今月の音遊人
今月の音遊人:石若駿さん「音楽っていうのは、人の考えとか行動の表れみたいなものだと思う」
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今月の音遊人:平原綾香さん「未来のことを考えず、純粋に音楽を奏でる人こそ、真の音楽家だと思います」
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2017.6.1
歌手の平原綾香さんといえば、19歳でデビューした時から優れた歌唱力を評価されてきた稀代の歌姫。でも実は、サックス奏者の平原まことさんを父に持ち、自らも音楽大学でサックスを学んでいた器楽の人なのです。音楽の原点をうかがうと、そんな彼女のルーツも浮かび上がってきました。
子守唄代わりに聴いた父のサックスですね。小さい頃から歌声みたいな感覚で聴いていたから、私にとっては歌もサックスも同じような気持ちで聴くものだし、演奏するものなんです。
デビュー当時のインタビューで「なぜ平原さんはサックスではなく、歌の道を選ばれたのですか?」と聞かれた時、「そういえばサックスって楽器であって歌とは違うんだよね」と、改めて認識したぐらいです。
サックスを始めた中学生の頃、どうしても吹けないフレーズがあった時に、父から「楽器を置いて、そのフレーズを歌ってごらん」と言われ、歌おうとしたら全然歌えなかったんです。そこで「そのフレーズを歌えるようになるまで練習してごらん」と言われ、その通りにしてサックスを持ったら、嘘みたいに吹けちゃう。それぐらい歌とサックスは密接なんです。逆に、歌で出したい声が出ないときにサックスを構えるポーズをしたら、その声が出たこともありました。
やはり、サックスは私の原点で、父の音色はいつでも根底に流れています。艶があってキラキラした、金ピカの音色です。
ずっとサックスを吹いてきて、19歳の時から慣れない歌を歌い始めました。歌でどうやったら成長できるんだろうと、ひたすら音楽と向き合う中でわかったことは、“音楽は自分にとって人間のような存在”だということ。人は誰かとの出会いによって、自分が変わったり、大切なことを知ることができたり、ある種の目覚めのようなものを体験すると思います。私はそれが音楽との出会いによって起こるんです。
これまで歌ってきた歌を人間に例えると、厄介な上司やすごく優しい同僚のような人もいました。頼れる先生のような人もいたかもしれない。そういう人間のキャラクターのような感覚で音楽と接してきました。音楽を通して、救われて、音楽で落ち込んで、音楽で恋をしたり結婚したり……。一通りの経験はしたわ!という気分になります(笑)。
未来のことを考えず、純粋に音楽を奏でる人だと思います。例えば、どこかの原住民の歌だったり、どこにもレコーディングされないであろう音楽だったり、誰のために歌っているかわからないもの。子どもの歌もそうですよね。「これはレコーディングされる」と思って歌うと、いい歌がなかなか録れないものです。ある写真家の方が、撮影で訪れたアフガニスタンの子どもたちは、カメラが何であるかもわからないし、どんな風に写っているかも気にしない。「そういう子たちの瞳って本当に美しいんだよ」って教えてくださいました。音楽も一緒で、「これが後々世に残るからうまく歌わなきゃいけない」なんて考えずに歌っている人たちの歌こそが最高。音楽を心から遊んでいる真の音楽家だなと思います。春の陽気に誘われて鼻歌を歌ったりね。私にとって唯一そうなれるのがライブかな。後にも先にもこれ1回きりという場が好きなんです。
平原綾香〔ひらはら・あやか〕
父はサックス奏者の平原まこと。祖父はジャズトランペッターでホットペッパーズの平原勉。2003年12月17日にホルストの組曲『惑星』の『木星』に日本語詞をつけた『Jupiter』でデビュー。2004年の日本レコード大賞新人賞や、2005年日本ゴールドディスク大賞特別賞をはじめ、様々な賞を獲得。2017年4月26日に10枚目のオリジナルアルバム『LOVE 2』を発表、5月からは13度目の全国ツアー『平原綾香 CONCERT TOUR 2017~LOVE 2~』(全20公演)を開催。夏にはミュージカル『ビューティフル』(帝国劇場)の主演も予定されている。
平原綾香オフィシャルサイト http://www.camp-a-ya.com/
文/ 仁川清
photo/ 後藤泰宏
tagged: 平原綾香, ミュージシャン, インタビュー, 今月の音遊人
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