今月の音遊人
今月の音遊人:今井美樹さん「私にとって音楽は、“聴く”というより“浴びる”もの」
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才能を開花させる種まきのヒント満載!子育て中のすべての人の心に響く1冊/角野美智子『「好き」が「才能」を飛躍させる子どもの伸ばし方』
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2020.11.27
tagged: ブックレビュー, 「好き」が「才能」を飛躍させる子どもの伸ばし方, 角野美智子
子どもは皆、磨けば光る原石。その原石を磨くための環境作りのヒントが実体験とともに綴られた、『「好き」が「才能」を飛躍させる子どもの伸ばし方』が注目を集めている。著者はピアノ教室を主宰する角野美智子。自身の子育ての実践がピアノ指導の軸にもなっていく過程は、とても読み応えがある。
物語は、「ピティナ・ピアノコンペティションソロ部門・特級」で長男がグランプリを受賞するところから始まる。長女は東京藝術大学ピアノ専攻に進学、優秀な成績をおさめ、来年度からは大学院への進学も決まっている。「では英才教育の本?」と思われるかもしれないが、決してそうではない。まったく異なる個性をもつ二人の子どもたちの進路選択や思春期に、丁寧に、ひたむきに寄り添う母親像から、子育ての本質とは何かを読み取り、読者自身も成長できる本だ。
ピアノ教室を始めた当初は「まずは楽しく通える教室に」と考えていた著者。しかし、初の発表会で生徒たちの姿を見て、「もっと手応えのある指導がしたい」と「自分のやる気」に火がついた。そこから、「ショパン国際ピアノコンクールinAsia」「ピティナ・ピアノコンペティション」などで延べ100人以上の受賞者を輩出するなど、目覚ましい実績を上げていく。しかし一方で、指導の目的は賞を取ることではない、ときっぱり。「ピアノは忍耐で頑張らせるものではありません。生活に根ざした工夫しだいで、子どもの才能を開花させることができるのです」「生活に根ざす」とは、どういうことだろう。その一例が、家族でもできる「音遊び」。目隠しをした鬼役の子どもが、「新聞紙を丸める」「卵パックを潰す」など、ほかの人が出す音を当てるゲームだ。しゃがんだ姿勢から誰か一人が立ち上がり、それが誰かを当てるルールにすると難度はグッと上がる。こうした音遊びが、いくつも紹介されている。
「どれも生活の中で思いついたものばかりです。小さい頃から耳を研ぎ澄ませて聴いて考え、自分で判断して選択する力をつけると、自主性が育ち、子どもは自然と自立していきます。また、音への感覚が高まると美的感覚も磨かれて、音楽を楽しむ域にまで達することができます。ピアノを習うことが生きる力になり、将来につながる何かを残せるようにしたい。それが私がピアノを指導する目的です」
子どもの才能を開花させる種まきをする。それこそが、角野がピアノ教室で実践していることであり、本書のベースでもある。音楽講師はもちろん、子育て中のすべての人、指導する立場にある人には特に、心に響くものが多いはず。ぜひとも手に取ってほしい。
『「好き」が「才能」を飛躍させる子どもの伸ばし方』
著者:角野美智子
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
価格:1,600円(税抜)
詳細と購入はこちら
角野美智子(すみの・みちこ)
桐朋学園大学ピアノ科卒業後、米国ニューイングランド音楽大学大学院に留学。これまで、主宰するピアノ教室から各種コンクールで延べ100人以上の受賞者を輩出。音大・音高受験指導でも高い実績を上げる。2018年、リトミック教室「プチアンジュ」を開講。0歳児から音楽・知性教育を通じて感性を育む育児法を導入し、ピアノレッスンに大切な下地作りにも注力。導入期から上級までバランスよく育て上げる指導法で高い評価を得ている。ピティナ指導者賞連続20回受賞。共著に『生徒を伸ばす! ピアノ教室運営大研究』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)。