今月の音遊人
今月の音遊人:世良公則さん「僕にとって音楽は、ロックに魅了された中学生時代から“引き続けている1本の線”なんです」
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“19世紀に生きていた聴衆の感動”を追体験するかのようなコンサート「情・妙・技・巧 パガニーニ 東京音楽史管弦楽団第3回演奏会 with 髙⽊凜々⼦」が開催
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2025.5.19
元NHK交響楽団の首席オーボエ奏者で現在は指揮者として活動する茂木大輔。彼が率いる東京音楽史管弦楽団のスペシャルな演奏会が決定した。伝説的なバイオリニストであるパガニーニをテーマにした本公演のプログラムについて、ゲスト出演するバイオリニストの髙木凜々子とピアニストのBudo(ぶどう)を交えてコンサートに向けた思いを聞いた。
茂木大輔が率いる東京音楽史管弦楽団の「情・妙・技・巧 パガニーニ 東京音楽史管弦楽団第3回演奏会 with 髙⽊凜々⼦」が2025年9月15日(月・祝)に第一生命ホール(東京)で開催される。今回テーマに取り上げるのは、19世紀に大活躍し、人々を熱狂の渦に巻き込みながらも、「悪魔に魂を売り渡した代償に超絶技巧を手に入れた」と噂されたバイオリニストであり作曲家のニコロ・パガニーニ。実は、昨年行われた東京音楽史管弦楽団の初公演「百花繚乱」を開催した時点で、すでにパガニーニを取り上げるコンサートを計画していたという。
「『百花繚乱』で共演した髙木さんには、その時に『決まったら出てね』とお願いしていました。ですから、この公演はまさに満を持してという感じですね。僕が声をかけられる最高のスターたちにゲストとして来ていただけることになりました」(茂木さん)
こう話すように、本公演のゲストには、髙木凜々子(バイオリン)、Budo(ピアノ)、高島健一郎(テノール)と、人気・実力ともに兼ね備えた錚々たる名前が並ぶ。「稀代の天才」「悪魔的技巧」などと評された伝説的な音楽家を、現代の若手音楽家たちがどう奏で、どう歌うのか。今から期待がふくらむばかりである。

左から、髙木凜々子、茂木大輔、Budo
「パガニーニといえば、名高いバイオリンの名手ですよね。パガニーニの曲を演奏することは、私の憧れのひとつでもあります。でも、ひとりのバイオリニストとしては超えなければいけない存在だとも感じていて、偉そうな言い方かもしれませんが、演奏者としては負けたくないなとも思っています」(髙木さん)
「僕はピアニストですから、パガニーニを知ったのはリストの曲からでした。10代のころ、かっこいいなと思って弾いていたのが『パガニーニによる大練習曲』の『ラ・カンパネラ』だったんです。そう思うと、特別意識しなくても、ピアニストであれば人生のどこかで必ずパガニーニに関連する曲と出会うのではないでしょうか。そのくらい数多くの作曲家に大きな影響を与えた人ですし、僕の中にもパガニーニの血は流れているのかもしれません」(Budoさん)

本公演で披露される楽曲も実に豪華だ。パガニーニの作品からは『バイオリン協奏曲第1番』と『バイオリン協奏曲第2番より第3楽章「ラ・カンパネラ」』。そして、彼にゆかりのある作品として、リストの『ラ・カンパネラ』、ラフマニノフ『パガニーニの主題による狂詩曲』などが予定されている。
「堪能していただきたいのは、やはりパガニーニとリスト、名技巧者とうたわれる両者の『ラ・カンパネラ』でしょう。髙木さんとBudoさんにご出演いただけるからこそ実現した選曲です。この他に予定している曲も、パガニーニという人物と、真正面からとことん向き合うような作品ばかりです。パガニーニの曲がもつ圧倒的な輝きを全身に浴びてほしいと思います。もしかすると、終演後の観客の皆さんは立ち上がれないかもしれないね(笑)」(茂木さん)

また、今回の公演は、音楽イラストレーターで漫画家のやまみちゆかによる『漫画 パガニーニ ~悪魔と呼ばれた超絶技巧ヴァイオリニスト~』の発売記念も兼ねている。
鮮烈な技巧面だけを残して姿を消してしまったパガニーニ。彼の人物像や本質について書かれた資料は少なく、やまみちは古い書物やイタリア語の原書を翻訳しながら一つひとつ丁寧に調べ、まとめ上げた。現在ではその多くがセンセーショナルな言葉で語られる印象の強いパガニーニだが、この漫画を読むとまた違った側面が見えてくるだろう。謎の多いパガニーニの人となりを知るには最適の一冊である。コンサートではやまみち本人によるステージトークも予定されており、とっておきのエピソードが聞けるかもしれない。
「天才で魅力的がゆえにいろいろ言われてしまったのだろうけれど、実際の彼はとても優しくて温かい、愛に満ちあふれた人だったのだと思います。既存のイメージをくつがえす新しいパガニーニ像について、やまみちさん自身から語っていただきます。ある意味、コンサートとこの漫画は対を成すもの。両方を楽しんでいただき、パガニーニというひとりの人間の魅力を再発見してほしいですね」(茂木さん)
演出についても、パガニーニが活躍していた19世紀当時を再現するようなものになるそうで、「一瞬たりとも見逃し、聴き逃しはできませんよ」と全員が口をそろえる。
「この日にしか聴けない演奏を、ぜひ生で体験してください。バイオリンからこんな音が出るの?本当にひとりで弾いているの?と驚いたり、歌詞はついていないけれど歌が聴こえてきたりするような瞬間もあると思います。きっと、さまざまな感情を揺さぶられるコンサートになりますから、どうぞお楽しみに」(髙木さん)

「ロマン派以降の作曲家全員に影響を与えているんじゃないかというほどの人物であり、ピアノを演奏する者にとっても“好きな作曲家をたどると彼がいる”と言えるくらいパガニーニは存在感のある人物です。本番では、演奏者全員にパガニーニが降臨するかもしれません。当日は、彼のように会場を魅了するスターとしてステージに立ちたいと思います」(Budoさん)
「パガニーニという人物が、当時どんな熱狂を巻き起こしたのか。謎が多いにもかかわらず、現代のバイオリニストや演奏家、作曲家にとって避けては通れない存在になっているのはなぜか。そこを突き詰めるコンサートにしたいと思っています。ぜひコンサート会場で“19世紀に生きていた聴衆の感動”を追体験していただけたなら嬉しいですね」(茂木さん)
類いまれなる技巧で、多大なる賛嘆と驚きを呼んだ名手パガニーニ。彼が生き、奏でた19世紀ヨーロッパの華やかさを感じられるコンサートになりそうだ。
日時:2025年9⽉15⽇(月・祝)19:00開演
会場:第一⽣命ホール(東京都中央区)
出演:茂⽊⼤輔、髙⽊凜々⼦、Budo、⾼島健⼀郎、東京⾳楽史管弦楽団、﨑谷直人(コンサートマスター)
演目:パガニーニ キャプリス24番より、バイオリン協奏曲第1番、バイオリン協奏曲第2番より第3楽章「ラ・カンパネラ」/リスト ラ・カンパネラ/ラフマニノフ 「パガニーニの主題による狂詩曲」より 他
料金(税込):
全席指定:S席9,500円/A席8,000円/特別シート12,000円(ステージ前方数列)
書籍付:S席11,000円/特別シート13,500円(ステージ前方数列)
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著者:やまみちゆか 監修:浦久俊彦
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
発売日:2025年9月29日
料金:1,980円(税込)
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