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大人げないロック・バンド、メルヴィンズが新作『ワーキング・ウィズ・ゴッド』を発表

メルヴィンズがニュー・アルバム『ワーキング・ウィズ・ゴッド』を発表した。
1983年にワシントン州モンテサノで結成、40年近く活動してきたメルヴィンズは、ロック界における特異なポジションを築いてきたバンドだ。決してヒット曲などはないものの、彼らはコンスタントに優れた作品を発表。プロジェクト作やコラボレーションなどもあり、正確な数字を出すことは困難だが、約25枚のアルバムを世に出している。メタルの重さとハードコアのエッジ、悪質なユーモアを込めた音楽性はグランジ/スラッジ/ドローン・メタルなど、さまざまなスタイルの原点となってきた。ニルヴァーナのカート・コベインが彼らを大リスペクトしていたのは有名だし、トゥールやアイヘイトゴッド、日本のBorisなどもメルヴィンズのファンとして知られている。

2011年にはツアー中にニュージーランドのクライストチャーチ地震に見舞われ、その直後に行われたジャパン・ツアーでは大阪・名古屋公演は無事行われたものの、3月11日の東京公演を前にしたサウンドチェック中に東日本大震災に遭遇。大きな地震に連続して被災するという経験をしている。

キング・バゾことバズ・オズボーン(ギター、ヴォーカル)とデイル・クローヴァー(ドラムス、ヴォーカル)の2人を軸に突っ走ってきたメルヴィンズの2021年時点での最新アルバムが『プレイング・ウィズ・ゴッド』だ。

本作のレコーディング・メンバーはバズとデイル、そして初期メンバーのマイク・ディラード(ドラムス)からなる通称“メルヴィンズ1983”。デイルがベースにコンバートしたこのトリオにとって、『トレス・カブローネス』(2013)以来のアルバムとなる(マイクは『ベーシズ・ローデッド』(2016)でも4曲に参加していた)。

前作の“Tres Cabrones=3人のバカ野郎”というタイトルを受け継ぐように、本作では彼らの小学生ギャグが冴えわたっている。1曲目からいきなりザ・ビーチ・ボーイズの『アイ・ゲット・アラウンド』の“替え歌”『アイ・ファック・アラウンド』。さらには『ファック・ユー』、“馬ヅラのマヌケのブライアン”を題材とした『ブライアン・ザ・ホース・フェイスド・グーン』など、ガキの魂を解き放つ楽曲が続く。

バズは本作について“8年生のユーモア”と表現している。アメリカの8年生といえば日本の中学2年生。いわゆる中2病というのは思春期ゆえの思い込みや妄想を指すが、本作の内容はもっと低学年、小学生レベルのように感じられる。

それらの楽曲以外でも、ロックンロールが元来持っていたガキらしさが全編を貫いている。『バウンシング・リック』『キャディ・ダディ』などのラウドなロック・ソングは、我々が退屈な授業中にいつも考えていた、すべてをブチ壊して、燃やし尽くして、 爆破したいという原始的な衝動が込められている。エディ・コクランの1958年のヒット曲『カモン・エヴリボディ』にあった、両親が留守のあいだ家を崩壊させんばかりのパーティーを行うバイオレンスと享楽主義、そして“大人になんかなりたくない!”というメッセージ性が、本作で表現されているのだ。

ちなみにバズは8年生当時の自分について「勉強はそこそこ出来たし読書も好きだったけど、社会と付き合うのが難しくて、酒や大麻をやるようになった」と語っている。

バズはデイル、マイクという中学の頃からの悪ガキ仲間が集まったことで本作の路線が決定されたと語っている。ただ、元デッド・ケネディーズのジェロ・ビアフラとのコラボレーション曲『Those Dumb Punk Kids (Will Buy Anything)』では「エマニエル坊やがジャームズ加入!コートニー・ラヴがニルヴァーナ加入!」という子供じみたネタが挿入されてるし、バットホール・サーファーズのメンバー達と共演した『ホールド・イット・イン』には『セサミストリート・ミート』という曲がある。結局、誰と組んでも、メルヴィンズがガキなのは変わらないのだ。

2021年3月にはバズが57歳となったが、メルヴィンズはティーンエイジ・ワイルドライフを進み続ける。前回来日公演を行ったのは2019年11月だが、世界が平常に戻ったとき、彼らは再び日本のステージで、大人げないライヴを見せてくれるだろう。

■インフォメーション

アルバム『ワーキング・ウィズ・ゴッド』

発売元:ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ
発売日:2021年2月26日
価格:2,420円(税込)
詳細はこちら

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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