今月の音遊人
今月の音遊人:藤田真央さん「底辺にある和音の上に内声が乗り、そこにポーンとひとつの音を出す。その響きの融合が理想の音です」
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注目のサクソフォン四重奏団が真っ向勝負で挑むデビューリサイタル/ルミエサクソフォンカルテットインタビュー
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2020.3.27
tagged: ルミエサクソフォンカルテット, 住谷美帆, 戸村愛美, 竹田歌穂, 中嶋紗也
サクソフォン奏者・須川展也の門下生である東京藝術大学同窓生によって結成されたサクソフォン四重奏団、ルミエサクソフォンカルテット。
メンバーは、若き女性ソリストとして注目を集める住谷美帆(ソプラノ)、プロ吹奏楽団やオーケストラの演奏会、ソロなどで活躍する戸村愛美(アルト)、竹田歌穂(バリトン)、中嶋紗也(テナー)の4人だ。
彼女たちの演奏を聴いて、「柔らかい音色で女性らしい響きがある」と称賛する人もいれば、「華麗なドレス姿からは想像できない!」とその迫力に圧倒される人もいるのだそう。繊細な表現と力強いサウンドを兼ね備え、一度聴いたら忘れられない強い印象を与える──それがルミエサクソフォンカルテットだ。
結成は2014年。須川の勧めで4人が組み、東京藝術大学横浜キャンパスで行われる藝大生による「馬車道コンサート」に出演したのがはじまりだった。当時、中嶋と竹田は大学院1年生、戸村は大学2年生、住谷は1年生。その後すぐ、サクソフォンフェスティバルへの出演依頼が舞い込んだ。といっても、当時は“名前なき”カルテット。出演に当たって、ユニット名を決めなくてはならない。
「“ルミエ”は、光という意味を持つフランス語“ルミエ―ル”に由来しています。私たちの色を出したいというのと、皆さんに覚えてもらいやすようアレンジを加えて、短く3文字にしました」(中嶋)
「雲間から差し込む鮮烈な光のように。インパクトを与えられるサウンドを目指しています」(竹田)
燦然と“光”を放つ“ルミエ”に出演依頼は絶えず、これまでにラ・フォル・ジュルネ、東京・春・音楽祭など、多くの演奏会や芸術観賞会に出演して好評を博してきた。
なかでも2016年、一般社団法人地域創造が行う公共ホール活動事業のアウトリーチフォーラム事業派遣アーティストとして広島県で活動した経験は、カルテットを大きく成長させたという。
「そのときから、演奏力やコンサートでの振る舞い、話し方がレベルアップしたと感じています。それをきっかけにチームワークが高まりましたね」(戸村)
2020年5月7日(木)には、東京藝術大学の“ご近所”で彼女たちにとって親しみのある上野の東京文化会館で「ルミエサクソフォンカルテット デビューリサイタル」が開催される。
結成6年後にデビューリサイタル?実は、それにはちゃんとした訳がある。
「もともとは須川先生が組んでくださったカルテットであり、その後も続けていいのか手探りの状態が続いていました。でも、アウトリーチフォーラムでの活動を経て、このカルテットでやっていこうという確信がみんなの中で生まれました」(住谷)
大学院に進んだ戸村が卒業し、産休に入った竹田が復帰したのがこのタイミング。満を持してのデビューリサイタルが決定した。
プログラムは『クープランの墓』(M.ラヴェル/旭井翔一編曲)、『サクソフォン四重奏』(F.シュミット)、『Reach Out』(藤倉大)、『6つのバガテル』(G.リゲティ)、『サクソフォン四重奏』(A.グラズノフ)の全5曲。サクソフォン愛好家なら、難易度が極めて高い曲ぞろいだとお気づきかもしれない。
「デビュー6年目だからこそ、できたプログラムです。ただ難しい曲を並べただけではなくて、いろいろな表情が感じられる構成。これまでのルミエを一夜で知ることができるルミエ・ダイジェスト版です」(住谷)、「きっちり経験を積んできて、この曲なら私たちらしさが出せるという確信を持ってプログラムが組めました」(竹田)とメンバーは胸を張る。
一曲目に選んだ旭井翔一編曲の『クープランの墓』は、かなり挑戦的なアレンジで、高い技術力が求められる。
「だからこそ、燃えます。一曲目でエンジンがかかる」(戸村)
「元の編成と異なりたった4人で演奏するので、ひとりが何役もこなし、“仕事をしている感”があります(笑)」(中嶋)
「オーケストラの魅力も入っているアレンジで、そこも聴きどころです」(竹田)
藤倉大による現代曲『Reach Out』も、このリサイタルに、より革新的な印象をもたらす。この曲では、最初は全員がソプラノ・サクソフォンを演奏。その後、それぞれが自分の楽器に持ち替えるというユニークな試みにも挑むという。視覚的にも楽しませてくれそうだ。
「好きなことがダイレクトに伝わる楽器で、吹いていていつも気持ちがいい」(住谷)、「見た目がかっこいいし、自分の気持ちをスムーズに表現できる」(戸村)、「声楽を目指していた自分の歌心を表現できるのがサックスだった」(竹田)、「本当に音がいい楽器」(中嶋)と、それぞれにサクソフォンの魅力を感じ、高みを目指して極め続けてきた4人。その音色が重なったとき──。
「まだまだ発展の余地があるのが、カルテットのすごいところです。今回のリサイタルでは、ある意味本当のカルテットの演奏を聴いていただけるのではないかと思います」(住谷)
真っ向勝負、全身全霊で臨むリサイタル。百聞は“一聴”にしかず、だ。ぜひ足を運んでほしい。
日時:2020年5月7日(木)19:00開演(18:30開場)
会場:東京文化会館小ホール(東京都台東区上野公園5-45)
出演:住谷美帆(ソプラノ)、戸村愛美(アルト)、中嶋紗也(テナー)、竹田歌穂(バリトン)
プログラム:クープランの墓/M.ラヴェル(旭井翔一編曲)、サクソフォン四重奏曲 Op.102/F.シュミット、Reach Out/藤倉大、6つのバガテル/G.リゲティ、サクソフォン四重奏曲 Op.109/A.グラズノフ
お問い合わせ:
ルミエサクソフォンカルテット事務局:メール
コンサートイマジン(電話):03-3235-3777
文/ 福田素子
photo/ 坂本ようこ
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