Web音遊人(みゅーじん)

坂本龍一さん

【プレゼント】今月の音遊人:坂本龍一さん「かつて観たテレビアニメの物語は忘れたけど、主題歌は鮮明に覚えている。音楽の力ってすごいよね」

日本が世界に誇る音楽家、坂本龍一さん。ソロアーティストとしてだけでなく映画音楽家としても、さまざまな分野における社会活動家としても、常に注目を集めてきた希有な存在です。そんな坂本さんにとっての「音の世界」に迫ります。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

子どもの頃に毎週のように見ていたテレビ番組『怪傑ハリマオ』の主題歌かもしれません。僕は、勉強はしない、ピアノの練習はしない、帰宅するとずっとテレビに釘付けという子どもでした。『月光仮面』も『少年探偵団』も『コンバット』も毎週見ていたけれど、強烈に覚えているのはハリマオの主題歌です。いまでも歌えます。ストーリーも登場人物も忘れてしまったのに歌だけは覚えているなんて、本当に音楽の力ってすごいですよね。
頭のなかで鳴り響いている楽曲を聴いた回数に含めるなら、バッハとドビュッシーでしょうか。バッハは小学2年生の時に『インベンション』を聴いて以来、大ファン。『マタイ受難曲』などのさまざまな楽曲を愛聴してきました。片やドビュッシーとの出会いは12、3歳の頃。なかでも繰り返し聴いたのは『弦楽四重奏』です。ドビュッシーと同時期にはビートルズやローリングストーンズにも出会いました。ビートルズの曲には、いいメロディーが多い。彼らの見た目の面白さに惹かれました。演奏は「ガチャガチャしているなあ」と思いましたけどね(笑)。演奏でいえば、「こんなに下手でいいのか!」と衝撃を受けたのがストーンズ。そのパンクな魅力に惹かれたことをよく覚えています。

坂本龍一さん

Q2.坂本さんにとって「音」や「音楽」とは?

これは一番困る質問です。音、音楽とは、僕にとっていまだによくわからないものですからね……。何を音楽と感じるかは聴く人次第。「これが音楽だ」という正解はないと思います。
であるにも関わらず「音楽とはこうあるべき」という正解を求めがちなのが、アカデミックな世界です。そこではまるで数学のように「問いと答え」を想定して音楽を学びます。そういった教育を受けた人たちが「音楽には正解がある」と思い込んでしまうのは当然のことですし、僕自身もある程度はそう思い込んでいました。いまだに作曲をしていると、そういった自分が顔をのぞかせますが、そこからは離れようと努めています。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人をイメージしますか?

よく「子どもは音で遊ぶ」と言いますよね。大人であってもエアパッキンを潰すのが好きな人って多いでしょう?僕もそうです。あれも潰すと音がするのが愉快なわけで、ああいった行為は「音遊び」と言えるのではないでしょうか。
山水画に出てくる仙人のように「山奥で音遊びをして楽しむ」というのも良さそうですね。僕は仙人というとビデオアートの第一人者、ナム・ジュン・パイクさんを思い出します。彼こそ子どものように、既成概念にとらわれずに楽器や音と向き合ってきたアーティスト。たとえばピアノの弦をビデオカメラのマイクで擦る、とかね。その柔軟な行動ぶりには惹かれますが、だからといって僕自身が現代においてパイクのような音遊びを追求したいかというと、それは違います。60年代ならそういった試みには大きな意味があったと思いますが、そういった探求はすでに多くのアーティストにし尽くされていますからね。
では僕にとって「音を遊ぶ」「音で遊ぶ」とは何か……。そうですね、音で遊べるようになったら、もっと楽しくなることは確かでしょうけど、明確な答えは出せそうにありません。
そうそう、ベートーヴェンは死ぬ直前に「俺はいくつかの音で遊んだだけだった気がする」と語ったそうですが、僕も最後を迎える頃にはもう少し音で遊べているといいですね。

坂本龍一さん

坂本龍一〔さかもと・りゅういち〕
1952年東京生まれ。1978年、ソロアルバム『千のナイフ』でデビュー。同年、テクノポップバンド「YMO」を結成。1983年に映画『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞作曲賞、1987年に『ラストエンペラー』でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞作曲賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞を受賞するなど、映画音楽の作曲でも活躍。1990年代後半からは、環境問題や平和活動などにも積極的にかかわる。2014年に中咽頭がんを患ったことを公表し、1年にわたる治療と療養を経て復帰。2017年、8年ぶりとなるソロアルバム『async』をリリース。
坂本龍一オフィシャルサイト http://www.sitesakamoto.com/

■坂本龍一さんサイン入りCDプレゼント

坂本龍一さん
坂本龍一さんのサイン入りCDを抽選で3名様にプレゼントします。
CDは昨年、8年ぶりにリリースされたファン待望のオリジナルアルバム『async』です。
ご希望の方は、下記「応募はこちら」ボタンからご応募ください。。
応募締切:2018年6月30日(土)23:59
応募はこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:藤田真央さん「底辺にある和音の上に内声が乗り、そこにポーンとひとつの音を出す。その響きの融合が理想の音です」

17203views

音楽ライターの眼

ジャズはクラシックの“なれの果て”なのかを考えてみようかな

11843views

楽器探訪 Anothertake

世界の一流奏者が愛用するトランペット「Xeno Artist Model」がモデルチェンジ

30948views

サクソフォンの選び方と扱い方について

楽器のあれこれQ&A

これからはじめる方必見!サクソフォンの選び方と扱い方について

61807views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

9767views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

9234views

札幌コンサートホールKitara - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

あたたかみのあるデザインと音響を両立した、北海道を代表する音楽の殿堂/札幌コンサートホールKitara 大ホール

20435views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

7335views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

27590views

横浜レンタル倉庫(YRS)

われら音遊人

われら音遊人:目指すはフェス! 楽しみ、楽しませ、さらなる高みへ

2855views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

6464views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28283views

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

10536views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

15602views

音楽ライターの眼

クラシック・キャラバン2021 クラシック音楽が世界をつなぐ~輝く未来に向けて~コンサート全国ツアーがスタート

2756views

梶望さん

オトノ仕事人

アーティストの宣伝や販売促進など戦略を企画して指揮する/プロモーターの仕事

13738views

横浜レンタル倉庫(YRS)

われら音遊人

われら音遊人:目指すはフェス! 楽しみ、楽しませ、さらなる高みへ

2855views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカを進化させる「クリップ」が誕生

20723views

アクトシティ浜松 中ホール

ホール自慢を聞きましょう

生活の中に音楽がある町、浜松市民の音楽拠点となる音楽ホール/アクトシティ浜松 中ホール

17453views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

9677views

楽器のあれこれQ&A

目的別に選ぼう電子ピアノ「クラビノーバ」3シリーズ

5022views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

8122views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

35113views