Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:富貴晴美さん「“音で遊ぶ人”たちに囲まれたおかげで型にはまることのない音作りができているのです」

ドラマに映画、アニメーション、CM音楽などの作曲をはじめ、アーティストへの楽曲提供など幅広く活動を展開している富貴晴美さん。日本アカデミー賞優秀音楽賞を3度受賞し、史上最年少で大河ドラマの音楽を担当するなど、今最も注目されている作曲家のひとりである富貴さんに、ご自身の音楽への想いをお聞きしました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

ハチャトゥリアンの『バイオリン協奏曲』です。初めて聴いたのは中学生のころで、いろいろなCDを買いあさっていた時期でした。この作品に出合った時、その魂に響く音楽に衝撃を受けました。駆り立てられるようなリズム感に力をもらえるので、元気がない時に聴いて“やるぞ!”と気持ちを奮い立たせることもあります。とてもソウルフルで、生き様のようなものを感じますね。『バイオリン協奏曲』との出合いをきっかけにロシア音楽が大好きになったので、その頃からハチャトゥリアンはもちろん、プロコフィエフやリムスキー=コルサコフなどの作品をずっと聴いていました。旋律の運び方をはじめ、作品に漂う“土臭さ”に魅了されています。あとは聴いていると鮮やかに映像が浮かんでくるところですね。これは今の仕事にも通じるものがあると思います。また、映画音楽だと『アラビアのロレンス』のサウンドトラック、それから作曲家を目指すきっかけになった『タイタニック』のサウンドトラックもたくさん聴いてきました。

Q2.富貴さんにとって「音」や「音楽」とは?

「きらめき」でしょうか。音楽に喜びをもらい、人生を豊かにしてもらっています。ずっと音楽と共に生きてきたので、わたしそのものでもありますね。人生の様々な場面を輝かせてくれましたし、何かが輝いて見えるときには音楽が聴こえてくることもありました。もちろん作曲するときにもきらめきを感じます。曲を書いていて、グッとくるメロディがひらめいたときなどは自分でドキドキしてしまいますね。ちなみに、最近聴いているときにきらめきを感じた音楽はインドの音楽です。使われている楽器の響きや女性の歌声がとても美しくて……。具体的な曲名などはわからないのですが、ヨガをやっているときに流れていて、すごく惹かれてしまうんです。ただ、曲に意識がいってしまうのでヨガにまったく集中できません(笑)。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

作曲家はみんな音で遊んでいると思います。もちろん私自身も。ピアノの前に座ったらずっと弾いていられますし、自然音など様々な音を録音してサンプリングすることも好きです。海外に行くときは必ずマイクを持って行って、自然音はもちろん、教会の鐘の音や路上で演奏している人の楽器の音や歌声を録らせてもらい、それらを後でいろいろ加工したり組み合わせたり……。その“遊び”が仕事につながることもありました。それから、大学や大学院では現代音楽を書いていたのですが、師事していた福士則夫先生をはじめ、現代音楽の作曲家は本当に「音で遊ぶ人」。講義では突然“おたま”を持ってきてピアノの中でガチャガチャ鳴らしたり、そのおたまでお琴も弾いたり、作曲のレッスンにお箸を用意してきたり……(笑)。そんな現代音楽を学んだことで、型にはまることなく、いろいろな音とのかかわり方ができるようになりました。「音で遊ぶ人」たちに囲まれた日々を忘れることなく、これからも常に新しいものを見つけながら作曲を続けていきたいです。

富貴晴美〔ふうき・はるみ〕
作曲家・編曲家・ピアニスト。2013年『わが母の記』で第36回日本アカデミー賞優秀音楽賞を最年少で受賞。その後第39回、第41回と、3度同賞を受賞している。ドラマ、映画、アニメ、ミュージカル、CM音楽の作曲やアーティストへの楽曲提供など幅広く精力的に活動を展開し、『西郷どん』や『ピアノの森』など次々に話題作の音楽を手掛け、現在も映画『総理の夫』『そして、バトンは渡された』『老後の資金がありません!』、さらにアニメ映画『鹿の王』や劇団四季オリジナルミュージカル『バケモノの子』を担当している。
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