今月の音遊人
今月の音遊人:大塚 愛さん「私にとって音は生き物。すべての音が動いています」
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ヤマハから、ハイエンド サウンドバー「SR-X90A」が登場した。ホームシアターの技術とノウハウを結集し、サウンドバーで実現できる音質の限界に挑んだモデルであり、新たなステージを拓いたパイオニア的存在と位置づけられている。
ヤマハはサウンドバー市場において数々の高品質な製品を世に送り出してきた。たとえば、音をビーム状に放出し、壁面反射を活用した世界初のデジタルサウンドプロジェクター「YSP-1」。2004年に登場したこの初号機から2016年に発売された「YSP-2700」まで、YSPシリーズは高い評価を得てきた。
では、今なぜYSPシリーズの後継モデルではなく、ハイエンドモデルの「SR-X90A」をつくったのか。教えてくれたのは、ヤマハミュージックジャパンの北澤雅幸さん。
「現在のホームシアターを取り巻く環境は、大きく変わっています。Dolby Atmosの空間オーディオや最近話題のQobuzなど、高品質なストリーミングサービスが増えてきました。お客様に満足していただくためには、こうした環境を最大限に生かす音質の実現が必要だと考えました」
ヤマハの歴代サウンドバーのなかで、いちばん音がいいサウンドバーをつくろう。そんな思いで開発が進められたという。
「SR-X90A」の特徴のひとつは、AVレシーバーの上位機種「AVENTAGE」シリーズのみに搭載されている「SURROUND:AI」を採用していることだ。これは、ヤマハのサウンドエンジニアが推奨する理想的な音場環境を常に提供するDSP技術に加え、AIが視聴中のコンテンツに含まれるセリフやBGM、環境音、効果音など音の要素を分析し、シーンに応じて最適な音場効果を自動的につくり出してくれるもの。このヤマハ独自の機能に惹かれて「AVENTAGE」シリーズを購入する人も少なくないほど評価が高い。
YSPシリーズの技術も受け継いでいる。サウンドバーの両端に6つのハイトビームスピーカーを設置して、音をビーム状に放出。音の定位を天井に作り出すことで、まるでそこにスピーカーが設置されているかのような、上方からの音を体感できる。

一方、YSPシリーズと異なるのはフロントスピーカーに3ch分のツイーター+フルレンジ・スピーカーを導入している点だ。新たに開発されたこのスピーカーユニットは、理想の音を実現するための重要なポイントだ。
フルレンジ・スピーカーには、新開発「アイシェイプド・オーバル・スピーカー」を採用。滑らかなスロープの形状が振動をより自然にする役割を果たし、スピーカーユニットから直接音圧を得るのではなく、何もない空間から浮かび上がる没入感のある音場をつくり出す。
「YSPシリーズではスピーカーサイズが小さいため、音圧や音域に制限があり、迫力ある表現が難しかったです。3ch分のスピーカーを搭載し、より進化したバーチャルサラウンドの技術を用いることでクオリティの高い音が実現しました。それぞれのスピーカーがしっかりと役割を果たしていて、このサイズでこれだけの音を出せるのかという驚きを感じていただけると思います」(北澤さん)

新開発のアイシェイプド・オーバル・スピーカー。センターユニットの高さを抑えながら、力強く豊かな中音域とクリアな音質を再現している。
「SR-X90A」は、サウンドバー本体とワイヤレスサブウーファーのセットになっており、サブウーファーにも新たな独自技術が搭載されている。バスレフポートの空気の流れをコントロールする「シンメトリカル フレア ポート」によって、ポートノイズを20dB削減。さらにマルチバンドリミッターを採用することで、自然で迫力ある低域を再現する。
HiFiクオリティの音質を実現するため、筐体の高剛性も追求した。高剛性メタルフレームを採用するとともに、キャビネットの振動を抑制してスピーカーユニットの能力を最大限に引き出す大型樹脂の脚が配されている。
声がクリアになるよう調整してくれる「クリアボイス」や低音域を増強する「バスエクステンション」、ワイヤレスネットワーク機能「MusicCast」も搭載。また、高品質な音楽コンテンツに定評があるAURO-3Dにサウンドバーでは世界で初めて対応し、その魅力が存分に味わえるようチューニングが施されている。

左:センターユニットには、接地面を増やした大型樹脂製脚を採用している。壁掛け設置も可能。
右:新技術「シンメトリカル フレア ポート」搭載のサブウーファー。
「SR-X90A」で異なるジャンルのコンテンツを複数視聴した。
まずは、森山直太朗の『素晴らしい世界』。ピアノとボーカルのシンプルな構成であり、ピアノのダンパー音にいたるまで細かい音が再現されているのには驚き。楽器の質感までもが伝わってくるようだった。
映画『テネット』は、オペラハウスのシーンから始まり、まさに演奏が始まろうというそのとき突如テロリストグループが突撃する。ふつうなら破綻してしまう強烈な低音もサブウーファーにマルチバンドリミッターを採用したことで自然な迫力となり、中高音域とのつながりもスムーズだ。
映画『ブレードランナー2049』も静かなシーンとダイナミックなシーンが混在するが、「SURROUND:AI」により快適に視聴できる。ボトルを空ける音やお湯が沸く音など、ふつうならなかなか聴き取れない音も見事に再現されていた。
さらに、アクション映画の『トランスフォーマーONE』は、まるで映画館で視聴しているよう。キャラクターが上下左右に移動する空間表現に加え、サブウーファーが迫力ある低域を再現する。
AURO-3DのMR.BIGライブ音源ではドラム、ギター、ベースの楽器の定位間や音場感を存分に味わうことができた。
「SR-X90A」は高価格帯のサウンドバーだ。しかし、仮にAVアンプとスピーカーで同様のクオリティのホームシアターシステムを構築するならば、より高額になるだろう。さらに、いくつものスピーカーを置いたり、ケーブルを這わせたりといった煩雑さも避けられない。その点、「SR-X90A」ならコストを抑えつつ、このような設置の問題も解決できる。
本格的な音響体験を、もっとスマートに楽しみたい――そう望む人にとって「SR-X90A」は最良の選択肢になるだろう。

さらに進化したビームスピーカー技術の搭載により、ヤマハのサウンドバー史上、最もリアルなハイトチャンネル再生とDolby Atmosによる圧倒的な臨場感を実現。想像を超えるサウンドバー。
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文/ 福田素子
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