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今月の音遊人:ジェイク・シマブクロさん「音のかけらを組み合わせてどんな音楽を生み出せるのか、冒険して探っていくのは楽しい」
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スペース・ジャズ神サン・ラー主演SF映画『スペース・イズ・ザ・プレイス』2021年1月公開
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2020.12.14
伝説のスペース・ジャズ神、サン・ラーの哲学とヴィジョンを完全映像化した映画『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス』が2021年1月、日本初劇場公開されることになった。
1972年に制作、1974年にアメリカで公開された本作。1969年6月にヨーロッパ・ツアー中に消息を絶った音楽家で思想家サン・ラーが宇宙船に乗って、黒人救済のために地球に帰還するという物語だ。“宇宙議会・銀河間領域の大使”を名乗る彼は理想的な惑星を発見、黒人たちを音楽によってその惑星に民族移住させるストーリーはアフリカの民俗文化とSFを融合させたアフロフューチャーSFの体裁を取りながら、アメリカの黒人文化を交え、ピンプ(ポン引き)ファッションもふんだんにフィーチュアされるなど、ブラクスプロイテーション・フィルム的なアプローチも取られている。
荒野で行われるサン・ラーとオーヴァーシーア(監視者)の時空を超えたカードバトル、サン・ラーの宇宙船のエネルギーの秘密を追うNASAのエージェントとの戦いなどのストーリーが絡み合い、大団円へと向かっていく。1960年代後半のサイケデリック・カルチャーからの影響や、一種“ラリった”ようなストーリーのねじれもあるものの、全82分、破綻する一歩手前で完走するのが見事だ。
(NASAのエージェントがサン・ラーを拘束するが、近所のダイナーで食事をしている間に救出されてしまうのはマヌケでしかない)
もちろんサン・ラーの音楽もひとつの軸となっている。長いシーンはないものの、随所で彼が率いるインターギャラクティック・ミス=サイエンス・ソーラー・アーケストラの演奏が収められており、1993年にはサウンドトラック・アルバムも発売されている。彼のフリーフォームなピアノとオルガン、ジューン・タイソンの女声ヴォーカルを筆頭に、音楽だけでも聴きどころが多く、本作は“音楽映画”としても楽しめる。
本作のハイライトのひとつであるサン・ラーのコンサートはオークランド・シヴィック・オーディトリアム(現カイザー・コンヴェンション・センター)の外観が使われているが、さすがに5千人以上収容の同会場ではなく、別のスタジオで撮影されたものだ。一説によると、制作者たちはマリリン・チェンバース主演のハードコア・ポルノ映画『グリーンドア』と共同で借りて撮影、使用料を折半にしたそうで、ドラムス台はそちらの映画で“別の用途”にも使われたのだという。
1970年代前半のブラック・ムービーということもあり、21世紀の日本人が見て違和感をおぼえる箇所もある。サン・ラーが救済しようとするのは黒人のみで、人種選別的な思想に基づくものだ。映画中に出てくるエッチなお姉さんたちは生き残り対象ではないのか……と少し悲しくなる。なお黄色人種への言及はまったくない。
本作はファッション面も興味深いものだ。サン・ラーの黄金のギラギラなヴィジュアルと古代エジプトをモチーフにしたかぶり物は、日本人が真似をしても絶対に似合わないゴージャスさを誇っている。“理想の惑星”で彼と対面する顔面ミラー人間は、マヤ・デレンの『午後の網目』(1943)を思い出す人もいるだろう。
自らを土星出身と語り、1993年に79歳で宇宙に旅立っていったサン・ラーだが、宇宙をテーマとする黒人アーティストは彼だけではなかった。ジョージ・クリントン率いるPファンク一家はファンカデリック『コズミック・スロップ』(1973)やパーラメント『マザーシップ・コネクション』(1975)で宇宙をイメージしている。アース・ウィンド&ファイアのヒット曲『宇宙のファンタジー』(1977)の原題は『Fantasy』で宇宙は全然関係ないが、その歌詞は“空高く飛びだっていく”ものであり、その鮮烈なラメラメのファッションは地球人離れしたものだった。ナイジェリア出身のキザイア・ジョーンズの『アフリカン・スペースクラフト』(1995)はアフリカの“宇宙船”と“スペース+クラフト=空間芸術”のダブル・ミーニングだ。音楽以外に目を向けると、映画『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』(1984)は地球の黒人に似たエイリアンがハーレムで何かいろいろする作品だったし、画家ジャン=ミッシェル・バスキアの作品にも宇宙(内的宇宙の場合も)をモチーフにしたものがあった。
ホモ・サピエンスの祖先がアフリカ大陸に生まれ、地球の各地へと拡がったという“アフリカ単一起源説”。近年ではこの説に反論も多くあるというが、ひとつ確かなのは、アフリカ黒人たちがさらに宇宙を目指していくということだろう。『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス』は人類の未来を予見させる映画作品として、見なければならない。
映画『サン・ラーの スペース・イズ・ザ・プレイス』予告編
映画『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス』
2021年1月29日(金)から全国順次公開
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山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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