Web音遊人(みゅーじん)

プレトークと演奏による、贅沢で優雅なトリオコンサート/ラヴェル生誕150th Anniversary 福間洸太朗、成田達輝、伊藤悠貴 トリオ・コンサート≪Trios français トリオ・フランセ≫

プレトークと演奏による、贅沢で優雅なトリオコンサート/ラヴェル生誕150th Anniversary 福間洸太朗、成田達輝、伊藤悠貴 トリオ・コンサート≪Trios français トリオ・フランセ≫

福間洸太朗(ピアノ)、成田達輝(ヴァイオリン)、伊藤悠貴(チェロ)という、それぞれの分野で大活躍を続ける、人気の若手実力派ソリスト三人が集まって、2023年に結成された「トリオ・フランセ」によるコンサート。3回目にあたる今年は、「ラヴェル生誕150年」という記念の年にちなみ、ラヴェルをメインに、ドビュッシー、フォーレのピアノ三重奏曲を演奏するという、なんとも贅沢なコンサートが2025年12月5日にヤマハホールで開催された。

有意義で楽しいプレ・トーク

この三人は年齢も近く、日ごろから仲の良い、まるで“イケメン三兄弟”のようなトリオ。“長男”の福間洸太朗を中心に、個性派二人が寄り添って結成された。コンサートの前に「プレ・トーク」が行われたが、有意義で内容の濃い、貴重な時間となった。さすがに人気アーティスト三人の登場とあって、コンサートもトークも満員の盛況だった。

プレトーク中の写真

トークでは三人がそれぞれ作曲家について、曲について詳しく解説していく。プロジェクターを使い、画面にさまざまな写真や資料を映し出して、作曲家の生涯やエピソードなどを紹介。フランスに留学した福間と成田は、自身で作曲家の記念館を訪れたときの貴重な写真なども披露。曲の解説では、楽章ごとに短い演奏を挟みながら丁寧に説明。トークは盛り上がり、30分の予定が10分以上延長となった。コンサート前の詳しい解説によって、曲を具体的に把握でき、コンサートをより深く楽しむことができた。

圧倒的な熱演と迫力の演奏

最初のドビュッシー『ピアノ三重奏曲 ト長調』は、作曲家が18歳で作曲した、若々しく瑞々しい印象の曲。チャイコフスキーのパトロンとして知られるフォン・メック夫人のスイスやイタリア旅行に同行して、彼女のために作曲された。全体にさわやかなイメージに彩られ、第2楽章のピッチカート部分はリズミックで、三人のトークによると「まるでチャイコフスキーのバレエ曲」のよう。溌剌とした演奏で、若いトリオにぴったりの曲だった。

公演中の写真

2曲目のフォーレ『ピアノ三重奏曲 Op.120』は、作曲家の最晩年、78歳の時に作曲された。フォーレは福間と成田が留学したパリ音楽院の院長も務めた人で、ラヴェルは若い頃、彼に作曲を学んでいる。トークによると「冬枯れの庭を散歩しているような渋い曲」であり、ドビュッシーの曲とは好対照となった。流麗な第1楽章に続き、第2楽章は静かに内省する思索的な雰囲気。続く第3楽章は、激しくドラマチックに盛り上がり、三人の熱演が続いた。

最後のラヴェル『ピアノ三重奏曲 イ短調』は、第一次世界大戦に従軍する直前に作曲された“ラヴェルの遺書”とも言われる傑作。出だしから三人のなみなみならぬ意気込みが感じられ、曲に引き込まれる。ピアノ、ヴァイオリン、チェロが濃密に絡み合い、緊迫感と気迫が感じられる。インティメイトな雰囲気のヤマハホールは、演奏者の表情や息遣いまで直接に感じられ、ホールと聴衆が一体となって響き合う。凄みと迫力の第2楽章、第3楽章はヴァイオリンの深い音色が耳に残る。第4楽章は圧倒的な熱演で曲を終えた。

アンコールは同じフランスの作曲家でフォーレの師でもあったサン=サーンスの『ピアノ三重奏曲 第2番』から第3楽章。舞台には四人の作曲家の写真が映し出され、「トリオ・フランセ」による優雅なコンサートは終了した。

カーテンコールの写真

石戸谷結子〔いしとや・ゆいこ〕
音楽ジャーナリスト。1946年、青森県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌「音楽の友」の編集を経て、85年からフリーランスで活動。音楽評論の執筆や講演のほか、NHK文化センター等でオペラ講座も担当。著書に「石戸谷結子のおしゃべりオペラ」「マエストロに乾杯」「オペラ入門」「ひとりでも行けるオペラ極楽ツアー」など多数。

photo/ Ayumi Kakamu

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

LEO

今月の音遊人

今月の音遊人:LEOさん「音楽とは、言葉以上のメッセージを伝えられるものであり、喜びの原点です」

4009views

音楽ライターの眼

多様性の新クラシックへ、先導役はサクソフォン/田中靖人サクソフォン・リサイタル

3547views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカを進化させる「クリップ」が誕生

21208views

FGDPシリーズ

楽器のあれこれQ&A

新たな可能性を秘めた楽器、フィンガードラムパッドに注目!

2252views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

11050views

オトノ仕事人

深く豊かなクラシックの世界への入り口を作る/音楽ジャーナリストの仕事

6477views

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

ホール自慢を聞きましょう

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

12015views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

4787views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

16088views

if~

われら音遊人

われら音遊人:まだまだ現在進行形!多くの人に曲を届けたい

2752views

山口正介 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

この感覚を体験すると「音楽がやみつきになる」

10035views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

35973views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

12793views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

16088views

音楽ライターの眼

スペース・ジャズ神サン・ラー主演SF映画『スペース・イズ・ザ・プレイス』2021年1月公開

4006views

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

オトノ仕事人

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

7507views

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

われら音遊人

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

13605views

マーチング

楽器探訪 Anothertake

見て、聴いて、楽しいマーチング

18420views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

8937views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

7696views

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法 - Web音遊人

楽器のあれこれQ&A

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法

18132views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

10746views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

29108views