今月の音遊人
今月の音遊人:山下洋輔さん「演奏は“PLAY”ですから、真剣に“遊び”ます」
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大切に使ってきたけれど、今は使わなくなってしまったヤマハの楽器。そんな楽器を、思い出とともに受け取って次のプレイヤーへとつないでいく。2022年から展開しているヤマハの楽器買取サービスが、2023年8月に名称を一新。「音バトン」として新たにスタートした。
買い替えなどで使わなくなったヤマハの楽器を、これから楽器を始める人に渡すことで大切に使い続けてもらいたい。そんな思いが込められたサービス「音バトン」。この前身となるサービスの立ち上げから携わったヤマハミュージックジャパンの担当者に話を聞いた。
「店舗に持ち込まれた楽器は、丁寧に調整・メンテナンスをおこなって再活用します。このサービスは2022年11月からヤマハミュージック 名古屋店をはじめ、いくつかの店舗でトライアル的に実施してきました」(目黒直弥さん)
「それまで、ごく一部の例外を除いて楽器の買い取りはしていなかったため、ほぼ初めての試みです」(大藤洋子さん)
「お客様にはヤマハに楽器買取のイメージがないでしょうし、買い取りを行う店舗も限られていたため、最初は多くの方にご利用いただけるのか不安もありました。しかし、蓋を開けてみると予想を上回って多くの楽器が寄せられ、本格的なサービス開始に向けて手ごたえを感じる結果となりました」(目黒さん)
買い取りの対象となるのは、トランペットやトロンボーンをはじめとする金管楽器、サクソフォンやフルートなどの木管楽器と、ギター、ベースだ。ヤマハの楽器であることと、各部品が調達できてリペアも可能な品番であることなどが条件となっている(品番、価格等の詳細はウェブサイトを参照)。
所有することも目的のひとつであるビンテージ楽器も扱う中古楽器市場とはこの点が異なる。あくまでも楽器を“使ってもらう”ことを念頭に置いているのが「音バトン」のポイントである。
「楽器をお持ちいただく方には、楽器のエピソードをうかがうこともあります。これまでにあったのは、息子さんが吹奏楽部に所属していたときに使っていたという思い出の楽器だったり、進学と同時にフルサイズのギターに買い替えたため使わなくなったミニギターだったり……。楽器とともに想いも受け取っている気持ちになりますね」(大藤さん)
そのような“楽器に込められた想い”を聞くことができるのは、楽器の受け取りを郵送ではなく店舗で行っているからだろう。直接の対話をすることで信頼が生まれ、最後に「ありがとう」とお互いに感謝の気持ちを伝えることができる。こうした密接な関係を築くことができるのも、このサービスの特長だ。
「ギターをお持ちいただき、楽器を査定している間に新たな楽器を試奏されて、そのままお買い上げいただいたお客様もいらっしゃいます。店舗にお越しいただくことが、現在進行形のヤマハを知っていただく機会にもなっているんですよね」(目黒さん)
楽器は、部屋に飾って眺めるのもいいけれど、その真価はやはり音を出してこそ発揮されるもの。楽器に新しい音色を吹き込んでくれる人に、気持ちを込めて渡していく。これこそが「音バトン」の目指すところなのだろう。
「ここ数年、社会情勢の変化によって、原材料の手配がむずかしくなるなど、楽器の流通量にも影響が出たこともありました。このような背景もあるので、楽器を大切に使い続ける重要性はますます高まっていくと思います。サステナブルな社会の実現に貢献し、お客様の気持ちをつなげることもできる。『音バトン』がそんなサービスに育っていくといいですね」(目黒さん)
「楽器を始めたいのに、楽器そのものが手に入らないのであきらめる、なんていうのはいちばん悲しいことですよね。『音バトン』は、楽器をやっている方やこれから始めたい方の気持ちを後押しできるサービスだと思いますし、『音バトン』がきっかけとなって楽器演奏を趣味とする人が増えて、音楽を通じた輪が広がっていったらいいなと願っています」(大藤さん)
「音バトン」で生み出される楽器の好循環がどのように音楽の世界を広げていくのか。今後の動きに注目したい。
文/ 山﨑隆一
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