Web音遊人(みゅーじん)

7月に樫本大進と共演するアレッシオ・バックス、バロック作品を収録したアルバムを再リリース

2017年7月に樫本大進と共演するアレッシオ・バックス、バロック作品を収録したアルバムを再リリース

2010年、ベルリン・フィルの第1コンサートマスターに就任したヴァイオリニストの樫本大進は、オーケストラのみならず、さまざまな分野での演奏を行っている。

近年では、ピアニストのコンスタンチン・リフシッツと組んでベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏のシリーズを開催し、レコーディングも完成させた。ベートーヴェンに関しては、2016年にパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルと日本で共演し、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を演奏している。

樫本大進は世界一流のオーケストラの重責を担うポジションで演奏を続けながら、その合間を縫ってソロや室内楽の演奏にも力を注ぎ、すべてのジャンルの演奏を楽しみながら行っているのである。

樫本大進のヴァイオリンはベルリン・フィルのコンサートマスターに就任後、大きな変貌を遂げた。オーケストラをリードし、指揮者の意図を楽員に伝え、あらゆることに決定権をもたなくてはならない。それが彼を成長させ、演奏はよりスケールが大きくなり、全体を俯瞰する目が備わるようになった。

そんな彼が、長年共演を重ねてきたイタリア出身のピアニスト、アレッシオ・バックスと組んで2017年7月に日本公演を行うことになった。

「楽器に触れたその瞬間のインスピレーションを、音楽にして届けたい。そう考えたとき、一緒に演奏したいと思ったのがアレッシオです。アレッシオのピアノによって、僕自身が刺激されるのを感じましたし、僕のヴァイオリンが、彼のピアノを変化させていることも判る。そんな”その時にしか生まれない特別なもの”を聴いていただけると思います」

樫本大進がこう語ると、アレッシオ・バックスも続ける。

「僕にとって大進と一緒に演奏することは、特別なことです。彼の心の底から生まれてくる純粋な音楽は、ステージと客席とをあたたかく包み込み、素晴らしい音楽の世界に連れて行ってくれることでしょう」(ジャパン・アーツ資料より)

今回のプログラムは、ふたりでじっくり話し合って決めたというモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ ト長調K.301(モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ ト長調K.379のプログラムも有り)、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、シマノフスキの「神話」、グリーグのヴァイオリン・ソナタ第3番(ラヴェルのヴァイオリン・ソナタのプログラムも有り)という選曲。

作曲家、時代、様式などが異なる作品を組み合わせたプログラム、このデュオだからこそ醍醐味が味わえる、という一夜になりそうだ。

これに先駆け、アレッシオ・バックスが2004年に収録したJ.S.バッハ、グルック、リスト/ヘンデル、ラフマニノフ/バッハ、ラフマニノフ/コレルリの作品を集めたアルバム『バロック・リフレクションズ』が再リリースされた。

アレッシオ・バックスは1977年生まれ。1997年に浜松国際ピアノコンクールで優勝し、2000年にはリーズ国際ピアノ・コンクールでも優勝の栄冠に輝いている。演奏は、ピュアで情感豊かな音色が特徴で、繊細さと劇的な表現の対比が際立っている。このバロック作品のCDでも、静謐で荘厳な響きが聴き手の心にゆったりと染み込んできて、胸の奥がほんのり温かくなる。

きっと、樫本大進との共演でも、歌心あふれる絶妙のデュオが生まれるに違いない。

■アルバムインフォメーション

『バロック・リフレクションズ』
バロック・リフレクションズ
発売元:ワーナー・ミュージック
発売日:2017年05月24日
価格:2,160円(税込)
詳細はこちら

■公演インフォメーション

樫本大進&アレッシオ・バックス
2017年7月9日~17日 東京・大阪他全7公演
詳細はこちら

伊熊 よし子〔いくま・よしこ〕
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)など。2010年のショパン生誕200年を記念し、2月に「図説 ショパン」(河出書房新社)を出版。近著「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書 電子書籍有り)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)。共著多数。
伊熊よし子の ークラシックはおいしいー

 

特集

五条院凌

今月の音遊人

今月の音遊人:五条院凌さん「言葉で表現するのが苦手な私でも、ピアノなら自分の感情を、音を通して表現できる」

9151views

ハイドン「交響曲第101番《時計》」とONE OK ROCK、ロンドンで成功、世界の時を刻むクロック

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase37)ハイドン「交響曲第101番《時計》」とONE OK ROCK、ロンドンで成功、世界の時を刻むクロック

2100views

楽器探訪 Anothertake

26年ぶりにラインアップを一新!「長く持っても疲れにくい」を実現し、フラッグシップモデルが加わったバリトンサクソフォン

4009views

トロンボーン

楽器のあれこれQ&A

初心者なら知っておきたい、トロンボーンの種類や選び方のポイント

14242views

桑原あい

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若きジャズピアニスト桑原あいがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

16093views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

弦楽器の“健康診断”から“治療”、健康アドバイスまで/弦楽器の調整や修理をする職人(前編)

15144views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

22952views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

10524views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

12518views

われら音遊人:Kakky(カッキー)

われら音遊人

われら音遊人:オカリナの豊かな表現力で聴いている人たちを笑顔に!

8714views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

クラス分けもまた楽しみ、レッスン通いスタート

5144views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26756views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

12166views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10758views

マルク=アンドレ・アムラン

音楽ライターの眼

その夜のピアノは、聴衆を“別世界”へといざなった/マルク=アンドレ・アムラン ピアノ・リサイタル

5461views

オトノ仕事人

リスナーとの絆を大切にする番組作り/クラシック専門のインターネットラジオを制作・発信する仕事

5994views

IMOZ

われら音遊人

われら音遊人:そろイモそろってイモっぽい?初心者だって磨けば光る!

1196views

YEV104PRO/YEV105PRO

楽器探訪 Anothertake

音色と響きを磨き上げたステージ仕様の上位モデル、 エレクトリックバイオリン「YEV104PRO/YEV105PRO」

2178views

HAKUJU HALL(白寿ホール)

ホール自慢を聞きましょう

心身ともにリラックスできる贅沢な音楽空間/Hakuju Hall(ハクジュホール)

24588views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.7

パイドパイパー・ダイアリー

最初のレッスンで学ぶ、あれこれについて

4980views

サクソフォンの選び方と扱い方について

楽器のあれこれQ&A

これからはじめる方必見!サクソフォンの選び方と扱い方について

59278views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5882views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32168views