Web音遊人(みゅーじん)

世界の一流奏者が愛用するトランペット「Xeno Artist Model」がモデルチェンジ

1990年から続く「ゼノシリーズ」の最高峰モデル

主に軍隊で使われる信号ラッパの時代から考えると古い歴史があり、現代では、幅広い演奏形態・音楽ジャンルで使われるトランペット。実音とは別の調で記譜される移調楽器で、さまざまな調性の楽器がありますが、最も一般的なのはB(べー)管/変ロ調管で、オーケストラではC(ツェー)管/ハ調管が使われることもあります。

ヤマハのトランペットのなかで、長年に渡るビンテージトランペットの研究と、世界の一流奏者のアドバイスを生かし、つくられているのが「Xeno Artist Model(ゼノアーティストモデル)」。1990年に誕生した「ゼノシリーズ」のフラッグシップモデルで、金管楽器の開発・調整のスペシャリストとして世界的に知られるボブ・マローン氏を開発陣に加え、2005年に初代モデルである「シカゴシリーズ」のC管が誕生しました。

「一般的に広く使われるのはB管ですが、アメリカのオーケストラではC管が定番であるため、先にC管を出すことで、オーケストラ奏者をメインターゲットとするモデルであることを知っていただきたいという意図がありました。その甲斐あって、多くの奏者が『ゼノアーティストモデル』に興味を示し、演奏会で使ってくれるようになりました」と、開発を担当した福田徳久さん。

その後モデルチェンジや新たなバリエーションを加え、現在は、フリーな吹奏感と、輝かしさのなかに深みのある音色の「シカゴシリーズ」(B管・C管)と、トランペットの伝統のサウンドを追求した「ニューヨークシリーズ」(B管・C管2種)の、キャラクターの異なる2シリーズ・計5モデルを展開しています。

管楽器は、管の長さによって基音となる音の高さが変わる。シのを基音とするB管より、ドを基音とするC管のほうが、管が短くなっている(写真はともに「シカゴシリーズ」)

モデルチェンジで楽器の基本性能が格段にアップ

2019年3月、楽器をさらに進化させるために、「シカゴシリーズ」「ニューヨークシリーズ」ともにモデルチェンジを実施。トランペットの心臓部であるバルブケーシングと、音や吹奏感に大きく影響するウォーターキイコルクに改良が加えられました。
「2か所の改良で、吹奏感や、息を吹き込んだときの反応のよさなど、楽器としての基本性能が格段に上がりました」と、同じく開発を担当する古海(ふるみ)勝彦さん。

内部でピストンが上下する管「バルブケーシング」と、管内の水滴を抜くためのウォーターキイに付属する「ウォーターキイコルク」(写真は「ニューヨークシリーズ」B管)※2013年以来のモデルチェンジとなる「シカゴシリーズ」C管は、上記2点だけでなく、各所に細かい変更が加えられた。

バルブケーシングは、“ある箇所”の寸法と厚みを変更することで、息を吹き込んだときの楽器の反応が大幅にアップ。より精度の高い音楽表現が可能になりました。ちなみに“ある箇所”としているのは、トランペットの開発において注目されにくく、これまで「ゼノシリーズ」の開発では全く手をつけなかった、いわばマル秘の箇所だからだそう。
「きっかけは、『シカゴシリーズ』の開発協力者であるシカゴ交響楽団のジョン・ハグストロムさんの提案でした。ジョンさんは楽器コレクターでもあるのですが、ご自身が所有しているビンテージトランペットに関する資料をみせてくださったことが、“ある箇所”に注目するヒントとなりました」(福田さん)

ウォーターキイコルクについては、素材を変更。ゴムとコルクのよい部分を併せ持ち、かつ経時変化しにくいラバーコルクを採用することで、音がまとまりやすくなり、音の遠達性と反応性も向上しました。
「大きく変わったのは、楽器に息を吹き込んだときの抵抗感です。優れた楽器にはかならず心地よい抵抗があるもので、強すぎても弱すぎてもいけませんが、奏者にとって最適な抵抗感を実現できました」(福田さん)

