしてくれた。伊藤の追求するギターサウンド、そしてボサノヴァという音楽の柔軟さと深淵さを知ることができた気がする。

後半のステージを担当したのは、渡辺香津美と押尾コータローのデュオ。1曲目の「UNICORN」から渡辺は流れるように弾きまくり、押尾はタッピングやスラッピングを駆使して、ふたりだけで演奏しているとは思えない重厚なサウンドを響かせる。Y.M.Oのサポートを務めたことのある渡辺が坂本龍一の「Merry Christmas Mr. Lawrence」を奏で、さまざまな楽器が代わる代わる登場するラベルの「ボレロ」を2本のギターだけで巧みに聴かせるなど、テクニック、選曲、演出すべてにギターファンを喜ばせる要素が詰め込まれている。そのうえふたりはトークにも長けていて、厳かなヤマハホールは、ギターの響きに負けないくらいの(?)笑い声に包まれた。

三組の名演に大満足の観客を前に出演者全員が顔を揃え、アンコールとして映画『黒いオルフェ』の主題歌である「MANHA DE CARNAVAL」を披露。渡辺が4人で弾けるように編曲したそうで、美しくせつないメロディラインはもちろん、各人の奏でるソロが実に表情豊かで、多くのアーティストがカバーしてきたこのボサノヴァの名曲の新たな魅力を見出す思いがした。

飯島健一〔いいじま・けんいち〕
音楽ライター、編集者。1970年埼玉県生まれ。書店勤務、レコード会社のアルバイトを経て、音楽雑誌『音楽と人』の編集に従事。フリーに転向してからは、Jポップを中心にジャズやクラシック、アニメ音楽のアーティストのインタビューやライヴレポートを執筆。映画や舞台、アートなどの分野の記事執筆も手掛けている。

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