今月の音遊人
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今月の音遊人:亀井聖矢さん「音楽は感情を具現化したもの。だからこそ嘘をつけません」
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2024.4.1
2023年に続き、2024年も7月から全国各地でのリサイタルツアーを行う亀井聖矢さん。今世界中から熱い視線が注がれ、若手の中でも人気が高まっている亀井さんに、ピアノを弾くきっかけとなった曲や、ピアニストとしての音楽との向き合い方などについてお話を聞いた。
リストの『ラ・カンパネラ』かもしれません。子供のころ、移動する時に親が車の中で流していたクラシック名曲集のCDに入っていて、何度も聴いているうちに好きになり、自分でも弾いてみたいと思うようになりました。ほかにも、ベートーヴェンの『熱情』やショパンのエチュードも入っていた記憶がありますが、いちばん心惹かれたのが『ラ・カンパネラ』でした。
聴き慣れていることもあってとても好きな演奏だったのですが、ピアニストが誰だったのかわかりません。
そして今はその聴いた回数に追いつくのではないかというくらい、何度もコンサートなどで弾いているので、逆に他のピアニストの演奏は聴かなくなりましたね。自分の演奏でこの曲のイメージが固まってきて、自分のオリジナリティを出せるようになってきたなと感じます。
“感情を具現化したもの”でしょうか。作曲家の作品からも、感情が見えたり、聞こえたりしますし、自分自身が演奏しているときには、表現したい感情や思いがそのまま音に伝わります。
音楽は、言葉と同じように素直な感情表現をするためにすごく優れたツールです。だからこそ、嘘をつけません。
クラシックの世界だと“遊ぶ”というイメージがつながりにくいかもしれませんが、最終的にはそれが目指すべきところなのかもしれません。
演奏というのは、自分に降ってきたインスピレーションやアイデアを咀嚼して、聴き手に届けていくことではないでしょうか。そんな始点と終点の回路がうまく繋がっている人が、“音で遊ぶ人”だと感じます。
演奏家は、その回路ができるだけスムーズ、ストレートになるよう、普段からいろいろなことを考えたり、指を動かしてテクニックを磨いたりすることで、障壁のない状態を目指しているのだと思います。
自分が何かに対して心が動いたことや感じたものが、演奏によって聴いてくださる方に伝わったと感じたときです。これは、僕が音楽をする大きなモチベーションのひとつになっています。自分が受け取る側としても与える側としても、音楽を通じて感情を共有できる瞬間は確実にあると信じています。特に自分から何かを与えることができたと感じる瞬間は、表現者としてとても幸せです。
演奏というものを通して、感動したり心を動かされたりする瞬間があること、同じ世界を共有できることこそが、“音楽をすること”の魅力だと思います。
僕自身、これからもいろいろなすばらしい演奏に触れるなかで、心の動きに素直に反応して、こういう音楽表現をしたいという欲求や内側から駆り立てられる衝動を重ねていきたいです。そうして自分の中で、個性と新しい挑戦を共存させていけたらと思っています。
亀井聖矢〔かめい・まさや〕
4歳よりピアノを始める。愛知県立明和高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学初の「飛び入学特待生」として入学。2019年、大学1年在学中に第88回日本音楽コンクールのピアノ部門第1位および聴衆賞受賞。同年、第43回ピティナ・ピアノコンペティションの特急グランプリおよび聴衆賞受賞。2022年11月、ロン=ティボー国際音楽コンクールにて第1位および聴衆賞と評論家賞を受賞。同年12月には1stフルアルバム『VIRTUOZO』をリリース。2023年に桐朋学園大学を首席で卒業。現在は、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースとドイツのカールスルーエ音楽大学に在籍している。
文/ 高坂はる香
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tagged: インタビュー, ピアニスト, 今月の音遊人, 亀井聖矢
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