Web音遊人(みゅーじん)

馬場智章

テナーサクソフォンの音色と魅力を全身で感じるステージ/馬場智章インタビュー

テナーサクソフォン奏者としてはもちろん、作曲家やアレンジャーとしても活躍の場を広げている馬場智章。若年層にも、もっとジャズに親しんでほしいと語る馬場が、ライブでジャズを体感する魅力について語る。

映画『BLUE GIANT』で得た新たな経験

8歳から札幌ジュニアジャズスクールにてサクソフォンを始め、2011年にアメリカ・ボストンのバークリー音楽大学に入学。在学中から、数多くのミュージシャンとの共演を重ねてきた馬場智章。現在は、活動拠点をニューヨークから日本に移し、2020年以降は、自らが作品全体の構成を担ったリーダーアルバムのリリースや、日野皓正、DREAMS COME TRUE などのステージメンバーも務めている。 また、2023年2月に劇場公開されたアニメ映画『BLUE GIANT』では、主人公・宮本大のサクソフォン演奏を担当した。「音が聞こえてくる漫画」としてシリーズ累計920万部を突破したこの作品の映画化に伴い、宮本大の演奏者オーディションには国内外の有力奏者が集められたが、その中から満場一致で選ばれたのが馬場だった。しかし、実際のレコーディングでは少々苦労したらしい。
「僕自身の演奏と言うよりは、世界一のジャズプレイヤーを目指す若者である、宮本大というキャラクターとして演奏しました。だから、目一杯に吹いているし、“若い”んです。僕としては『さすがにちょっと吹き過ぎだよな?』と思っても、『これです!』ってOKが出る(笑)。いつもの自分の演奏とはまったく違う、通常の現場では求められないものを要求されました。でも、かえってそれが良かったんですよね。『BLUE GIANT』のレコーディングが終わってから、普段の仕事やサイドマンとして呼んでいただいた現場で『変わったね』と言われることがあって。これまで100だった演奏者としての僕のキャパシティが120とか130に広がったように感じられたみたいなんです。それを聞いてやって良かったと実感しました。今までにない経験をしたからこその、変化なのだと思います」

作曲家としての自分のあり方

さまざまな経験を積み重ねながら、演奏者としてはすでに20年を超えるキャリアを持つ馬場だが、作曲をするようになったのは大学に進学してからだという。
「自作曲は、自分の演奏パートを聴いてほしいというより、ひとつの楽曲として聴かせたいという気持ちのほうが、優先順位が高いんです。この感覚は、演奏者としての自分と、作曲者としての自分ではかなり異なる部分だし、曲を作るようになって『演奏者・馬場智章』を、ここぞという手札として使えるようになった気がします。作曲を始めるまでは、まさに宮本大のように『世界一のサックスプレイヤーになる!』という思いがすべてのモチベーションでした。なので、ソロがメインでない曲を作っていることに気がついたときは、われながら意外でしたね」

馬場智章

作曲に関しては、思い出深い記憶がある。中学に入ったばかりの頃にトランぺッターのタイガー大越から贈られた言葉だ。
「将来ミュージシャンとして活動したいなら、もっと曲を作りなさい。曲を作った時に音楽家としてのレベルも一段上がるよ、と言われたんです。でも当時の僕は、その意味があまりよくわかりませんでした。でも、実際に自分で曲を作ったり、アルバムを構成したり、ステージをプロデュースしたりということを始めると、プレイヤーとして、その瞬間をコントロールしながら楽しく演奏する他に、楽曲そのものや、ライブ全体を俯瞰して見る必要があることがわかってきたんですよね。だから、僕が今までに出したアルバム2作も、サックスだけが目立って聴こえる印象ではないと思います。サックスの良さや自分のプレイを聴かせたいという気持ちはもちろん持っていますが、それと同じ熱量で他のプレイヤーが生きるような曲を書きたいと考えるようになりました」

おもしろいと思うことをやっていきたい

近年は、ビッグバンドやジャズをテーマにした漫画・アニメ作品の普及や、若手ジャズプレイヤーの活躍などもあり、ジャズのファン層も広がりつつあるが、馬場は「若い人たちに、もっとジャズを聴いてほしい」という思いが強いそうだ。
「ジャズクラブへ行くこと自体が緊張するという方もいると思います。でも、生の楽器の音って本当に気持ちいいし楽しいんですよ。だから僕自身、これまでジャズにあまり触れてこなかった若い人たちに向けても、どんどん発信していきたいし、生の演奏をもっと聴いてほしいと思っています」

馬場智章

そう話す馬場が出演する今春のライブを紹介しよう。まずは2023年4月29日(土)に東京・渋谷のジャズクラブBODY&SOULで開催される「Tenors in Chaos」としてのステージ。このバンドは馬場智章、西口明宏、陸悠という3人のテナーサクソフォン奏者を含む6人編成だ。
「最近ではなかなか珍しい、ストロングスタイルのジャズというか、サックスがぶつかり稽古をしているようなバンドです。それぞれが、ソロやサイドマンとしての現場で経験したものを集約するようなライブになるでしょうし、何よりテナーサックス3人というのはかなり強力なので、盛り上がっていただけると思います」
もう一つが、2023年5月13日(土)、14日(日)に埼玉・秩父ミューズパークで開催される野外のジャズフェスティバル「Love Supreme Jazz Festival 2023」。昨年に続く出演だ。
「こちらは気持ちのいい野外ステージなので、座ってしっとり聴いてもらうというよりは、リズムを取りながら踊れるような構成を考えています。バンドとしては結構“濃いめ”のジャズメンバーを集めつつ、普段はしないようなことにもチャレンジしてみます。今年はもっとスタンディングメインの場所でライブをしたいと考えているので、その前哨戦みたいな感じです。常々おもしろいと思うことをやっていますから、ぜひ生の音を聴きに来てほしいですね」

さまざまなステージでの活躍からも目が離せない馬場智章。生の楽器で奏でるジャズが体感できるライブにぜひ足を運んでみては。

■公演インフォメーション

●Tenors in Chaos

日時:2023年4月29日(土・祝) 18:30開場/1stステージ 19:30開演/2ndステージ 21:00開演
会場:BODY&SOUL(東京)
料金:5,500円(税込)
出演:馬場智章(テナーサクソフォン)、西口明宏(テナーサクソフォン)、陸悠(テナーサクソフォン)、デビッド・ブライアント(ピアノ)、須川崇志(ベース)、小田桐和寛(ドラム)
詳細はこちら

●Love Supreme Jazz Festival 2023

日時:2023年5月13日(土)、14日(日) 両日とも13:00開演(12:00開場)
会場:秩父ミューズパーク(埼玉)
料金:一般・指定席 16,000円/一般・自由席 13,000円/学生・自由席 6,000円(税込)
出演:馬場智章(テナーサクソフォン)、佐瀬悠輔(トランペット)、デビッド・ブライアント(ピアノ、キーボード)、マーティ・ホロベック(ベース)、松下マサナオ(ドラム)ermhoi(ボーカル)
※馬場さんのご出演時間は、イベント詳細ページにてご確認ください
詳細はこちら

photo/ 阿部雄介

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