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世界のトッププレーヤーによる、オールヤマハのアンサンブル「ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」/原田慶太楼インタビュー
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2024.5.27
tagged: 浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル, 原田慶太楼, ワールドドリーム・ウインドオーケストラ
世界のトッププレーヤーが吹奏楽で夢の共演を果たす「ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」。こだわりのプログラムや演奏会の聴きどころについて、指揮者・原田慶太楼に聞いた。
「ヤマハの楽器だけのアンサンブルは、クルマにたとえると高級なスポーツカーのエンジン音みたいなサウンドがするんです。それを聴いた人が必ず振り返るような、独特の響き。私が聴き慣れた吹奏楽のサウンドとは、少し違うような気がします。それは、超一流の奏者が集まっていることのみならず、すべての楽器がヤマハという同じところで作られたこととも関係しているのではないでしょうか」
原田は、「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」に招聘される奏者によって構成される「ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」の特徴をこう語る。2022年に続き、このオケを指揮することになった。
1995年以来、世界の第一線で活躍する管楽器奏者たちを浜松に迎えて開催されている「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」。その名のとおり、若手音楽家の育成を目的とした「アカデミー(レッスン)」と、年に一度だけ集まる豪華なメンバーによる「フェスティヴァル(コンサート)」が2本の柱だ。
30回目というメモリアル・イヤーである2024年は、アクトシティ浜松で行われるオープニングコンサートと同様の公演が、同時期にミューザ川崎で開催されている「フェスタ サマーミューザKAWASAKI 2024」でも行われることになった。川崎での公演は、ミューザを本拠地とする東京交響楽団の正指揮者である原田の提案もあって実現することになったという。
「フェスタ サマーミューザは、国内のトップオーケストラが集まり、それぞれ独自のカラーを持ったプログラムでビギナーからマニアまでを楽しませる“お祭り”です。そこに世界のトップ奏者が、しかも全員がヤマハの楽器を持って参加する。そのユニークなサウンドは必ずや聴く人の心に残ると思います」
気になるプログラムは、原田のこだわりが目一杯詰まっている。ポイントは、日本人作曲家の作品が約半分を占めていること。常々、彼は「日本人である自分が日本人作曲家を取り上げる」ことを自らの重要なテーマとして掲げているが、今回は特別なオケだけに、とりわけ力を入れた選曲になった。
「日本は吹奏楽が盛んで、日本の作曲家によるレパートリーもたくさんあります。だけど、実はそれらが欧米で演奏されることはほとんどない。だから、このオケに集う海外の奏者たちに曲を知ってもらい、共に演奏することには大きな意味があるんです」
三善晃の『吹奏楽のための「クロス・バイ マーチ」』、真島俊夫の『三つのジャポニスム』、酒井格の『たなばた』と、日本を代表する作曲家の作品に加え、注目なのは上田素生の『あまやどり』と山本菜摘の『UTAGE 宴』が取り上げられること。ふたりとも東京交響楽団とサントリーホールによる若手作曲家の育成企画「新曲チャレンジ・プロジェクト」の出身者で、原田も積極的にサポートする期待の新鋭である。
「新しい若手作曲家を紹介するのも私の役目だと思っています。このふたりの作品が、よく知られる吹奏楽のマスターピースに混ざることによって、レパートリーの幅も広がりますし、お客様も新しい感性を味わえるはずです」
特に興味深いのが山本による『UTAGE 宴』で、これが世界初演となる。
「この作品は群馬交響楽団による委嘱作品で、2024年5月25日に初演されます。今回はその吹奏楽版の初演となるのですが、こんなにも短いスパンで初演が続くというのもダイナミックですよね。彼女には“日本の色を強く出してほしい”というリクエストをして、ジャポニスムの香りが濃厚な作品に仕上げてもらいました。皆さんの印象にも強く残ると思いますし、将来は日本の吹奏楽を代表する楽曲に育ってくれたら、と願っています」
もちろん、邦人作曲家の作品だけでなく、フランク・ティケリの『ブルー・シェイズ』やジョン・マッキーの『レッドライン・タンゴ』をはじめ、世界的に知られる楽曲もふんだんに散りばめられ、吹奏楽の醍醐味が存分に楽しめる。また、ワーグナーのオペラ『ローエングリン』から、吹奏楽のレパートリーとしても人気の高い『エルザの大聖堂への行列』(ルチエン・カイエ編曲)も披露されるなど、フェスタ サマーミューザを訪れるクラシックファンにもアピールできるラインアップだ。
「吹奏楽は、私のDNAともいえるものです。何しろ、初めて触れた音楽が吹奏楽ですから」
小学生のときに須川展也のCDを買ったのがきっかけでサクソフォンを始め、アメリカに留学した彼にとって、吹奏楽は自身の音楽を語るうえで欠かせないルーツである。また、前回、浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァルに参加したときには、参加者同士で交流を楽しむ雰囲気が印象的だったという。
「年に1回、これだけ豪華なメンバーが集まる、その瞬間が素敵ですよね。メンバーのなかには、普段日本のオーケストラで一緒に演奏している仲間たちもたくさんいるし、そんな彼らが、自分のホームではないところでお互いに関係を築き、リハーサルの後はみんなで食事に行ったりしている。とてもいい雰囲気だし、こういう場所で音楽を表現するとさまざまな化学反応が生まれるのではないかと思います」
他に類を見ない、オールヤマハの、しかも世界中のエキスパートが集まる豪華ステージ。吹奏楽のファンはもちろん、オーケストラのファンも要注目だ。
浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル
ワールドドリーム・ウインドオーケストラ
日時:2024年8月3日(土)開演13:30(開場12:30)12:50~プレコンサート
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川県川崎市)
出演:ミシェル・モラゲス(fl) ディーテルム・ヨナス(ob) マイケル・コリンズ(cl) ローラン・ルフェーブル(fg) 須川展也(sax) ジャン=イヴ・フルモー(sax) イェンス・プリュッカー(hrn) ロバート・サリバン(tp) ラーシュ・カーリン(tb) アントニー・カイエ(euph) ステファン・ラベリ(tub) 他
料金:一般4,000円 友の会3,600円 U25(小学生以上25歳以下)1,500円(税込・全席指定)
詳細はこちら
ワールドドリーム・ウインドオーケストラ
オープニングコンサート
日時:2024年8月5日(月)開演19:00(開場18:15)
会場:アクトシティ浜松 中ホール(静岡県浜松市)
料金:一般4,000円 高校生以下1,500円(税込・全席自由)
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原田慶太楼オフィシャルサイトはこちら
文/ 山崎隆一
photo/ Claudia Hershner
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