Web音遊人(みゅーじん)

Red Pumps BIGBAND

われら音遊人:出自がさまざまなメンバーと、誰もが楽しめる音楽をビッグバンドで

3月下旬のとある日曜日。大阪府南部にある岸和田市の多目的ホールのスタジオで、生き生きとしたビッグバンドサウンドが響いていた。彼・彼女らのバンド名は「Red Pumps BIGBAND」。この日は、年に一度開催しているレギュラーコンサートに向けた練習日であった。今年のテーマのひとつは「Dream」。『Nica’s Dream』や『Day Dream』など、タイトルに「Dream」と付いたナンバーを、バンドリーダーの福田典征てるゆきさん(ドラムス)によるディレクションのもと次々とさらっていく。その雰囲気はフランクで和気あいあいとしており、音楽進行に関するコミュニケーションも積極的に行う。一斉に音を出したときのまなざしは真剣そのものだ。

「2007年、南大阪にいるアマチュアミュージシャンを中心に結成しました。当時、僕自身は別のバンドに所属していたのですが、方向性の違いに悩んでいた時期でした。同じように悩むミュージシャンに声をかけ始め、徐々に人数が増えたことから、ビッグバンドの形で活動することになりました」(福田さん)

Red Pumps BIGBAND

インタビューにご協力いただいたメンバー。左から、多留谷里美さん(アルトサクソフォン)、正重憲生さん(ギター)、成宮康子さん(テナーサクソフォン)、福田典征さん(ドラムス)、清水通代さん(トロンボーン)、佐藤光宏さん(トランペット)。

コンセプトは「誰もが聴いて楽しめる音楽を演奏すること」。ビッグバンドのスタイルはそのままに、ジャズナンバーはもちろん、ライブによっては映画音楽やディズニー音楽、ゲーム音楽などにも取り組む。毎度テーマはさまざまで、福田さんは「僕の気分で決まります」と笑う。ビッグバンドだけでなく、ほかのジャズスタイルや吹奏楽など、さまざまな畑で音楽を経験してきたメンバーがそろうため、サウンドも多様。演奏する際は、必ず全員がソロを担当し、ひとりひとりが個性を発揮するようにしているのも大切なポイントだ。
「いつも意識しているのは、常に自分たちよりも少し高いレベルの音楽に挑戦すること。現状維持にとどまることなく活動していくために演奏曲を選んでいます」(福田さん)

そうなると片手間でビッグバンド活動はできない。練習中も各メンバーがダレることなく音楽に向き合う姿勢が印象的だった。モチベーション維持の秘けつは何なのだろうか。
「難しい曲が多いので、ふだんは仕事や家事の時間とやりくりしながら、カラオケボックスなどで個人練習することが多いですね」(清水通代さん トロンボーン)
「モチベーション維持というより、何がなんでも練習せざるを得ないんです(笑)」(佐藤光宏さん トランペット)
「私はビッグバンドが未経験でこのバンドに参加したのですが、自信がなくなることがあっても、周囲が見守ってくれている感覚があります」(多留谷里美さん アルトサクソフォン)
「このバンドは向上心のあるメンバーが多くて、みんな一生懸命ですし、演奏の直前になって“やっぱり無理”なんてことがないんです」(成宮康子さん テナーサクソフォン)

Red Pumps BIGBAND

ビッグバンド編成による演奏は、ゴージャスで迫力満点。本番に向けて、各パートが調和しながら、アンサンブルとソロの演奏が練り上げられていく。

緩やかな結束から生まれる豊かな音楽

福田さんはドラムスを担当している一方で、ふだんは経営者という一面も持つ。Red Pumps BIGBANDには、ほかにも公務員や会社員、飲食店のスタッフ、専業音楽家など、ふだんはそれぞれに自身の生活を送りながら音楽活動を行っている。

アマチュアのバンドは往々にして仕事や生活との両立が課題のひとつであるが、音楽活動に専念できるのは運営体制にも理由がある。活動を続けるには、楽譜の手配や場所の確保、公演会場やイベント主催者などとの交渉など、演奏以外のさまざまな役割が必要だが、メンバーが分担して行うバンドが多い。しかしRed Pumps BIGBANDでは、福田さんとピアノの吉本純華さんがそれらのタスクを一手に担当。結果的に、ほかのメンバーが音楽に集中できる環境が整っているという。
「このバンドにはアマチュアならではの良い緩さや曖昧さ、余白があります。だからといって、演奏にミスが許されるわけではないけれども、まずは音楽に集中して、それぞれに頑張り、高め合い、そして見守り合えるつながりができている。そんなバンドだと思います」(正重しょうじゅう憲生さん ギター)

