今月の音遊人
今月の音遊人:谷村新司さん「音がない世界から新たな作品が生まれる」
8602views
お客様の生の声から学び、開発や改良に活かすために。「お客様コミュニケーションセンター」の取り組み
3735views
2019.12.25
tagged: お客様コミュニケーションセンター, カスタマーサポート通信
楽器は1世紀以上、オーディオ機器は約半世紀の歴史をもつヤマハ。その歴史は、ユーザーとともに歩んできた道でもあります。
本質を押さえながらも、革新的でわくわくするものづくりを目指して……。そこには、使い手の声がどのように反映されているのでしょうか。ユーザーからのさまざまなお問い合わせに最前線で応対するお客様コミュニケーションセンターのセンター長 平井大生さんに、その取り組みについて伺いました。
「お客様の望む製品の開発や改良には、研究・開発部門だけでなく、カスタマーサポート部門も関わっています。なかでも、お客様からのお問い合わせに直接お答えするお客様コミュニケーションセンターでは、ユーザーの声やそれらを分析した情報を研究・開発部門にフィードバックして、より良い楽器や製品づくりに役立てています」
楽器や製品は研究・開発に始まり、生産され、営業やマーケティングを通じて販売店からユーザーのもとへ。そして、ユーザーの皆さまに常に寄り添う存在がお客様コミュニケーションセンターです。一方、独自の研究や技術でヤマハを牽引する研究・開発部門は、ふだん、ユーザーの皆さまと直接触れ合う機会はほとんどありません。
「お客様の生の声を忘れてはいけないということから、お客様コミュニケーションセンターでは毎年、研究・開発部門の新人などのお問い合わせ応対体験研修を実施しています。これまでの約6年間で、のべ100人の新人たちが、この研修を体験しています」
音が出ない、操作方法がわからない、モデルによる違いは?セットアップ方法は?故障?質問や相談の内容は多岐にわたります。
「相手の様子を目で見ることができないので、電話応対には知識と経験に裏打ちされた想像力が欠かせません。楽器や製品の知識はもちろん、自分とは違う立場の視点を持つことも重要です。それらを培い、そこから問題点や改善点を見つけ出せるようになることが目的です」
研修は、ピアノ、管弦打楽器、エレクトーン、電子ピアノ&キーボード、シンセサイザー&デジタル楽器、ギター&ドラム、オーディオ&ビジュアルの7つのチームにそれぞれ配属され、ベテランスタッフの指導のもとで行われます。
「期間は約2週間。同センターのスタッフが受けている新人研修をぎゅっと濃縮し、ダイジェストにした内容ですね」
1週目は、マニュアルを読み込むなどして、サポート対象製品を徹底的に学ぶことからスタート。リアルタイムの電話応対や過去1年間の録音音声が聞けるモニター機器も活用されています。さらにロールプレイングも経験し、2週目からはいよいよ電話応対の体験です。
この日、電子ピアノ&キーボードチームで研修を行っていたのは電子楽器開発部の新人です。指導にあたるスタッフは隣でスタンバイし、ヘッドセットで応対の内容を聞きながら、お問い合わせの楽器に関する資料を探し出し、新人はそれを確認しながら、無事にお答えすることができました。
「操作説明がとくにそうでしたが、目の前にお客様がいらっしゃるわけではないので、相手の方と自分が見ている視点が同じなのかを想像しながら話すのは大変なことだと感じました。どういったことをお客様が求めているのか、何がわからなくなるのかといったことなど、設計側としては役に立つ経験ばかりです」
エレクトーンチームで研修を行っていた電子楽器開発部の別の新人は、「音がよく鳴らない」という相談を受けました。周りのスタッフたちのフォローにより、原因が判明。
「お客様コミュニケーションセンターのスタッフは、もともと楽器に親しまれている人も多く、プレイヤーとしての視点もありますし、長年お客様に寄り添ってきた経験もあります。僕には真似できないことだらけです。どういった使いづらさやわかりにくさがあるのかということを振り返り、開発に活かすことができると思っています」
ふだんは、直接お客様と接することがない研究・開発系のスタッフたち。この体験研修は、彼らが多くの気付きを得る有意義な機会となっているようです。
「日常の業務を行いながら研修生を受け入れることは、実はとても大変です。でも、お客様の感覚をわかっているスタッフが増えていくことは、何より大切なこと。そして、彼らがここでの経験を各部門に持ち帰ってくれることで、私たちが吸い上げたお客様の声がよりスムーズに伝わるようにもなります」と平井さん。
「お客様の身になって、お客様のために何ができるのか。常にそれを考えているヤマハでありたいと思っています」
部門の枠を取り払い、思いを同じにした“ワンチーム”が、ユーザーのニーズに応えた製品づくりを支えています。