今月の音遊人
今月の音遊人:藤井フミヤさん「音や音楽は心に栄養を与えてくれて、どんなときも味方になってくれるもの」
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今月の音遊人:曽根麻央さん 「音楽は、目に見えないからこそ、立体的なのだと思います」
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2023.4.3
トランペットとピアノの“ジャズ二刀流”のみならず、マルチインストゥルメンタリスト、作曲家として輝きを放つ曽根麻央さん。8歳でトランペットに出会ったときから、プロを夢見ていたと語る曽根さんにとって音楽とは?
うーん……とても難しい質問です。僕は幼いころから、クラシック・ピアノを習っていたのですが、小学校3年生のときにルイ・アームストロングに憧れて、トランペットを始めました。彼の真似をしてトランペットの練習をしていたので、『What a Wonderful World』や『聖者の行進』などはとてもよく聴きました。
トランペットと出会い、一度はピアノから離れたのですが、小学校4年生のときに両親が連れて行ってくれたレイ・ブライアントのライブで衝撃を受けて再開したんです。アルバム『Play The Blues』を繰り返し聴いて、ともかく耳コピしましたね。とくに好きだったのは、『Gotta Travel On』と『Saint Louis Blues』の2曲。翌年には、彼のディナーショーで前座を務めさせていただくことになり、ご本人と話す機会にも恵まれました。そんななかでジャズ・ピアノに強く興味を抱くようになったので、運命を変えたアルバムだといえるかもしれません。
一方で、最近聴く音楽は、どんどんポップなものになっています。好きなのは、山下達郎さんのアルバム『FOR YOU』。星野源さんや藤井風さん、King Gnuさん、宇多田ヒカルさんの曲などもよく聴いています。ジャズにもポップスの要素や、ステージパフォーマンスを取り入れるとよいと僕は考えているんです。
目に見えない、光のようなものです。トランペットを吹いているときには、照明に近いような感じもします。聴者に向かってどういうライトを投げかけていくか、という考え方ですね。
あるいは、“気”です。音楽を聴くときにも、この曲は“気”がいいなと思ったりしますし、もちろん自分がつくる曲は“気”がいい並びにしているつもりです。
そう感じるようになったのは、プロで活動を始めてからですね。大学時代は、「音楽」は譜面の上で完結していなければ怖かったんです。でも、活動が多忙になると、作曲する際は何度も譜面を書き直すよりは、覚えた方が早いと考えるようになりました。音に関しては、どんどん記憶力がよくなっているんです。ですから、つくった曲を覚えてそれを頭のなかで書き換え、譜面に書くのは最後です。譜面という物理的なものに書くのではなく記憶するようになってから、「音」や「音楽」は目に見えないものだと感じるようになりました。同時に、音楽がどんどん立体的になっていったと思います。
クリエイティブな人を想像します。例えば、音楽をつくるときに、誰かがディレクションするのではなくて、その場にいるみんなで話し合ってつくり上げていくのが「音で遊ぶ人」たちのイメージです。僕のまわりには、そんな人が多いですね。
いろいろな人たちと知り合えたことです。養護施設や幼稚園、老人ホーム、そして大使公邸で演奏することもあれば、アメリカ滞在中には天皇誕生日の祝賀会で演奏することもありました。
さまざまな人たちに関わって生きてきたことは、とても幸せなことだと感じていますし、音楽家だからこそできた交流なのかなという気がしています。
そこで得たものといえば、型にはめたステレオタイプで人を見ないこと。そして、いろいろな人がいるという考え方を、ごく自然に抱くようになりました。
曽根麻央〔そね・まお〕
幼少期よりクラシック・ピアノを、8歳でトランペットを始める。2010年バークリー音楽大学へ全額奨学金を得て入学、2014年に首席で卒業。2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席卒業。2018年に拠点を東京へ移し、アルバム『Infinite Creature』でメジャーデビュー。2020年ケヴィン・へフリン監督の映画『トランペット』に主演俳優として出演。劇中音楽の総合ディレクションとしても参加。2022年には自身のバンド“Brightness of the Lives”によるアルバム『Brightness of the Lives』を発表。2022年7月からオリジナルアレンジのスタンダードナンバーをソロで録音した『Plays Standards』シリーズを配信。
オフィシャルサイト
文/ 福田素子
photo/ 阿部雄介
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