Web音遊人(みゅーじん)

曽根麻央

今月の音遊人:曽根麻央さん 「音楽は、目に見えないからこそ、立体的なのだと思います」

トランペットとピアノの“ジャズ二刀流”のみならず、マルチインストゥルメンタリスト、作曲家として輝きを放つ曽根麻央さん。8歳でトランペットに出会ったときから、プロを夢見ていたと語る曽根さんにとって音楽とは?

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

うーん……とても難しい質問です。僕は幼いころから、クラシック・ピアノを習っていたのですが、小学校3年生のときにルイ・アームストロングに憧れて、トランペットを始めました。彼の真似をしてトランペットの練習をしていたので、『What a Wonderful World』や『聖者の行進』などはとてもよく聴きました。
トランペットと出会い、一度はピアノから離れたのですが、小学校4年生のときに両親が連れて行ってくれたレイ・ブライアントのライブで衝撃を受けて再開したんです。アルバム『Play The Blues』を繰り返し聴いて、ともかく耳コピしましたね。とくに好きだったのは、『Gotta Travel On』と『Saint Louis Blues』の2曲。翌年には、彼のディナーショーで前座を務めさせていただくことになり、ご本人と話す機会にも恵まれました。そんななかでジャズ・ピアノに強く興味を抱くようになったので、運命を変えたアルバムだといえるかもしれません。
一方で、最近聴く音楽は、どんどんポップなものになっています。好きなのは、山下達郎さんのアルバム『FOR YOU』。星野源さんや藤井風さん、King Gnuさん、宇多田ヒカルさんの曲などもよく聴いています。ジャズにもポップスの要素や、ステージパフォーマンスを取り入れるとよいと僕は考えているんです。

Q2.曽根さんにとって「音」や「音楽」とは?

目に見えない、光のようなものです。トランペットを吹いているときには、照明に近いような感じもします。聴者に向かってどういうライトを投げかけていくか、という考え方ですね。
あるいは、“気”です。音楽を聴くときにも、この曲は“気”がいいなと思ったりしますし、もちろん自分がつくる曲は“気”がいい並びにしているつもりです。
そう感じるようになったのは、プロで活動を始めてからですね。大学時代は、「音楽」は譜面の上で完結していなければ怖かったんです。でも、活動が多忙になると、作曲する際は何度も譜面を書き直すよりは、覚えた方が早いと考えるようになりました。音に関しては、どんどん記憶力がよくなっているんです。ですから、つくった曲を覚えてそれを頭のなかで書き換え、譜面に書くのは最後です。譜面という物理的なものに書くのではなく記憶するようになってから、「音」や「音楽」は目に見えないものだと感じるようになりました。同時に、音楽がどんどん立体的になっていったと思います。

曽根麻央

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

クリエイティブな人を想像します。例えば、音楽をつくるときに、誰かがディレクションするのではなくて、その場にいるみんなで話し合ってつくり上げていくのが「音で遊ぶ人」たちのイメージです。僕のまわりには、そんな人が多いですね。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

いろいろな人たちと知り合えたことです。養護施設や幼稚園、老人ホーム、そして大使公邸で演奏することもあれば、アメリカ滞在中には天皇誕生日の祝賀会で演奏することもありました。
さまざまな人たちに関わって生きてきたことは、とても幸せなことだと感じていますし、音楽家だからこそできた交流なのかなという気がしています。
そこで得たものといえば、型にはめたステレオタイプで人を見ないこと。そして、いろいろな人がいるという考え方を、ごく自然に抱くようになりました。

曽根麻央〔そね・まお〕
幼少期よりクラシック・ピアノを、8歳でトランペットを始める。2010年バークリー音楽大学へ全額奨学金を得て入学、2014年に首席で卒業。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席卒業。2018年に拠点を東京へ移し、アルバム『Infinite Creature』でメジャーデビュー。2020年ケヴィン・へフリン監督の映画『トランペット』に主演俳優として出演。劇中音楽の総合ディレクションとしても参加。2022年には自身のバンド“Brightness of the Lives”によるアルバム『Brightness of the Lives』を発表。2022年7月からオリジナルアレンジのスタンダードナンバーをソロで録音した『Plays Standards』シリーズを配信。
オフィシャルサイト

photo/ 阿部雄介

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

林英哲

今月の音遊人

今月の音遊人:林英哲さん「感情までを揺り動かす太鼓の力は、民族や国が違っても通じるものなんです」

3072views

神保彰 ワンマンオーケストラ - Web音遊人

音楽ライターの眼

たったひとりで聴かせる驚異のオーケストラマジックに、聴衆は釘づけ!/神保彰 ワンマンオーケストラ2017 ~GINZA DE JIMBO~

10750views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

24882views

エレキギター

楽器のあれこれQ&A

エレキギターのサウンドメイクについて教えて!

1191views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11898views

オトノ仕事人

オーダーメイドで楽譜を作り、作・編曲家から奏者に楽譜を届ける/プロミュージシャン用の楽譜を制作する仕事

18446views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

10931views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7767views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10434views

われら音遊人ー021Hアンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:元クラスメイトだけで結成。あのころも今も、同じ思いを共有!

5814views

山口正介 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

この感覚を体験すると「音楽がやみつきになる」

8683views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10466views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

8514views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

12171views

音楽ライターの眼

クシシュトフ・ペンデレツキ(1933 – 2020)追悼と映画音楽への貢献

7148views

オトノ仕事人

芸術をとおして社会にイノベーションを起こす/インクルーシブアーツ研究の仕事

6976views

われら音遊人:「非日常」の充実感が 活動の原動力!

われら音遊人

われら音遊人:「非日常」の充実感が活動の原動力!

8279views

“音を使って音楽を作る”音楽の冒険を「ELC-02」で

楽器探訪 Anothertake

音楽を楽しむ気持ちに届ける「ELC-02」のデザインと機能

8762views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

14730views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

8872views

楽器のあれこれQ&A

エレクトーンについて、知っておきたいことや気をつけたいこと

26290views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7114views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26231views