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今月の音遊人:横山剣さん「音楽には、癒やしよりも刺激や興奮を求めているのかも」
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トップミュージシャンが奏でるビッグバンドに満員の聴衆がエキサイト/「Makoto Ozone No Name Horses ~20年目のthe Day 1」ツアーレポート
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2025.4.2
tagged: No Name Horses, レビュー, 小曽根真
今を遡ること21年。日本を代表するジャズボーカリスト、伊藤君子のアルバム『Once You’ve Been In Love 一度恋をしたら』の制作のために、小曽根真、エリック・ミヤシロ、中川英二郎らをはじめとする日本のトップミュージシャンたちがスタジオに集められた。小曽根のプロデュース&ビッグバンド・アレンジによって行われたそのレコーディング・セッションで意気投合した彼らは、誰からともなく「このバンドのアルバムを作ってみたいね」と語り合い、翌2005年に正式にバンドを結成。小曽根真 No Name Horses(以下NNH)が誕生した。当初、アルバムを1枚発表して終えるはずだったそのバンドは、リリースツアー中にメンバーたちからあがってきた「次はいつやるの?」の声をバネに活動を継続。ラテン・ジャズを盛り込んだアルバム『JUNGLE』、壮大なオリジナル組曲やガーシュウィンの『ラプソディー・イン・ブルー』を含む交響詩作品『ROAD』、プログレッシヴロックとビッグバンド・サウンドの融合に挑んだ『Until We Vanish 15×15』など新たなサウンドを開拓し続けてきた。小曽根は、結成20周年を迎えるにあたり、松井秀太郎、小川晋平、陸悠ら3名のライジングスターを登用。ビッグバンドの王道であるスウィングと豊かな響きにフォーカスし、新たなスタートを切るという意味を込めた『Day 1』というタイトルの新作を2024年11月20日に発表した。そのリリースから約1か月半を経た2025年1月11日にスタートしたアルバムリリースツアー第1弾。その6日目の会場となる厚木市文化会館は、この日を待ちわびていたファンでぎっしり満員だ。
一足先にステージに姿を見せたドラムの高橋信之介とベースの小川晋平。ふたりが刻むアップテンポのスウィングビートに導かれるようにして、小曽根と12名のホーン奏者が登場した瞬間に大きな歓声が湧きあがる。小曽根の軽やかなピアノイントロが添えられた演奏は、トランペットセクションとサクソフォンセクションが交わすコール&レスポンスがゴージャスなテーマを描き出す『Day 1』へと連なっていく。トランぺットの奥村晶が張りのあるハイノートでソロの先陣を切ると、続くアルトサクソフォンの池田篤は、16小節にわたるロング・トーンでスタートする大胆なソロを披露。二人の個性豊なブロウに会場から大きな拍手が送られる。
その後ステージでは、バストロンボーンの山城純子とベースの小川という低音楽器二人にスポットを当てた『ムール・マニエール』、抜群のスピード感を誇るマーシャル・ジルクスと、抑揚と陰影に富んだプレイで名高い中川英二郎の日米2大トロンボニストをフィーチャーした『T・フォー・2』、岡崎正典の美しいソプラノサックスとエリック・ミヤシロのふくよかなフリューゲルホルンが典雅な世界を描きあげる『インフィニティ』という、それぞれに味わいの異なる楽曲が披露されていった。
その中で極めて印象的だったのが小曽根のタッチの豊かさだった。1曲目『Day 1』を華やかな音色で飾ったあとの2曲目『ムール・マニエール』では、バストロンボーンとベースのアンサンブルに合わせたまろやかなタッチを披露した。今回のツアーは、総勢15名のメンバーのほか、コンサートを支える音響や照明、舞台進行のスタッフだけでなく、ヤマハのコンサートグランドピアノ「CFX」とコンサートチューナーの曽我紀之氏も帯同している。ベストの状態に保たれたピアノと、それを知り抜いた小曽根のコラボレーションによって、ピアノの豊かな響きを堪能することができるのも大きな魅力だ。第1部最終曲『ファン&ゲームズ』では、そのピアノ※のMidi機能を活かしたエレクトリックピアノ的なサウンドも登場し、演奏をカラフルに彩った。
※ハイブリッドピアノDisklavierの機能を実装したコンサートグランドピアノCFXです(非売品)
アルバム『Day 1』の楽曲を中心にして、実力者揃いのメンバーのソロをフィーチャーしながらオーディエンスを楽しませた第1部。それに続く第2部は、さらに多彩な演奏で魅了した。クラシック音楽のような華やかな金管サウンドと濃厚なジャズフィーリングが溶け合う『マイ・ウィーナー・シュニッツェル』、ストリングスを思わせる柔らかなアンサンブルをバックに三木俊雄のテナーが切なげなソロを綴る『オーディナリー・デイズ』、ピアノとベース&リズムで始められたコール&レスポンスがダイナミックなホーンアンサンブルへと連なっていく『スリー・ウィッシズ』と次々に演奏されていく。
小曽根ファンにとって大きな贈りものとなったのが、4曲目に披露された『デヴィエーション』だった。小曽根の最新ピアノ・トリオ・アルバム『TRiNFiNiTY』で初演され、アルバム『Day 1』でビッグバンド演奏された同曲をソロピアノで織りあげる小曽根。その情感豊かな演奏からは、曲に込められた強い想いと同時に、小曽根のピアノの音色をじっくり味わいたいと願うオーディエンスへの温かな配慮が伝わってきた。そのあとは小曽根の超人気曲『ガッタ・ビー・ハッピー』を披露。この日のフィナーレがエキサイティングに飾られた。
今回のNNHのツアーを終えたあとも、小曽根はソロ演奏やオーケストラとの共演などによるさまざまなコンサートに出演する。2025年12月にはNNHのツアー第2弾も予定されているとのこと。これからも小曽根から目が離せなくなりそうだ。
2025年
12月10日(水):札幌コンサートホールKitara
12月12日(金):金沢市文化ホール
12月13日(土)~14(日):Bunkamuraオーチャードホール
12月16日(火):兵庫県立芸術文化センター
12月18日(木):熊本県立劇場
12月19日(金):福岡市民ホール
12月20日(土):三原市芸術文化センターポポロ
12月21日(日):滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
No Name Horsesオフィシャルサイト
出演:小曽根真(pf)
日時:2025年5月22日(木) 開場 18:30/開演 19:00
会場:住友生命いずみホール(大阪府)
料金:一般 6,500円、フレンズ 5,800円、U-30 2,000円(税込・全席指定)
詳細はこちら
出演:小曽根真(pf)小川晋平(b)きたいくにと(dr)
日時:2025年6月21日(土) 開場 15:15/開演 16:00
会場:日田市民文化会館 パトリア日田 大ホール(大分県)
料金:一般 6,000円、友の会 5,500円、高校生以下 3,000円(税込・全席指定・未就学児入場不可)
詳細はこちら
出演:小曽根真(pf)壷阪健登(pf)
日時:2025年6月22日(日)開場 15:30/開演 16:00
会場:春日市ふれあい文化センター スプリングホール(福岡県)
料金:一般 6,000円、友の会 5,400円(税込・全席指定・未就学児入場不可)
詳細はこちら
文/ 早田和音
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