Web音遊人(みゅーじん)

八神純子さん - 今月の音遊人

今月の音遊人:八神純子さん「意気込んでいる状態より、フワッと何かが浮かんだ時の方がいい曲になる」

16歳でポプコン(ポピュラーソングコンテスト)に出場し入賞を果たしたのをきっかけにデビュー。『みずいろの雨』『パープルタウン』など数多くのヒット曲を世に送り、1987年より渡米した八神純子さん。現在、日本とアメリカで活動する八神さんにお話をうかがいました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

私が小さい頃に大好きだったのが、ザ・ピーナッツです。みなさんがよくご存じなのは『恋のフーガ』や『恋のバカンス』だと思いますが、私が一番聴いたのは『恋のロンド』という曲です。最初、「ララララーララ」という美しいフレーズで始まるのですが、このフレーズは、はじめの部分以外どこにも出てこないという工夫に満ちた曲でもあり、メロディも歌詞も大好きでした。
私が、自然に洋楽っぽい曲が作れるようになったのは、ザ・ピーナッツの曲が持つ異国情緒の影響だと思います。アレンジも含めて、ザ・ピーナッツはあの頃の日本の音楽とは一線を画していましたね。当時は、音楽的にリッチな時代でした。テレビ番組で歌うザ・ピーナッツのバックの演奏にも、弦楽器や管楽器のセクションが入っていましたから。
ポプコンの全国大会や世界歌謡祭に出たかった理由も、生の弦楽器や管楽器をバックに歌いたかったからなんです。ザ・ピーナッツといえば、作曲家の宮川泰さんが多くの名曲を残されていますが、先日、息子さんの宮川彬良さんと一緒にオーケストラを入れたコンサートを開き、とても素晴らしい経験をさせていただきました。その時、「ザ・ピーナッツは、時代が変わってこういうバックが使えなくなったからやめたんだよ」と聞いて、納得しましたね。私の根っこにはザ・ピーナッツがいるんです。

八神純子さん - 今月の音遊人

Q2. 八神さんにとって「音」や「音楽」とは?

耳をふさがない限り、生活していて周囲に流れている音は全部、音楽として聴こえてきます。ちょっとした街の音から曲のヒントをもらったり、リズムパターンが浮かんだり。ジョギングを毎日欠かさず行っているのですが、自分のフットステップ、足音が曲やリズムになることもありますね。「今日は曲を作るぞ!」と意気込んでいる状態より、フワッと何かが浮かんだ時の方がいい曲になることが多いようです。
アメリカで主婦業や子育てに追われていた頃は、歌うよりも人の音楽を聴くほうがメインでした。それだけでも満足でしたが、女性ボーカルを聴くと「自分も歌いたいなあ」と思ったこともありましたね。
音楽活動を再開したのは、音楽番組に出た時に、また私の歌を聴きたいと言ってくださる方がいたからです。私の音楽を求めてくださる方たちがいる限り、これからも素敵な音楽を届けたいと思っています。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人をイメージしますか?

やっぱり、私が一緒に音楽をやっているミュージシャンたちかな。彼らは、とっても楽しそうなんですよね。特に、この質問でパッと頭に思い浮かんだのが、私のバンドのバンドマスターで、キーボーディストの中村康就(やすなり)さんです。宮川彬良さんとのコンサートの前にリハーサルがあったのですが、ベーシストのスケジュールが合わなくて参加できなかったんです。
中村さんはシンセベース(シンセサイザーでベースの音色を出して鍵盤を弾く)もうまい方なので、じゃあ彼を呼ぼうかということで、「本番はいいんだけれどリハーサルだけ来てくれないかな?」と誘ったら、「あ、いくいく」って言って喜んで来てくれたんです。「リハーサルで和音を弾かずに、ほとんど指1本で演奏したのは初めてだ」と、笑っていました。
彼はキーボーディストでもあり作・編曲家、プログラマーでもあるので、ベースもドラムもシンセサイザーの鍵盤で弾けてしまうんです。自分のやりたいことにこだわらず、音楽ならどんなことでも柔軟に対応でき、喜々として駆けつけてくれる。彼みたいな人が、「音遊人」という言葉にぴったりなんじゃないでしょうか。

八神純子〔やがみ・じゅんこ〕
1958年生まれ、名古屋市出身。1978年にプロデビュー。デビュー前からポピュラーソングコンテストやチリ国際音楽祭などで入賞。『みずいろの雨』をはじめ、『思い出のスクリーン』『パープルタウン』など、数々のヒット曲を生み出す。1987年以来アメリカ在住。2011年、しばらく休止していた日本での音楽活動を再開、『Here I am』や『There you are』などのオリジナルアルバムを発売、全国ツアーを続けてきた。2017年はポプコンエイジに参加する他、1月29日渋谷Bunkamuraオーチャードホールでの「ヤガ祭り」コンサートをはじめ、全国ツアー、そして「ビルボードクラシックス」などに出演予定。
八神純子オフィシャルサイト http://junkoyagami.com

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:山田和樹さん「エルヴィス・プレスリーのクリスマスソングから『8割の美学』というものを学びました」

3158views

音楽ライターの眼

ブルースの名門レーベル“アリゲイター・レコーズ”が創立50周年

2293views

最新の音響解析技術で低音域のパワフルな音量と響きを実現

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギター専用の音響解析技術で低音域のパワフルな音量と響きを実現

10421views

楽器のあれこれQ&A

モチベーションがアップ!ピアノを楽しく効率的に練習するコツ

42008views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

10626views

オトノ仕事人

芸術をとおして社会にイノベーションを起こす/インクルーシブアーツ研究の仕事

7019views

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

ホール自慢を聞きましょう

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

9552views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

3325views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

23873views

われら音遊人

われら音遊人:みんなの灯をひとつに集め、大きく照らす

5963views

サクソフォン、そろそろ「テイク・ファイブ」に挑戦しようか、なんて思ってはいるのですが

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォンをはじめて10年、目標の「テイク・ファイブ」は近いか、遠いのか……。

8533views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26325views

桑原あい

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若きジャズピアニスト桑原あいがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

15843views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

23162views

音楽ライターの眼

ロイクソップ『プロファウンド・ミステリーズ』三部作がいざなう時空を超えたタイム・ワープ

2399views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

楽器のデモンストレーション、解説、管理までをこなすマルチプレイヤー/楽器博物館の学芸員の仕事(前編)

12062views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

6071views

REVSTAR

楽器探訪 Anothertake

いまの時代に鳴るギターを目指し、音もデザインも進化したエレキギターREVSTAR

7616views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

7506views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

6177views

楽器のあれこれQ&A

エレクトーンについて、知っておきたいことや気をつけたいこと

26414views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5727views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26325views