Web音遊人(みゅーじん)

亀井聖矢

今月の音遊人:亀井聖矢さん「音楽は感情を具現化したもの。だからこそ嘘をつけません」

2023年に続き、2024年も7月から全国各地でのリサイタルツアーを行う亀井聖矢さん。今世界中から熱い視線が注がれ、若手の中でも人気が高まっている亀井さんに、ピアノを弾くきっかけとなった曲や、ピアニストとしての音楽との向き合い方などについてお話を聞いた。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

リストの『ラ・カンパネラ』かもしれません。子供のころ、移動する時に親が車の中で流していたクラシック名曲集のCDに入っていて、何度も聴いているうちに好きになり、自分でも弾いてみたいと思うようになりました。ほかにも、ベートーヴェンの『熱情』やショパンのエチュードも入っていた記憶がありますが、いちばん心惹かれたのが『ラ・カンパネラ』でした。
聴き慣れていることもあってとても好きな演奏だったのですが、ピアニストが誰だったのかわかりません。
そして今はその聴いた回数に追いつくのではないかというくらい、何度もコンサートなどで弾いているので、逆に他のピアニストの演奏は聴かなくなりましたね。自分の演奏でこの曲のイメージが固まってきて、自分のオリジナリティを出せるようになってきたなと感じます。

亀井聖矢

(写真左)3歳のころ自宅で (写真右)幼稚園年長の発表会

Q2.亀井さんにとって「音」や「音楽」とは?

“感情を具現化したもの”でしょうか。作曲家の作品からも、感情が見えたり、聞こえたりしますし、自分自身が演奏しているときには、表現したい感情や思いがそのまま音に伝わります。
音楽は、言葉と同じように素直な感情表現をするためにすごく優れたツールです。だからこそ、嘘をつけません。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

クラシックの世界だと“遊ぶ”というイメージがつながりにくいかもしれませんが、最終的にはそれが目指すべきところなのかもしれません。
演奏というのは、自分に降ってきたインスピレーションやアイデアを咀嚼して、聴き手に届けていくことではないでしょうか。そんな始点と終点の回路がうまく繋がっている人が、“音で遊ぶ人”だと感じます。
演奏家は、その回路ができるだけスムーズ、ストレートになるよう、普段からいろいろなことを考えたり、指を動かしてテクニックを磨いたりすることで、障壁のない状態を目指しているのだと思います。

亀井聖矢

カールスルーエ音楽大学前での一枚

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

自分が何かに対して心が動いたことや感じたものが、演奏によって聴いてくださる方に伝わったと感じたときです。これは、僕が音楽をする大きなモチベーションのひとつになっています。自分が受け取る側としても与える側としても、音楽を通じて感情を共有できる瞬間は確実にあると信じています。特に自分から何かを与えることができたと感じる瞬間は、表現者としてとても幸せです。
演奏というものを通して、感動したり心を動かされたりする瞬間があること、同じ世界を共有できることこそが、“音楽をすること”の魅力だと思います。
僕自身、これからもいろいろなすばらしい演奏に触れるなかで、心の動きに素直に反応して、こういう音楽表現をしたいという欲求や内側から駆り立てられる衝動を重ねていきたいです。そうして自分の中で、個性と新しい挑戦を共存させていけたらと思っています。

亀井聖矢〔かめい・まさや〕
4歳よりピアノを始める。愛知県立明和高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学初の「飛び入学特待生」として入学。2019年、大学1年在学中に第88回日本音楽コンクールのピアノ部門第1位および聴衆賞受賞。同年、第43回ピティナ・ピアノコンペティションの特急グランプリおよび聴衆賞受賞。2022年11月、ロン=ティボー国際音楽コンクールにて第1位および聴衆賞と評論家賞を受賞。同年12月には1stフルアルバム『VIRTUOZO』をリリース。2023年に桐朋学園大学を首席で卒業。現在は、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースとドイツのカールスルーエ音楽大学に在籍している。

オフィシャルサイト

YouTube公式チャンネル オフィシャルTwitter オフィシャルInstagram

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:山田和樹さん「エルヴィス・プレスリーのクリスマスソングから『8割の美学』というものを学びました」

2730views

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase4)ガーシュウィン「キューバ序曲」、N.Y.サルサへの道 エクトル・ラボー没後30年に聴くダイバーシティ

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase4)ガーシュウィン「キューバ序曲」、N.Y.サルサへの道/エクトル・ラボー没後30年に聴くダイバーシティ

1469views

v

楽器探訪 Anothertake

弾く人にとっての理想の音を徹底的に追究したサイレントバイオリン™

6394views

ヴェノーヴァ

楽器のあれこれQ&A

気軽に始められる新しい管楽器 Venova™(ヴェノーヴァ)の魅力

1629views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

12076views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

1738views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

6853views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6475views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

21982views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

6858views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

7606views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24761views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

11163views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

11011views

音楽ライターの眼

ブラームス国際コンクール、日本人初優勝のバイオリニスト中村太地が3大Bに挑む

7783views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

1738views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

1583views

楽器探訪 Anothertake

空間を包み込む豊かな響き「フリューゲルホルン」

3755views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

8081views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

7973views

楽器のあれこれQ&A

サクソフォン講師がアドバイス!ステップアップのコツ

2205views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10470views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29101views