Web音遊人(みゅーじん)

ダニエル・ホー

グラミー賞6度受賞のマルチアーティスト、ダニエル・ホーが“人生”をテーマにしたデジタルアルバム『Timbre & Echoes』リリース

ウクレレやギター、キーボードをはじめ、さまざまな楽器を自在に操るマルチアーティストであり、過去にグラミー賞を6度受賞しているダニエル・ホーが、デジタルアルバム『Timbre & Echoes』を2025年9月1日(月)にリリース。本アルバムの制作の背景や楽曲に込めた想いなどを聞いた。

きっかけは絵画からのインスピレーション

本アルバム収録曲の一部はアメリカの国立美術館、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートからの依頼で制作することになり、同館に所蔵されている19世紀の画家トマス・コールの作品からインスピレーションを受けたことから曲づくりが始まったという。
「コロナが世界中に蔓延した時期、私は二度と音楽活動ができないかもしれないと不安にかられていました。そんなときに美術館の所蔵作品の印象をもとに音楽を制作してほしいという依頼を受け、家でひとり、同館所蔵の絵画をオンラインで見ていたら、トマス・コールの『The Voyage of Life(人生の航路)』という連作に目が留まりました。この作品群は、人が生まれ、子供から大人へと成長し、やがて死を迎える“人生”がモチーフになっています。コロナ禍で人生について深く考えていた私は、それをテーマに曲を作り始めたんです」

The Voyage of Life

トマス・コールの連作絵画『The Voyage of Life』。人間の一生が船旅にたとえて描かれている。

アルバムの2曲目を飾る組曲『The Voyage of Life Suite』は、ときに明るく、ときにせつなく響くウクレレが中心となって、人生の光と影を描いている。クラシカルな構成でありながら、ポップス的な親しみやすさとドラマ性も持つ、不思議な引力を放つ楽曲だ。
その一方で、アルバム冒頭の『Ríl Dé Máirt(Tuesday Reel)』では、アイルランドで活動するウクレレグループUkulele Tuesdayとコラボし、ケルト音楽の要素をブレンドしたキャッチーなサウンドを創出。ウクレレ=ハワイアンというイメージに縛られない自由な音楽を響かせている。
「Ukulele Tuesdayとは、イタリアのモノポリで開かれた音楽フェスティバルで出会いました。彼らは毎週火曜日に集まって、U2などのポピュラーな楽曲をカバーしているんです。とても楽しくレコーディングできたので、今後も彼らとはコラボしたいと思っています」


Ríl Dé Máirt(Tuesday Reel)

さらにダニエルは、絵画『The Voyage of Life』の『Youth』という作品から独自にイメージを膨らませ、『Manor of Dreams』というセンチメンタルな曲も書き上げている。ここには多くの人が共感できるメッセージが込められている。
「『Youth』には、背景に白いお城のようなものが描かれています。あれは“憧れ”の場所だと思うのです。子供の頃はみんな、ミュージシャンになりたいとか、ヒーローになりたいとか、いろいろな夢があって、その憧れの場所へ行きたいと思う。でも大人になると、それは簡単には行けない道のりなのだと気づく──そうした夢や憧れと現実の世界をイメージしました」

ダニエル・ホー

自分の作りたい音楽を“楽しみながら”作る

ダニエル自身、ハワイで過ごした幼少期から音楽に親しみ、高校時代には国際ピアノコンクールで準優勝。ロサンゼルスの音楽専門学校で作曲と編曲を学び、1990年にデビューを果たすが、レコード会社との契約や音楽制作の方向性で苦労した時期が続いたという。
しかし現在では自身のレコードレーベルDaniel Ho Creationsを立ち上げ、プレーヤーとしてはもちろん、プロデューサーとしても数多くの作品を手掛けるなど、自分の作りたい音楽を“楽しみながら”作る日々を送っている。
「独立してからは、さまざまな楽器をより自由に演奏するようになりました。ウクレレやハワイアン・スラック・キー・ギターをはじめ、ヤマハのサイレントギターも弾きますし、最近はベースやドラムも演奏します。自分のやりたいことが思いどおりにできるようになり、毎日朝が来るのが楽しみです」
マルチな活動のなかには楽器の製作も含まれ、ヤマハミュージックジャパンが取り扱うアメリカのギター&ウクレレブランドRomero Creationsのウクレレをプロデュースしたり、ヤマハとのコラボレーションにより自身のカスタムモデルのベースを開発したりしている。アルバム『Timbre & Echoes』でも、それらの楽器が存分に使われている。
「自分のこだわりたい音が出せる楽器がマーケットになければ“自分で作ってしまおう”と思ったことが、楽器製作に携わるようになった理由です。それができるのも、Romero Creations創業者のPepe Romero Jr.さんや、ヤマハでギターを開発している山城隆さんとの親密な信頼関係があるからこそです。現在、山城さんと一緒に開発しているベースも、ヤマハの優れた技術によって私のこだわりが細部にわたって反映されています」

ヤマハと開発しているベース

本アルバムでも使用されたヤマハのカスタムモデルのベース(プロトタイプ)を演奏。

スコアブックを使ってウクレレ演奏を楽しんでほしい

本アルバム『Timbre & Echoes』は、音源とともにウクレレのスコアブックもリリースされている。アルバムの音世界に興味を抱いた人が、自らウクレレを奏でることで、ウクレレという楽器の新たな魅力を体感できるだろう。最後にスコアブックを使って本作の楽曲を演奏するポイントを聞いた。
「スコアブックには、本作におけるウクレレの音が細かいところまで書かれています。譜面だけでなく、タブ譜も付いていますので、初心者でも演奏しやすいと思います。難しいパートがあれば、コードを弾くだけでもよいですし、とにかく楽しんで演奏してほしいと思います。音楽は“楽しむ”ことが一番です」

ダニエル・ホー

東京・渋谷のYamaha Sound Crossing Shibuyaを訪れ、アコースティックギターを楽しそうに奏でるダニエル。

■アルバム『Timbre & Echoes』

発売元:Daniel Ho Creations
発売日:2025年9月1日(月)
アルバムの詳細はこちら(英語サイト)
Apple MusicおよびiTune Storeはこちら

■スコアブック『Timbre & Echoes』

発売元:Daniel Ho Creations
発売日:2025年9月1日(月)
スコアブックの詳細はこちら(英語サイト)

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ダニエル・ホー オフィシャルサイト(英語サイト)

photo/ 坂本ようこ

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