今月の音遊人
今月の音遊人:實川風さん「音楽は過ぎ去る時間を特別な非日常に変えるパワーを持っていると思います」
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今月の音遊人:Budoさん「愛でも憎悪でも、つねに音楽から強烈なエネルギーを感じていたいです」
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2026.2.2
YouTubeチャンネル登録者数14万人(2026年1月時点)を誇る新世代ピアニスト、Budo(ぶどう)さん。ユニークな発想と、超絶技巧も自在に乗りこなすエモーショナルな演奏で、クラシック界に新風を吹き込んでいます。大舞台で次々と夢を叶えているBudoさんに、みずからの原点と音楽への愛を語っていただきました。
尾崎豊さんの『Forget-me-not』ですね。友人の影響で15歳ぐらいのときに尾崎さんの歌に出会って、なんてカッコいいんだと。世代的には僕はだいぶ下ですが、どっぷりハマりました。この曲を尾崎さんがライブで歌っている映像がありまして、もう歌いすぎて声が出てないのに、すごく心に響くんですよ。ピアノの世界にいると、キチッと弾かなきゃいけないというプレッシャーを感じることもありますが、そんなときに尾崎さんの声にならない歌を聴くと、勇気をもらえるというか。いまだにこの曲は、自分のコンサートの前日に必ず聴いています。
クラシックでいうと、ウラディミール・ホロヴィッツがズービン・メータの指揮でラフマニノフの『ピアノ協奏曲第3番』を弾いた映像に心を打たれました。当時75歳だったホロヴィッツは感情が高まりすぎたのか、指揮とズレる場面があるのですが、それを見て「うわ、これがやりたい!」と思いました。
尾崎さんにしてもホロヴィッツにしても、そんなふうに魂をむき出しにして表現できるアーティストに、10代の頃から憧れがありますね。
難しい質問ですが、今の時点での答えとしては「LOVE」かな。愛ですね。愛ってじつはいろいろな側面があって、エネルギーの方向によってまったく違う光り方をするものだと思うんです。同じく音楽にも、キラキラした楽しい感情もあれば、尾崎さんの曲から感じるような愛憎入り混じった感情もありますよね。
愛をひとことで表わすのが難しいように、音楽にもいろいろな愛を感じながら聴いたり、演奏したりしています。愛でも憎悪でも、つねに音楽からなにかしら強烈なエネルギーを感じていたいです。

僕自身の経験からお話すると、ひとつはヤマハ音楽教室での思い出があります。3歳からヤマハでピアノとエレクトーンを習っていたのですが、週一回のエレクトーンの時間が大好きでした。同世代の子どもたちが集まって、レッスンをして、みんなでオーケストラのようにひとつの音楽をつくって、最後に鬼ごっこをして帰る。まさに「音で遊ぶ」体験だったと思います。
もうひとつは、カナダに留学していたときの思い出です。音大を出てから、音楽とは関係ない道に進もうと、カナダの大学で経営学を学んでいた時期があって。サンセット・ビーチの近くに住んでいたので、毎晩、友人たちと浜辺に集まっていました。音楽が好きな子ばかりで、スピーカーで音楽を流しながら、ヒップホップやラップをする子がいたり、サンプラーや小さな鍵盤、ウクレレを持っていってプレイしたり。みんな思い思いに音楽で遊んでいましたね。
そういった経験が僕の原点としてあって、今もYouTubeでやっているいろいろな遊びにつながっていると思います。ドイツのアニメフェスティバルでセフィロス(ゲーム『ファイナルファンタジーⅦ』のキャラクター)のコスプレをして弾いたり、銀座のストリートピアノをパジャマ姿で弾いたり(笑)。
やっぱり、皆さんと出会えたことに尽きますね。音楽をやっている人って、根底にどこかシャイな部分があると思うのですが、僕もこう見えて意外とシャイな部分がありまして。子どもの頃は、コミュニケーションって難しいなと思うこともありました。けれどピアノが弾けると、仲間ができるんですよね。それはヤマハの教室で学んだことです。
ピアニストになって、コンサートに2,000人もの方々が集まってくださるのも、音楽をやっていたからですよね。ファンもクリエイターもスタッフも、みんな音楽の輪でつながっている。本番前は緊張するけれど、舞台袖にスタッフがいてくれることでつながりを感じて、舞台に上がったらファンの皆さんとつながって。音楽が好きな人たちって、みんなあったかいんです。みんながいるから僕は笑えているし、僕が音楽をやるとみんなが笑ってくれる。そんなふうに、音楽を通してつながっていられることは、本当に幸せだと思います。
Budo〔ぶどう〕
桐朋学園大学音楽学部ピアノ科を卒業後単身カナダに渡る。帰国後にYouTubeで演奏動画の投稿を開始し、急上昇クリエイターに選出。現在のYouTubeチャンネル登録者数は14万人を突破。ミュージカル『のだめカンタービレ』や映画『ベートーヴェン捏造』では劇中演奏を担当。 2024年にはサントリーホールでの公演を完売し全国ツアーも大成功に収める。これまでにパシフィックフィルハーモニア東京、札幌交響楽団などと共演。 2026年5月には自身がプロデュースするクラシックフェス「Budo Classic Festival 2026 ~SUPER BEST~」を開催する。
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