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プレトークと演奏による、贅沢で優雅なトリオコンサート/ラヴェル生誕150th Anniversary 福間洸太朗、成田達輝、伊藤悠貴 トリオ・コンサート≪Trios français トリオ・フランセ≫
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2026.1.23
福間洸太朗(ピアノ)、成田達輝(ヴァイオリン)、伊藤悠貴(チェロ)という、それぞれの分野で大活躍を続ける、人気の若手実力派ソリスト三人が集まって、2023年に結成された「トリオ・フランセ」によるコンサート。3回目にあたる今年は、「ラヴェル生誕150年」という記念の年にちなみ、ラヴェルをメインに、ドビュッシー、フォーレのピアノ三重奏曲を演奏するという、なんとも贅沢なコンサートが2025年12月5日にヤマハホールで開催された。
この三人は年齢も近く、日ごろから仲の良い、まるで“イケメン三兄弟”のようなトリオ。“長男”の福間洸太朗を中心に、個性派二人が寄り添って結成された。コンサートの前に「プレ・トーク」が行われたが、有意義で内容の濃い、貴重な時間となった。さすがに人気アーティスト三人の登場とあって、コンサートもトークも満員の盛況だった。

トークでは三人がそれぞれ作曲家について、曲について詳しく解説していく。プロジェクターを使い、画面にさまざまな写真や資料を映し出して、作曲家の生涯やエピソードなどを紹介。フランスに留学した福間と成田は、自身で作曲家の記念館を訪れたときの貴重な写真なども披露。曲の解説では、楽章ごとに短い演奏を挟みながら丁寧に説明。トークは盛り上がり、30分の予定が10分以上延長となった。コンサート前の詳しい解説によって、曲を具体的に把握でき、コンサートをより深く楽しむことができた。
最初のドビュッシー『ピアノ三重奏曲 ト長調』は、作曲家が18歳で作曲した、若々しく瑞々しい印象の曲。チャイコフスキーのパトロンとして知られるフォン・メック夫人のスイスやイタリア旅行に同行して、彼女のために作曲された。全体にさわやかなイメージに彩られ、第2楽章のピッチカート部分はリズミックで、三人のトークによると「まるでチャイコフスキーのバレエ曲」のよう。溌剌とした演奏で、若いトリオにぴったりの曲だった。

2曲目のフォーレ『ピアノ三重奏曲 Op.120』は、作曲家の最晩年、78歳の時に作曲された。フォーレは福間と成田が留学したパリ音楽院の院長も務めた人で、ラヴェルは若い頃、彼に作曲を学んでいる。トークによると「冬枯れの庭を散歩しているような渋い曲」であり、ドビュッシーの曲とは好対照となった。流麗な第1楽章に続き、第2楽章は静かに内省する思索的な雰囲気。続く第3楽章は、激しくドラマチックに盛り上がり、三人の熱演が続いた。
最後のラヴェル『ピアノ三重奏曲 イ短調』は、第一次世界大戦に従軍する直前に作曲された“ラヴェルの遺書”とも言われる傑作。出だしから三人のなみなみならぬ意気込みが感じられ、曲に引き込まれる。ピアノ、ヴァイオリン、チェロが濃密に絡み合い、緊迫感と気迫が感じられる。インティメイトな雰囲気のヤマハホールは、演奏者の表情や息遣いまで直接に感じられ、ホールと聴衆が一体となって響き合う。凄みと迫力の第2楽章、第3楽章はヴァイオリンの深い音色が耳に残る。第4楽章は圧倒的な熱演で曲を終えた。
アンコールは同じフランスの作曲家でフォーレの師でもあったサン=サーンスの『ピアノ三重奏曲 第2番』から第3楽章。舞台には四人の作曲家の写真が映し出され、「トリオ・フランセ」による優雅なコンサートは終了した。

石戸谷結子〔いしとや・ゆいこ〕
音楽ジャーナリスト。1946年、青森県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌「音楽の友」の編集を経て、85年からフリーランスで活動。音楽評論の執筆や講演のほか、NHK文化センター等でオペラ講座も担当。著書に「石戸谷結子のおしゃべりオペラ」「マエストロに乾杯」「オペラ入門」「ひとりでも行けるオペラ極楽ツアー」など多数。