海外のトップアーティスト協力のもと誕生したヤマハのXenoシリーズ。奏者とともに進化を続け、カスタムトロンボーンXenoシリーズは2025年で30周年を迎える。
2024年10月には、テナーバストロンボーンの待望の新シリーズ「822Ⅱ」が登場。「YSL-882Ⅱ」「YSL-882OⅡ」「YSL-882ORⅡ」3つのモデルが発売された。

レバーアクションの改良でパフォーマンスが向上

3モデルともに大きく進化したのは、レバーアクション。ストロークを短くすることで、F管の切り替えが格段にスムーズに行えるようになった。また、安定した操作を実現するためにダブルトーションスプリング（左右2つにコイル部分があるバネ）を採用し、バネの太さも新設計に。さらに、ロータリーとレバー連結にダブルボールベアリングを装備することで、動きがシンプルになるとともにメンテナンス性も向上した。
「これによって、トロンボーンでは難しいとされる速いパッセージの場面でもクイックアクションを実現できます。また、トロンボーンは重心が後ろに偏りがちになる楽器であるうえ、レバーアクションで切り替えをしなければなりません。新仕様のレバーシステムによってブレずに吹くことができるので、演奏性の向上につながります」
ヤマハミュージックジャパンの児玉隆也さんはそう話す。
左親指にフィットする樹脂製のカバーも新規採用された。
「接着剤は響きを止める要素になってしまうため、カバーはネジ式になっています。パーツがほんの少し変化するだけで楽器の特徴は変わるので、この樹脂カバーを採用することで良い響きを得られるようになったと思います」
世界のオーケストラの首席奏者をもうなずかせる音色と響き、反応のよさや吹奏感など、高い評価を得てきた前モデルから継承されたものもある。豊かな響きを生み出す一枚取りのベルがそのひとつ。ベルサイズは一般的な通常サイズより4ミリほど大きく、このわずかな違いが音を遠くまで響かせる。
音程が取りやすく、鳴らしやすいテーパーの設計や、精度の高さでヤマハが世界に誇るスライドもそのまま受け継いでいる。

今回主に改良されたレバーアクション。ストロークを短くすることで操作性を向上。また、レバー操作を安定させるためのダブルトーションスプリングやダブルボールベアリングなども新たに採用。

異なるキャラクターの3モデル

3つのモデルには、それぞれ独自の個性がある。
トロンボーンの王道ともいえるのが、伝統的なトラディショナルラップの「YSL-882Ⅱ」。グースネックを肉薄化することで、奏者の自由度を向上させている。スライドにはイエローブラス製のリードパイプが装着されているが、着脱式が採用されており、別売りの素材の異なるリードパイプに付け替えて音色や吹奏感を変化させることが可能だ。
「YSL-882OⅡ」と「YSL-882ORⅡ」はストレートで解放的な吹き心地が感じられるオープンラップモデルだが、両者のキャラクターは異なる。
「吹奏楽、オーケストラ向けということでは決してありませんが、『YSL-882OⅡ』はソロやアンサンブル、吹奏楽でも反応がよくて吹きやすい楽器で人気が高いですね。一方の『YSL-882ORⅡ』はオーケストラでトロンボーンを吹くプレーヤーの方が開発に携わったもので、よりキャパシティが広くてワイドな楽器です」
「YSL-882ORⅡ」は主管とF管はリバース式。ほかにも新規設計の支柱やバルブを操作した際のF管抜差内の気密差による雑音を軽減する空気抜け孔、「YSL-882Ⅱ」同様の交換式リードパイプなど革新的な仕様が盛り込まれている。
いずれも学生からプロ奏者まで幅広いプレーヤーに向けた楽器であり、価格は50万円台から。だが、近年はトロンボーンの価格が高騰し、この価格帯のものが少なくなっているのが現状だ。
「新モデルの発売にあたっても、このシリーズだけは絶対に値上げしたくないという思いがありました。学校などでも購入できる価格帯を守り、たくさんの人に使っていただきたいという気持ちからです」

YSL-882Ⅱ
コンパクトラップ。F管アタッチメントは豊かで輝かしい音色を生み出すことができる。

YSL-882OⅡ
オープンラップ　F管アタッチメント。F管抜差使用時の息の流れ・抵抗感の変化を最小限に抑える緩やかなオープンラップ。全体的にストレートな吹奏感と開放的で豊かな響きをもたらす。

YSL-882ORⅡ
オープンラップ　F管アタッチメント・リバース式主管抜差。主管抜差、F管抜差共にリバース式抜差を採用。F管ピッチを従来のモデルよりもワイドにすることによってB♭管とF管の流路抵抗差を削減した。

2024年10月にはヤマハ銀座店、11月にはヤマハミュージック 名古屋店で「YSL-882II」シリーズの展示・試奏会「スライド・キャラバン」が開催され、「ヤマハの最新のトロンボーンを初めて吹いたけれど、本当に吹きやすい」、「実際吹いてみたら、全然違う」、「スライドを違う素材に変えるとこんなにも個性が変わるの！？」などと大好評だった。
2025年1月17日（金）～1月26日（日）には、ヤマハミュージック 大阪なんば店で開催予定。ぜひ足を運んで、自分好みのトロンボーンに出会ってほしい。

■ヤマハカスタムトロンボーン「Xeno」

世界のオーケストラの首席奏者をも深くうなずかせる音色と響き。その精微なフォルムには、奏者と同じ芸術性が宿っている。表現の高みへ。ヤマハカスタムトロンボーン「ゼノ」。
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