Web音遊人(みゅーじん)

松井秀太郎

“トランペットで歌う”ことを追求した2ndアルバム『DANCE MACABRE』リリース/松井秀太郎インタビュー

ジャズ界の新時代を担うトランぺット奏者として注目を集める松井秀太郎が、2024年10月23日に2ndアルバム『DANSE MACABRE』をリリースする。前作『STEPS OF THE BLUE』のリリースから一年強を経て制作された本作は、貫禄たっぷりのストレートなジャズもあれば、松井の音楽的原点であるクラシックをジャズ視点で奏でた曲もある。豊かな表現で彩られたアルバムに一貫して感じるのは、トランペットの響きが“心地よい”ということだ。

トランペットでどう歌うかにこだわった

「冒頭の『Tiger March』や『Sign』、そしてアルバムタイトルでもあるサン=サーンスの『Dance Macabre(死の舞踏)』は、ジャズという音楽で表現したいことが詰まっていて、それをトランペットの魅力を通じて伝えたいという気持ちを強くもつ曲です。一方で『Little Cradle Song』などメロディラインがシンプルなものも多く、それぞれの曲の側面を、自分がトランペットでどう歌うかということにこだわったアルバムになりました」

トランペットで歌う──それはただ音階を発するだけでなく“想い”も音に乗せたいと、松井が追求し続けていることだ。

「自分の音楽は、歌を歌うように吹きたいという気持ちが核になっています。前作のファーストアルバム『STEPS OF THE BLUE』を制作し、2024年の初めにホールツアーをやったことで、目指したい方向がより明確になってきました。きれいに吹くということよりも、音楽に対するエネルギーをどうのせられるか、トランペットという楽器でどう表現するのかということを、今作の制作でも大事にしています」

松井秀太郎

音楽が進みたい方向にバンド全員で向かっていく

あらためて確信した自身のスタンス、それをアルバム『DANSE MACABRE』で音像化させることができた大きな要因が、ジャズの本場ニューヨークでのレコーディングだ。ガイ・モスコヴィッチ(ピアノ)、ベン・ウルフ(ベース)、ジョナサン・ブレイク(ドラムス)、ウォルター・ブランディング(サクソフォン)といった現代ジャズ界のトッププレイヤーとの共演は、松井に大きな刺激と歓びを与えたようだ。

「ミュージシャンもエンジニアも、自分が憧れてきた方々だったので、もう感動しっぱなしでした。事前に送っていたデモと楽譜をびっくりするぐらい読み込まれていて、最初のリハーサルからものすごい早さで進みました。“この曲はこういう世界だからこうしよう”っていうのを、皆さんが提示してくれるんです。技術的なこともですけど、音楽に対する向き合い方がプロフェッショナルだなと思いました」

冒頭でトランペットの響きが心地よいと書いたが、それはレコーディング現場で刺激を受け、音楽を楽しむ松井の喜びが伝わってきたからなのだろう。

松井秀太郎

ニューヨークのスタジオにて(2024年5月)

「今回のアルバムは、構成がシンプルで表現の幅が広い曲が多くあります。参加したミュージシャンたちと一緒に、レコーディングのその場で演奏しながら曲の方向性が決まっていきました。元々イメージしていたものと全然違う形になった曲も多かったですし、それがとても面白かった。音楽が進みたい方向に、バンド全員で向かっていって、アルバムを作り上げたように感じています」

どれだけ綿密にイメージしデモを作っても、環境や共演者によって、生み出される音楽は変わるものだ。だから積極的にその空間に身を委ね、そこで感じた“いま自分がしたいこと”を大事にしたと松井は語る。そのスタンスは今作のプロデューサーであり、大学時代の恩師でもあるピアニストの小曽根真から教わったことだそうだ。

「自分はずっとクラシックを学んでいたため、ジャズをよく知らない状態で国立音楽大学へ入学しました。そこで小曽根さんに出会って、“アドリブというのは”というところから教えていただいたんです。譜面やその曲の知識など、基礎的なことは当然学ばなければならないけれど、そのうえで一番大事なのは、自分が何をしたいのか、どういう音を出したいのかということ。今やりたい音楽を表現するために、さらに勉強するんだということを教わりました」

ちなみに“いま自分がしたいこと”を大事にする松井のスタンスは、使用する楽器にもあらわれている。トランペットを始めたときからずっとヤマハを愛用しているそうだが(現在のもので3本目)、理由は瞬間的な表現欲求に応えてくれるからだという。

「楽器として音程が正確だったり個体差が少なかったりと、優れている面はいろいろありますが、いちばんは自分の表現を純粋に伝えられるところ。“出したい!”って思った音を出しやすいんです。オーケストラとやるときも、ビッグバンドでやるときも、もちろんソロのときも、そして今回の撮影でも、ヤマハのトランペットを使っています」

松井秀太郎

『DANSE MACABRE』の曲は、ホールの響きで命が吹き込まれる

楽しみながらこだわりを追求したアルバム『DANSE MACABRE』を引っ提げ、来年2025年の2月から、コンサートホールをまわるツアーが予定されている。メンバーの壷阪健登(ピアノ)、小川晋平(ベース)、きたいくにと(ドラムス)は、小曽根が主催するプロジェクトFrom Ozone Till Dawnで松井とともに活動している顔なじみなので、聴き応えのあるアンサンブルが楽しめそうだ。

「皆さんよく一緒に活動しているので、このコンサートで自分が目指しているところを同じ目線で見てくれている感じがしますし、なによりステージに対するエネルギーがすごい方々。アルバムとはまた違う演奏になることは確実です。『DANSE MACABRE』は、生のトランペットがホールで響くことを意識した作品でもあるので、ホールの響きで命が吹き込まれる、そういうライブになったらいいなと思っています」

■インフォメーション

●2nd Album『DANSE MACABRE』

2nd Album『DANSE MACABRE』

発売元:avex classics
発売日:2024年10月23日(水)
税込価格:CD 3,300円/LP 6,600円
アルバムの詳細はこちら

●松井秀太郎 Concert Hall Live Tour 2025

日時:2025年2月~
料金:全席指定6,500円ほか
公演の詳細はこちら
オフィシャルサイトはこちら

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photo/ 宮地たか子

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