今月の音遊人
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三人三様の弾き語りが伝えるアコースティックギターの奥深さ/Yamaha Acoustic Mind 2022 ~PREMIUM~
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2022.12.15
ヤマハアコースティックギターの祭典「Yamaha Acoustic Mind 2022 ~PREMIUM~」が、2022年10月1日~24日、名古屋、大阪、東京で開催された。東京では、23日に追加公演も行われ、銀座のヤマハホールは大いに盛り上がった。
2014年に始まったこのイベントは、元キマグレンのISEKIが総合プロデューサー&ホスト進行を務め、多彩なアーティストとヤマハのギターを演奏しながら、その魅力を伝え、毎年好評を博している。追加公演の出演者は、ISEKI、大石昌良、miwaの3人。
トップバッターはISEKI。コロナ禍にあってもこのイベントが途切れずに9年目を迎えられて、感慨もひとしおの様子。「楽しんでいきましょうね」と、元気に開会する。
1曲目は『ガンバレロボ』。気負わず、自然体で、くじけそうな心に「頑張れ」を届ける歌唱だ。切れのいいストロークが心地よさをかきたてる。
『相アイ傘』『紺碧の海と真っ青な空の下で』に続いて、コロナ禍の初期に作った『Reflection』を弾き語った。自室の窓越しに「変わりゆく季節を眺めながら、不安な世の中だけれど頑張って生きていこうと思った」という静かな意志を込めた曲だ。この日、ISEKIはナイロン弦のNTX5を選んでいた。温もりのある音色で歌の情感が増し、心の芯にジーンと迫るものを感じた。
そこにゲストの大石昌良がにこやかに登場。このイベントの常連でトークもうまい。「miwaちゃんが決まったときのISEKIくんの喜びよう!」と、のっけからISEKIに突っ込む。『太陽と曇り空』を2人のハモリを交えて演奏し終わる頃には、場内に元気な空気が漂っていた。
ISEKIが退場し、大石が1曲目の『ピエロ』から、歌とギターとトークを盛り込んだ「ギター・エンタテインメントショー」を展開する。好きな人の笑顔を見られるなら「On trumpet 俺」「On scat 俺」と、何にでもなりきるピエロを演じながら、歌い、喋る。
しかも「スラム奏法」を駆使した超絶技巧だ。例えば、ギターのボディを軽く叩いたり、親指で弦を打つように弾いたり、両手の指を駆使して弦をタッピングしたりして、ギター一本でドラム・ベース・旋律などを、パーカッシブに演奏する。聴き手の心が高揚するだけでなく、目を釘付けにする。
大石のすごさは、「どうだ!」と技を見せつけるのではなく、歌やトークとのバランスを取りながら、軽妙にやって見せるところにある。『パラレルワールド』『ボーダーライン』『君じゃなきゃダメみたい』のいずれも、技を「エンタテインメント」として楽しませてくれる。「弾き語りで日本一を目指している」と話していたが、従来の「弾き語り」の概念を超越した「ショーアップした独自の世界」を創れる希少なアーティストだ。ちなみにギターは、ボディがやや小ぶりでフィンガー奏法向けのLS36ARE。
ソロの最後は、ナイロン弦のギターに持ち替え、クラシカルサウンドで『ただいま』を披露。そこへmiwaが登場したが「この後、私でいいのかと楽屋で震えていました」と重圧を吐露。大石がフォローし、ふたりで和やかに『ようこそジャパリパークへ』を歌って、場内のムードを変え、大石が退場。
デビュー13年のmiwaは、ヒット曲を立位でパワフルに弾き語っていく。ギターはフルボディーで鳴りのいいLL36ARE。曲毎にチューニングしたものと取り替えながら進行。
1曲目は、高校生のときに書いた『don’t cry anymore』。伸びやかなハイトーンボイスがホールの空気を一瞬でmiwa色に変える。次いでデビュー前に書いた『441』はファルセットが美しい。『君に出会えたから』では、客席のファンが手振りで盛り上げ、場内はmiwaワールドに。ここで新曲『君が好きです』を披露。ABEMAの人気恋愛番組「私たち結婚しました 3」の主題歌だ。
最後に大ヒット曲『ヒカリへ』を熱唱して大役を終えると、ISEKIが登場し、デュオで『結-ゆい-』を歌って、2時間にわたるイベントを締めくくった。
しかし観客の拍手が鳴り止まず、アンコールに応えて3人で『LIFE』を歌って、ようやくお開きとなった。ギターの弾き語りと言っても、まさに三人三様。身近でしかも奥深い、アコースティックギターの魅力に改めて感じ入った。
原納暢子〔はらのう・のぶこ〕
音楽ジャーナリスト・評論家。奈良女子大学卒業後、新聞社の音楽記者、放送記者をふりだしに「人の心が豊かになる音楽情報」や「文化の底上げにつながる評論」を企画取材、執筆編集し、新聞、雑誌、Web、放送などで発信。近年は演奏会やレクチャーコンサート、音楽旅行のプロデュースも。書籍「200DVD映像で聴くクラシック」「200CDクラシック音楽の聴き方上手」、佐藤しのぶアートグラビア「OPERA ALBUM」ほか。
Lucie 原納暢子
文/ 原納暢子
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tagged: ISEKI, miwa, 音楽ライターの眼, 大石昌良
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