Web音遊人(みゅーじん)

鈴木大介×沖仁 ギターで辿るスペイン音楽の旅

クラシックとフラメンコ、2人のトップランナーギタリストが紡ぐ500年のスペイン音楽史/鈴木大介×沖仁 ギターで辿るスペイン音楽の旅

クラシックとフラメンコ、それぞれのジャンルで日本ギター界をリードし、長年の盟友でもある鈴木大介と沖仁の豪華共演が2024年9月4日に銀座ヤマハホールで行われた。日本人に昔から愛されるスペイン音楽の歴史を紐解く約500年の音楽旅行を聴いた。 

前半は鈴木のソロによる選りすぐりのスペイン・ギター名曲集

鈴木が曲目解説を兼ねて自ら綴ったライナーノートによると、スペインのオリエンタルな音楽は、8~13世紀にイスラム王朝に統治されたり、インド、エジプト、モロッコなどからこの地に移り住んだ人々から影響を受けたりした産物であること。また、16世紀に日本に初めてもたらされた西洋音楽がスペインのものだったことなどが、日本人に郷愁を感じさせるのではないかとのことだった。

読み終えてなるほどと納得しながら幕を開けた前半は、鈴木のソロ。 

冒頭のソル『グラン・ソロ』を鈴木が人前で弾くのは学生時代のコンクール以来だったそうだが、この夜は彼自身によるダイナミックかつ繊細な編曲版で披露。

鈴木大介

これに続いたのが、タレガ『アルハンブラの思い出』、アルベニス『カディス』、グラナドス『アンダルーサ』の3曲。鈴木の少年時代には三種の神器のような作曲家だったというこの3人の傑作を、彼は実に温かく豊かな歌心で歌い上げてみせる。また、技巧的にも隅々まで精確で、とりわけ『アルハンブラ~』で見せたトレモロは実に緻密で流麗だった。 

その後、モレノ=トローバ『ノクトゥルノ』、トゥリーナ『セビリア風幻想曲』というスペインならではの情緒にあふれた2曲が優美に奏でられ、前半は終幕。これらの6作品は、いずれも19~20世紀に活躍した作曲家の手によるもので、ギター・ルネサンスと謳われたこの時代の豊穣さを改めて実感させられた。

高揚感と郷愁が調和した圧巻のデュオ!アンコールにはサプライズも

後半は、鈴木と沖のデュオによる16〜18世紀の作品集。 

ルネサンスに活躍したナルバエスの『皇帝の歌』は、『千々の悲しみ』というシャンソンを原曲に持つが、息の合ったデュオで聴くとしみじみとした旋律の味わいがより深みを増していた。

鈴木大介×沖仁 ギターで辿るスペイン音楽の旅

続くムルシア『ファンダンゴ』と、サンス『カナリオス』はバロック時代、ボッケリーニ『ファンダンゴ』はギャラント様式の作品。いずれも当時使われていたヒターノのかき鳴らしスタイルを取り入れた颯爽とした作風だが、陰、陽、中庸の異なる色合いが、トライアングルのように美しい一体感と立体性を形作っていたと思う。

鈴木大介×沖仁 ギターで辿るスペイン音楽の旅

そして後半はいよいよ佳境、鈴木が恩師から「100年前のフラメンコがどうであったかが保存されている」と教わったファリャ『はかなき人生』と、沖の名アレンジで知られるロドリーゴ『アランフエス』のラスト2曲へ。2人の集中力は最高潮に研ぎ澄まされ、高揚感と郷愁がみごとに調和しながら駆け抜けていく姿は本当に圧巻だった。

さらにアンコールでは、前日が誕生日だった沖を会場全体で祝うサプライズもあり、弾き手と聴き手が一体となった幸福に包まれていた。

鈴木大介×沖仁 ギターで辿るスペイン音楽の旅

渡辺謙太郎〔わたなべ・けんたろう〕
音楽ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業。音楽雑誌の編集を経て、2006年からフリー。『intoxicate』『シンフォニア』『ぴあ』などに執筆。また、世界最大級の音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」のクラシックソムリエ、書籍&CDのプロデュース、テレビ&ラジオ番組のアナリストなどとしても活動中。

photo/ Takako Miyachi

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:上原彩子さん「家族ができてから、忙しいけれど気分的に余裕をもって音楽と向き合えるようになりました」

8416views

bôa(ボア)

音楽ライターの眼

bôa(ボア)が新作『Whiplash』を発表。新時代の『Duvet』へ

3856views

STAGEA(ステージア)ELB-02 - Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

スタイリッシュなボディにエレクトーンならではの魅力を凝縮!STAGEA(ステージア)「ELB-02」

16118views

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ

楽器のあれこれQ&A

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ機種

29012views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ギタリスト木村大とピアニスト榊原大がトランペットに挑戦!

8451views

小見山優子さん

オトノ仕事人

ゲーム音楽は勝ってはいけない、負けてはいけない。大切なのは調和──/ゲームコンポーザーの仕事

2348views

福岡市民ホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史をつなぎ、新しい感動をつくる。音楽・芸術文化の新たな拠点/福岡市民ホール

524views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

10315views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

21752views

Leon Symphony Jazz Orchestra

われら音遊人

われら音遊人:すべての楽曲が世界初演!唯一無二のジャズオーケストラ

2431views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

6453views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11792views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

14817views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

25095views

イアン・ハンター

音楽ライターの眼

イアン・ハンター、84歳にしてロックンロールの道半ば。2作品がリリース

3480views

オトノ仕事人

プラスマイナス0.05ヘルツまで調整する熟練の技/音叉を作る仕事

39426views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

6752views

赤ラベルが再現!ヤマハギター50周年記念モデル

楽器探訪 Anothertake

赤ラベルが再現!ヤマハギター50周年記念モデル

12898views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

7796views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

6428views

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ

楽器のあれこれQ&A

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ機種

29012views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

7282views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28184views