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鍵盤ハーモニカの奥深い魅力と無限の可能性を伝えたい/妹尾美穂インタビュー
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2025.7.18
「鍵盤ハーモニカは楽器としてのポテンシャルがとても高く、最強の楽器だと思います」。そう語るのは、鍵盤ハーモニカ奏者の妹尾美穂さん。小学校の音楽専科として子どもたちを教えた経験を生かし、コンサートや学校での芸術鑑賞会、ワークショップ、指導者研修などを全国で展開している。
まるで歌うように、鍵盤ハーモニカと一体となって音色や音楽の表情を自在に変える妹尾さん。その音楽は聴く人の心にストレートに届き、大きく心を揺さぶる。これほどまでに繊細な演奏はどのようにして生まれるのだろう。
「鍵盤ハーモニカは楽器自体がとてもシンプルな分、自分の欲しい音、表現したい音色を自分で作り出せる楽器です。たとえば鍵盤をゆっくり、優しくタッチすることでバイオリンのようなアプローチもできますし、時にはアコーディオンの雰囲気を漂わせることもできます。ヤマハの鍵盤ハーモニカ『ピアニカ』は、奏者の気持ちやどのように演奏したいのかを楽器としてシンプルに伝えてくれることが魅力だと感じます。自分自身のバイブレーションまで伝播していく感覚があって、奏者としての自分磨きにもなりますね。どのように演奏したら欲しい音が出せるかは今もずっと探求していますし、他の管楽器奏者にアイデアをもらったりもします」
息とタッチの兼ね合い、微妙なタイミングによって新しい音が生み出される、実に奥深い世界だ。
「また、鍵盤ハーモニカは一音の中でクレッシェンドすることができるので、ひとつの音の中でも表情を変えることができます。指使いによっても音のニュアンスは変わります。表現の仕方に無限の可能性があって、究極の創造性を引き出してくれる。だから最強なんです!」
鍵盤ハーモニカといえば、子どもたちが幼稚園や保育園、小学校で習う楽器としてもお馴染み。妹尾さんは、そうした導入の場でも積極的にコンサートや指導の活動を行って、演奏のイメージを広げている。

ピアニカアーティストがレクチャーするスペシャル動画にも登場した妹尾さん
楽しく吹こう♪ピアニカはじめましょう
ある学校のワークショップでのひとこま。「カッコウの鳴き声を聴いてみよう」と呼びかけ、実際の鳴き声を聴いてから、それをまずは声で鳴き真似し、「今のように吹いてみよう」と言うと、子どもたちはカッコウの鳴き声を見事に音で表現したという。奏法を言葉で理解するよりも、ずっと楽しく、ずっと早く、音楽的な音が表現できた。提示の方法ひとつで音はガラリと変わるのだ。
「このアプローチが結果的にスタッカートにもなるんです。スタッカートはこう弾くもの、ではなくて、音を作りながら楽器と仲よくなって覚えていく。鍵盤ハーモニカは子どもたちにとって、楽器との出会いの扉となるアイテム。そこから自分を表現できる楽器という存在に気づいて、音楽の楽しさを知ってほしいなと思います」

鍵盤ハーモニカが主役となるバラエティ豊かなコンサートやイベントを精力的に開催
妹尾さんによると、日本での鍵盤ハーモニカ経験者は約7,000万人という推計もあるとか。これだけの共通体験をもつものが他にあるだろうか。だからこそ、自分自身が演奏家としてロールモデルになり、楽器としての魅力を伝えようと、『ぴあんぱ』の愛称で子どもたちのところに演奏に行ったり、妹尾美穂として曲を作ってアルバムを出したりと、多岐にわたるフィールドで思いを表現し続け、2024年は『楽器店大賞2024』プレイヤー特別部門(ソロ)で大賞も受賞した。
こうした「種まき」の活動が実り、表現することや仲間とのアンサンブルの楽しさを知り、鍵盤ハーモニカを演奏したいという人が増えているそうだ。
「今、大人の鍵盤ハーモニカ愛好者がとても増えています。好きな曲のフレーズを弾いてみる、人とハーモニーを合わせるといった楽しさの領域に、最短で行き着けるのが鍵盤ハーモニカ。これは大きな強みです。もちろん高齢の方にも楽しんでいただけます。小さいので気軽に持ち運びもできます」
小学生がいる家庭では、夏休みなど、長期休みの前には持ち帰られるはず。そのチャンスに、子どもと一緒に吹いてみるのもよさそうだ。
「音楽に間違いはありません!正しく吹かなきゃと思わずに、音楽のコミュニケーションを楽しんでほしいですね。大人が息を入れて、子どもが弾く、といったアプローチもおすすめですよ」

鍵盤ハーモニカ奏者のロールモデルとして、その魅力を発信し続ける
「身近にある楽器だからこそ、いろんなものを受け取ってもらいたい」という妹尾さん。技術面だけではなく、情操教育にもつながると強調する。
「音楽で人とつながることで心の教育にもなりますし、何よりもまず、非言語なのですから、これひとつで世界とつながれるんです!」
かつてのテレビ番組のような共通コンテンツが少なくなり、それぞれの好きな世界が確立されている現代社会。
「そういう世の中だからこそ、音楽に触れる時間や音楽の授業は、非言語で人とつながって、細胞レベルまで共感しあえる、すごく大事なものになっています。日本語に、『息が合う』という素敵な言葉がありますね。鍵盤ハーモニカでその体験をたくさんの人にしてもらって、みんなの笑顔を増やしたい。私のアーティストとしての原動力はそこにあります」
エネルギッシュにマルチな活動を展開する鍵盤ハーモニカ奏者、妹尾美穂さんの今後の活躍に注目したい。
自身で作曲の“Part of your world”を大人のピアニカ(P-37E2 ブラウン)で表現力豊かに演奏。
日時:2025年7月20日(日)14:00開演(13:30開場)
会場:Star Pine’s Cafe(スターパインズカフェ)(東京都武蔵野市)
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文/ 芹澤一美
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tagged: 妹尾美穂, ぴあんぱ, ピアニカ, 鍵盤ハーモニカ
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