今月の音遊人
今月の音遊人:大塚 愛さん「私にとって音は生き物。すべての音が動いています」
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楽器を安心して長く使うためには、日々のお手入れは欠かせません。同時に、プロによる定期的な点検やメンテナンス、修理も重要です。
今回は、ヤマハの管打楽器のドクター的役割を担う、カスタマーサポート部の管打楽器技術サービス課の業務をご紹介。どんな修理が行われているの?楽器のリペアはどこまで可能?課長の海野真裕さん、管楽器担当の古田晶子さん、打楽器担当の坂巻有里子さんに伺いました。
カスタマーサポート部の管打楽器技術サービス課は東京と静岡県浜松市の2か所に拠点を置いています。そのうち、管打楽器の修理をメインに行っているのが浜松です。
ヤマハの管打楽器のメンテナンスやリペアの相談や依頼をしたい。そんなときは、まず全国にあるヤマハ特約店へ。修理に求められる技能や知識を評価・認定した「ヤマハ管楽器グレード取得技術者」が在籍するお店も全国に200店舗以上あり、安心して楽器を任せることができます。
「基本的には、大きなトラブルに至る前に特約店で対応できることが理想です。そのため、私たちは特約店技術者の育成に重きを置いています」(海野さん)。
一方、お店での修理が困難だったり、お店に修理技術者が在籍していなかったりなどの理由で依頼があった場合は、管打楽器技術サービス課がその修理を請け負っています。
ユーザーの窓口となる特約店を通して送られてくるのは、ヤマハの管楽器、打楽器全般と、リコーダーやピアニカ、アコーディオンなどの教育系楽器。大正琴やヴィオリラも対象です。
管楽器は、小さなピッコロからチューバやスーザフォンといった大型楽器まで多種多様。
「チューバなど大きい楽器のへこみ直しなどの場合、2~3か月かかってしまうこともあります」(古田さん)
スタッフは楽器の種類ごとの専任ではなく、それぞれがすべての楽器に精通。バランス調整からへこみ直しに至るまでのさまざまな修理を、一貫してひとりで行える高度な技術と知識を持つメンバーがそろっています。
なかでもここでしかできないのは、高いレベルの塗装。長年の使用によって傷んだ楽器表面や、へこみなどの修正跡をできる限りきれいに仕上げたいという要望に対しても、楽器を作るときと同様のクオリティの塗装が可能なのです。
一方、打楽器の修理で多いのは、マリンバやシロフォンなど木製音板楽器の調律です。
「音板を削って狂ったピッチ(音程)を調整し、それで対応できないものは1本単位で音板を交換します」(坂巻さん)
こうした精緻な技術は、部活動などで使われる学校の楽器の修理でも発揮されています。
古い楽器が修理に持ち込まれることも多く、20~30年前のものも珍しくありません。部品交換が必要な修理はその在庫を調べ、へこみ直しなどの形状修正は技術力で、可能な限りの対応に努めています。
「お母様が使用されていた30~40年ほど前のフルートを娘さんが使いたいので、修理してほしいという依頼もありました」(古田さん)
また、長年使用されるケースが多いのが学校備品の楽器。
「何十年も使っているコンサートマリンバは、枠がガタガタになり自立も難しいような状態のものもあります。ヘッドの張力とペダルスプリングの張力でバランスを取って音程を保持するペダルティンパニなどは、その調整がうまくいかなくなり、いい状態で使えなくなっているものも多いです。それら調整して、これからも使えるようにします」(坂巻さん)
古い楽器の修理とひと口に言っても、「最低限の音が出るようにしたい」「見た目も美しくしたい」など、求められることはさまざま。修理費用も大きく変わってくるため、特約店を通してお客様とご相談しながら修理を進めています。
なかには修理代が新しい楽器の購入額を上回ってしまうケースもあり、見積もりとともに買い替えをおすすめするメッセージを添えることも。
「昔から変わらないイメージがある管楽器ですが、実は細かい部品単位でみても音程が取りやすくなったり、操作がしやすくなったりするなどの進化をしています。そうした観点と修理費用とのバランスを勘案し、より快適に楽器を使用するためのご提案をすることもあります」(海野さん)
管打楽器技術サービス課は、お客様と直に接する機会はほとんどありませんが、その心は常にお客様に向けられています。
「出張の機会にお客様の声を聞けたときは嬉しいです。その声を忘れずにふだんの業務を行っています」(古田さん)
「私も学生時代には吹奏楽部で打楽器をやっていて、当時はいつも使っている状態が普通なのだと思っていました。だから、『修理したらこんなにいい楽器なんだ』『こんなにいい音が出るんだ』と思えてもらえたら……。それを想像しながら修理しています」(坂巻さん)
管打楽器技術サービス課は、いわば“影の存在”。だからこそ、期待を超える状態でお客様のもとへ楽器をお戻しすることを心がけています。
文/ 福田素子
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tagged: カスタマーサポート通信, 管打楽器技術サービス課
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