(写真左)開発担当の福田徳久さん。現在は、管楽器全体の商品企画を担当。(写真中央)開発担当の古海(ふるみ)勝彦さん。(写真右)マーケティング担当の武居健太郎さん。福田さんはアマチュアオーケストラ・吹奏楽団で、古海さんはヤマハ吹奏楽団でトランペットを担当している。

トランペットは、素材や仕上げ(塗装)などによって音色・吹奏感が変わりますが、実は楽器のキャラクターを決定づける一番の要素は、外からは見えない管の内径(直径)やテーパー(傾斜)具合なのだとか。また、製造プロセス、製造方法の違いによっても音色・吹奏感は変わってくるそう。
「楽器の製造においては、アーティストとともに開発した試作品と同じ品質の楽器をいかに忠実に再現するかが重要です。今回、管を曲げる工程だけでも準備に数か月かけていますが、一定の期間で、楽器を安定してつくり続けるための生産工程を確立するために試行錯誤を重ねました」(古海さん)

トランペットは、工房や楽器店で パーツを交換したり、付けたりすることができることから、プロ奏者や こだわりのアマチュア奏者が、自分好みに楽器をカスタマイズすることも 少なくはない。
「プロの奏者のなかには、『今使っている楽器に何かあっても、楽器店に行けば同じクオリティの物が手に入るので安心です』とおっしゃる方もいます。店頭に並んでいるのは、開発協力者である海外の一流奏者からお墨付きをもらった楽器ですので、プロの奏者の方はもちろん、プロを目指す音大生やハイレベルなアマチュア奏者の方も、いろいろ吹き比べて、自分の音楽を表現できる1本を見付けていただきたいです」と、マーケティング担当の武居健太郎さん。

楽器に付属する専用ケースは、セミハードケースで扱いやすく、2本収められるのがポイント。B管とC管など、複数本を持ち変えて吹くことが多いトランペット奏者のことを考えた造りになっています。

専用ケースは、手持ち・肩掛けだけでなく、背負うこともできる3way仕様。

楽器として高い完成度を誇り、オーケストラ奏者だけでなく、幅広いジャンルの奏者が支持する「ゼノアーティストモデル」。これからも奏者の音楽表現を最大限に引き出す楽器を生み出すために、みなさんの挑戦は続いていきます。

■Xeno Artist Model シカゴシリーズ

Bトランペット YTR-9335CHS
詳細はこちら

Cトランペット YTR-9445CHS
詳細はこちら

■Xeno Artist Model ニューヨークシリーズ

Bトランペット YTR-9335NYS
詳細はこちら

Cトランペット YTR-9445NYS-YS
詳細はこちら

Cトランペット YTR-9445NYS-YM
詳細はこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:大塚 愛さん「私にとって音は生き物。すべての音が動いています」

16707views

音楽ライターの眼

シリーズ三度目のショスタコーヴィチはさらなる進化と深化の高みへ/徳永二男、堤剛、練木繁夫による珠玉のピアノトリオ・コンサートVol.8

1606views

STAGEA(ステージア)ELB-02 - Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンで初めてオーディオファイル録音機能を装備

13136views

楽器のあれこれQ&A

講師がアドバイス!フルート初心者が知っておきたい5つのポイント

18254views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

11153views

オトノ仕事人

リスナーとの絆を大切にする番組作り/クラシック専門のインターネットラジオを制作・発信する仕事

5367views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

20839views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5351views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12815views

われら音遊人

われら音遊人:ただ今、バンド活動リハビリ中!

7830views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

8452views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25065views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

8600views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

11226views

音楽ライターの眼

連載45[ジャズ事始め]アジアをジャズの発信源にしようとした“エイジアン・ファンタジィ・オーケストラ”という試み

1409views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

2202views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

1738views

楽器探訪 Anothertake

26年ぶりにラインアップを一新!「長く持っても疲れにくい」を実現し、フラッグシップモデルが加わったバリトンサクソフォン

3545views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

20839views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

4500views

暖房

楽器のあれこれQ&A

ピアノを最適な状態に保つには?暖房を入れた室内での注意点や対策

55438views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

2918views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9903views