今月の音遊人
今月の音遊人:城田優さん「音や音楽は生活の一部。悲しいときにはマイナーコードの音楽が、楽しいときにはハッピーなビートが頭のなかに流れる」
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フォークの先輩や仲間たちの魅力を届けたい。初のカバーアルバム「アオハル 49.69」/さだまさしインタビュー
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2021.10.27
tagged: インタビュー, アルバム, さだまさし, アオハル 49.69
さだまさしが、止まらない。2020年発売のオリジナルアルバム『存在理由~Raison d’etre~』、2021年4月のセルフカバーアルバム『さだ丼~新自分風土記Ⅲ~』に続き、今度は初となるフォークソング・カバー・アルバムをリリース。タイトルは『アオハル 49.69』(読み:アオハル フォークロック)。1960~70年代の名曲をカバーしたアルバムで、「ある種、同窓会気分。片思いの同窓会だけどね」と語る。そこには、若い人たちに、フォークの先輩や仲間たちの魅力に気付いてほしい、という強い思いがある。
「フォークシンガーって、フォークのカバーしないんですよね。小宇宙の集まりですから。お互いの宇宙に干渉しないっていうムードがある」。さだはこう語るが、初めてフォークカバー集を作るきっかけは、数年前にテレビで見たフォークのコンピレーションアルバムのCMだったという。「みんな元気でやっているのに、“懐かしの……”なんて、過去の遺物や終わったもののように扱っていてね。それぞれ素晴らしい宇宙があるのに、十把一絡げで。腹が立つなあという思いだったんです」
さだは近年、若いファンの支持も新たに獲得している。自身がフォークの名曲を取り上げることで、若者たちがその原曲を歌ったアーティストまでたどり着き、他の名曲たちもたくさん聴いてくれればと、そんな思いを抱いた。「スタッフに『こういうことがやりたい』と話すと、『それ、すぐやりましょう』と食いついてきてね」と、笑う。計画はトントン拍子に進んだ。
アルバムタイトルは、“青春”、キャリア“49”年目、“69”歳にちなんだ言葉遊びだが、さだの口からは、若き日の先輩や仲間たちとの青春模様がまるで昨日のことのように語られる。
「四条通りをゆっくりと」と始まり、京都の冬景色を淡々と描いた『北山杉』は、うめまつりの1974年の曲。「うめまつりは同じ音楽出版社で、グレープ時代にイベントでよく一緒になって仲良くなっていて。この曲好きだったんですよ」。GAROは、大ヒット曲の『学生街の喫茶店』を収録。「GAROについてはスタッフと意見が分かれてね。僕と同じ事務所だったのでライブも聞いているし、本質も知っている。『学生街』はヒットしたけど、むしろ本質じゃない。『たんぽぽ』の方が……と言ったんですけど」と苦笑いする。
オフコースの曲は1975年12月発売の『眠れぬ夜』をカバーした。オフコースは当時、小田和正と鈴木康博の2人で活動。同じ年の3月、グレープはオフコースと北海道でジョイントコンサートを行っている。「小田さんにすごく憧れていたから楽しみにしていてね。でも、小田さんは『(ステージには)俺たちが先に上がる。君らはヒット曲があるから、先に歌われて客がいなくなったらつらいから』と言い張ってね。あんな上手なデュオの後に俺たちかよって、吉田と2人で落ち込んで上がってね」
吉田正美とのデュオ、グレープは1972年に結成し、73年10月にデビュー。今作の収録曲も、『春夏秋冬』(泉谷しげる)、『旅の宿』(吉田拓郎)、『神田川』(南こうせつとかぐや姫)、『傘がない』(井上陽水)、『翼をください』(赤い鳥)など、その頃のヒット曲が多い。「自分が何をしたらいいか分からない時代だったらから、色々な人のものを聴きました。楽しみで。憧ればっかりでね」
特に、同じ事務所で先輩グループだった赤い鳥には、憧れも恩も縁もある。赤い鳥は1969年、「第3回 ヤマハ・ライト・ミュージック・コンテスト」でグランプリを受賞。そのときの2位が、オフコースだった。グレープはデビュー後まもなく、赤い鳥のコンサートで前座を務め、経験を積んだ。赤い鳥のメンバーだった一人で、2014年に亡くなった山本俊彦からは、粋な言葉で奮起を促されたという。「『オレらの前座やるって、どういうことか分かっているか』って言われてね。『もっと盛り上げなきゃダメでしょうか』とか言ったら、『そうじゃない。赤い鳥の客をお前がどれだけ取るか試されているんだぞ。全部取るつもりで、ステージに上がれ』ってね」。また、後に赤い鳥に加入した渡辺俊幸はその後、プロデューサー、編曲家として、さだと長年歩みを共にしている。
グレープは74年、『精霊流し』が大ヒット。デビューわずか半年後の飛躍に「本当に恵まれてましたね」と語る。その一方、「歌を歌うことに関してはド素人でした。とにかく、グレープが下手だったことは分かっていた」と振り返る。ジョイントコンサートで競演するフォーク歌手たちに対しては、「この人たちと対等にやっているわけがない」とさえ思っていたという。「人前で歌うのは地獄。緊張で食べられないし、それでも吐いて、コンサートの後は3キロぐらい痩せてました」
今でも、作詞家、作曲家、演奏家、歌い手と、音楽に携わる様々な自分自身がいる中で、「一番下手なのが歌手ですから」と語る。それゆえ、今作のカバー曲を歌うのは「つらかったですね。特に、加山(雄三)さんの『旅人』が一番難しかった。いつも加山さんの脇でハモを歌ったから。こんな歌いにくい歌なかった」と苦笑い。
それでも、今回カバーした歌のようなフォークが好きだということを再認識したという。そして、その素晴らしさは、若い聴き手にきっと伝わると信じている。
「今、音楽の本質は“見るもの”に変わってしまったけれど、元はもっと作り手と聴き手が身近で、メッセージをキャッチボールするものだった。アルバムを聴いて、『あ、こう来たか』ってうれしかったり、ガッカリしたり。音楽ってこういう楽しみ方があるよと伝えたい。泉谷(しげる)さん、(吉田)拓郎さん、(南)こうせつさん、(井上)陽水さん。言い出したらきりがないけれど、もっといい曲がいくらでもある。たどり着いたらその良さをきっと分かってくれると思う」
発売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2021年10月27日
価格:初回限定盤5,445円/通常盤3,850円/アナログ盤7,590円(いずれも税込)
詳細はこちら
11月4日(木)J:COMホール八王子(東京都)
11月6日(土)レクザムホール(香川県)
11月7日(日)松山市民会館(愛媛県)
11月12日(金)福岡サンパレス(福岡県)
11月13日(土)川商ホール 鹿児島市民文化ホール第1(鹿児島県)
11月25日(木)フェスティバルホール(大阪府)
11月26日(金)フェスティバルホール(大阪府)
11月30日(火)東京国際フォーラム ホールA(東京都)
12月1日(水)東京国際フォーラム ホールA(東京都)
12月7日(火)日本特殊陶業市民会館(愛知県)
12月8日(水)日本特殊陶業市民会館(愛知県)
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オフィシャルサイト
文/ 仁川清
photo/ 阿部雄介
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