豊かな音楽は、豊かな人間関係から生まれる。健やかに音楽に取り組む土壌を感じさせるRed Pumps BIGBANDは、迫力あふれるサウンドを響かせながら、これからも緩やかに、伸び伸びと進化していく。

Red Pumps BIGBAND

レギュラーコンサートやイベントなどの定期的な演奏機会が活動の原動力になっている。

Red Pumps BIGBANDのQ&A

Q.バンドを長く続ける秘訣は?
ライブやイベントが終わったあとにテンションが下がらないように、定期的に予定を組んでいます。また、ゲストミュージシャンを招いてやる気を高めています。2024年は6月23日(日)に神戸ハーバーランド スペースシアターで開催される西日本アマチュアビッグバンド連絡会(NABL)のコンサートに参加し、10月6日(日)には大阪・梅田のロイヤルホースでジャズシンガーの清水ひろみさんをお迎えしたライブを予定しています。

Q.バンドを躊躇している方へのメッセージは?
「いつかニューヨークのジャズの本場、ブルーノートで演奏したい」という夢があります。まだまだその目標には遠いですが、その場所を目指しつつ、常にすばらしいミュージシャンをお迎えしながら自分たちのレベルアップを図っていきたいですね。直近の夢は、クラリネット奏者のレジェンドである北村英治さんとご一緒することです。

バンド紹介

●楽団名:Red Pumps BIGBAND
●結成時期:2007年
●活動内容:年1回のレギュラーコンサートに加え、ジャズストリートなどのイベントに積極的に参加。
●練習頻度:月に2~3回
●年齢構成:30~60代(平均年齢は45歳)
●メンバー:アルトサクソフォン、テナーサクソフォン、バリトンサクソフォン、トランペット、トロンボーン、ギター、ベース、ピアノ、ドラムスの全17名。
オフィシャルサイトはこちら

オフィシャルFacebook

仕事を持ちながら音楽を楽しむ「われら音遊人」大募集!

音楽情報誌「音遊人」とWebマガジン「Web音遊人」にご登場いただける、仕事をしながら活動を続けているアマチュアバンドや楽団を募集しています。ジャンルは問いません。ぜひ、取材にご協力ください。
詳細はこちら

photo/ 村川荘兵衛

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人:諏訪内晶子さん

今月の音遊人

今月の音遊人:諏訪内晶子さん「音楽の素晴らしさは、人生が熟した時にそれを音で奏でられることです」

21785views

音楽ライターの眼

没後100年の巨匠に捧げた寸分の隙もない妙技と新境地の数々/カリスマ・バイオリニスト、石田泰尚×10人のヴィルトゥオーゾによるアンサンブル『動物の謝肉祭』

4252views

トランスアコースティックピアノ™

楽器探訪 Anothertake

音量の問題を解決し、ピアノの楽しみを広げる「トランスアコースティックピアノ」

5985views

ピアノやエレクトーンを本番で演奏する時の靴選び

楽器のあれこれQ&A

ピアノやエレクトーンを本番で演奏する時の靴選び

50014views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

14819views

オトノ仕事人

芸術をとおして社会にイノベーションを起こす/インクルーシブアーツ研究の仕事

7824views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

17205views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

10317views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

26454views

われら音遊人:高度&骨太なサウンドにソウルフルな歌声が響く!

われら音遊人

われら音遊人:高度&骨太なサウンドにソウルフルな歌声が響く!

1226views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

9634views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

34970views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ギタリスト木村大とピアニスト榊原大がトランペットに挑戦!

8453views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

16808views

大萩康司 瀧本実里

音楽ライターの眼

注目の実力派2人の初共演が実現!ギターとフルートが織りなす至福のひとときを堪能!!/大萩康司&瀧本実里 デュオ・コンサート

904views

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

舞台上の小さなボックスから指揮者や歌手に大きな安心を届ける/オペラ劇場の音楽スタッフの仕事(後編)

15630views

ざぶとんず

われら音遊人

われら音遊人:本家ディアマンテスが認めた 力強く、心躍るサウンド!

1119views

STAGEA(ステージア)ELB-02 - Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンで初めてオーディオファイル録音機能を装備

14756views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

14132views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

8914views

FGDPシリーズ

楽器のあれこれQ&A

新たな可能性を秘めた楽器、フィンガードラムパッドに注目!

1476views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

8078views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11794views