Web音遊人(みゅーじん)

Web音遊人_小沼ようすけ

自分の音を探し求めた日々、それがあったからこそ今は演奏が楽しくて仕方ない/小沼ようすけインタビュー

2016年の小沼ようすけは、新境地を開拓するライブで幕を開けた。日本を代表するフラメンコカンタオール&ギターの石塚隆充と、ベース弦を張った変則チューニングギターを操る美声の持ち主のカイペティートの、3ギター2ボイスというユニークなトリオに付けられた名前は、「Allende(アジェンデ)」。大航海時代によく使われた言葉で、“向こう側”という意味があるそうだ。それぞれの音で新しい世界に漕ぎ出そうとする思いが込められたネーミングでもある。

「リズムや曲のテイストの違いさえ共有して楽しめるというか、それぞれの心の奥底にあるものが音楽となって表に出てくる瞬間の素晴らしさを感じられたライブでした」
二晩だけの予定だった「Allende」のステージは2016年3月末に再演が決まった。そのリハーサルの様子が小沼のウェブサイトで公開されているが、その映像から伝わってくる“真っ直ぐな楽しさ”は必見必聴と言えるだろう。


Allendeリハーサル

 

再演と言えば、2016年1月末から東京~大阪間6箇所で行われた“炎のオルガントリオ”も強力だった。かつてオハイオの神童と呼ばれたジャズオルガンプレイヤーのトニー・モナコと、ハービー・ハンコック・バンドに10年在籍したドラマー、ジーン・ジャクソン。彼らと小沼のトリオが結成されたのは2011年の東京。その久々の復活に当たって今回は新曲も用意した。そんなパワフルなスタートを切った今年は、これまでにない何かが起こる期待に満ちていると小沼は言う。

「いろいろ経験し、考え、年齢的なことも含めて一巡して、ジャズに対して改めて気付けたことがありました」
「一巡」というキーワードは、小沼が40歳を間近に迎えた2014年10月にリリースされた4年ぶりのアルバム、『GNJ』のライナーノーツにも登場している。
「そもそもアメリカで生まれたジャズを日本人の僕が表現しきれるんだろうか?本当の自分の音って何だろう?それをずっと探していたんです。20代の頃はアメリカやヨーロッパの音楽を吸収することに費やしました。ところが30代になった途端、僕が求めていたのは好きなミュージシャンの音なのかと悩み始めてしまって……。フレーズじゃないんです。ポロンと鳴らした瞬間に出る響きが僕ならではの音であること。それが欲しくて仕方なかった」

自分の音を探すために海のそばで暮らし、サーフィンなどをして自然からの刺激を求めたが、それでも100パーセントに満たなかったのが30代だったという。
「でも、それも無駄じゃなかった。というのは、日常の中で自然にあふれてくる音が僕らしい音だと悟ることができたから。思い出したんです、ジャズにハマった最初の楽しさを。すべて進行形なんですよね。過去を振り返らず今だけを表現する。人も歳を重ねれば枯れてくるけれど、その瞬間のジャズを奏でればいいと気づけた。だから今は演奏が楽しくて仕方ない。たとえば15年前のデビューアルバムの曲を弾いても、表面的な音は当時と違っても自分の内側でワクワクする感じは何も変わっていないんですよね」と小沼は語る。

Web音遊人_小沼ようすけ

2016年はヨーロッパに行きたいですね。いろんな文化が混ざった未知の世界に、今の僕に必要な音がある気がして。
はっきりした根拠はないですけど。

2016年3月初旬には、ジャズやポップスの世界で活躍する渥美幸裕とのギター対決ライブが4公演あり、中旬には都内のジャズクラブで、松本圭使(ピアノ)、小牧良平(ベース)、田中徳崇(ドラム)を迎えた、2016年初のカルテットライブ『小沼ようすけセッション』が控えている。その翌日には帯広に飛び『プレミアムジャズナイト』に参加。その翌晩は厚木でソロライブと、全国を飛び回る多彩かつ意欲的な演奏活動に臨む。
「やる気満々です!そんな言葉、なかなか言えないですよね(笑)。でも、そういう思いが自然と沸いてくる今が本当に楽しい。今年はおもしろくなりますよ」

■ライブ情報

詳細はオフィシャルサイトでご確認ください。
オフィシャルサイトはこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:マキタスポーツさん「オトネタ作りも、音楽に関わるようになったのも、佐野元春さんに出会ったことから始まっています」

8764views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#030 “ため息”の魅力を際立たせたアレンジャーの作戦勝ち!?~ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』編

1685views

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

24450views

フルート

楽器のあれこれQ&A

初心者にもよくわかる!フルートの種類と選び方

22566views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

9767views

出演アーティストの発掘からライブ制作までを一手に担う/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事 (前編)

オトノ仕事人

出演アーティストの発掘からライブ制作までを一手に担う/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事 (前編)

19096views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

22852views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5860views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

33115views

われら音遊人:Kakky(カッキー)

われら音遊人

われら音遊人:オカリナの豊かな表現力で聴いている人たちを笑顔に!

8689views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

8896views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32093views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

10296views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

14553views

音楽ライターの眼

アラン・ホールズワースの超絶ギターが蘇る『ライヴ・イン・レヴァークーゼン2010』発表

3645views

一瀬忍

オトノ仕事人

ピアノとピアニストの絆を築く、アーティストリレーションの仕事

4795views

われら音遊人

われら音遊人:路上イベントで演奏を楽しみ地域活性にも貢献

3808views

楽器探訪 Anothertake

世界の一流奏者が愛用するトランペット「Xeno Artist Model」がモデルチェンジ

27770views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

12668views

サクソフォン、そろそろ「テイク・ファイブ」に挑戦しようか、なんて思ってはいるのですが

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォンをはじめて10年、目標の「テイク・ファイブ」は近いか、遠いのか……。

8699views

CLP-825WH

楽器のあれこれQ&A

はじめての電子ピアノを選ぶポイントや練習を続けるコツ

1687views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

10492views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32093views