Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人 - 平原綾香さん

今月の音遊人:平原綾香さん「未来のことを考えず、純粋に音楽を奏でる人こそ、真の音楽家だと思います」

歌手の平原綾香さんといえば、19歳でデビューした時から優れた歌唱力を評価されてきた稀代の歌姫。でも実は、サックス奏者の平原まことさんを父に持ち、自らも音楽大学でサックスを学んでいた器楽の人なのです。音楽の原点をうかがうと、そんな彼女のルーツも浮かび上がってきました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

子守唄代わりに聴いた父のサックスですね。小さい頃から歌声みたいな感覚で聴いていたから、私にとっては歌もサックスも同じような気持ちで聴くものだし、演奏するものなんです。
デビュー当時のインタビューで「なぜ平原さんはサックスではなく、歌の道を選ばれたのですか?」と聞かれた時、「そういえばサックスって楽器であって歌とは違うんだよね」と、改めて認識したぐらいです。
サックスを始めた中学生の頃、どうしても吹けないフレーズがあった時に、父から「楽器を置いて、そのフレーズを歌ってごらん」と言われ、歌おうとしたら全然歌えなかったんです。そこで「そのフレーズを歌えるようになるまで練習してごらん」と言われ、その通りにしてサックスを持ったら、嘘みたいに吹けちゃう。それぐらい歌とサックスは密接なんです。逆に、歌で出したい声が出ないときにサックスを構えるポーズをしたら、その声が出たこともありました。
やはり、サックスは私の原点で、父の音色はいつでも根底に流れています。艶があってキラキラした、金ピカの音色です。

Q2.平原さんにとって「音」や「音楽」とは?

ずっとサックスを吹いてきて、19歳の時から慣れない歌を歌い始めました。歌でどうやったら成長できるんだろうと、ひたすら音楽と向き合う中でわかったことは、“音楽は自分にとって人間のような存在”だということ。人は誰かとの出会いによって、自分が変わったり、大切なことを知ることができたり、ある種の目覚めのようなものを体験すると思います。私はそれが音楽との出会いによって起こるんです。
これまで歌ってきた歌を人間に例えると、厄介な上司やすごく優しい同僚のような人もいました。頼れる先生のような人もいたかもしれない。そういう人間のキャラクターのような感覚で音楽と接してきました。音楽を通して、救われて、音楽で落ち込んで、音楽で恋をしたり結婚したり……。一通りの経験はしたわ!という気分になります(笑)。

今月の音遊人 - 平原綾香さん

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

未来のことを考えず、純粋に音楽を奏でる人だと思います。例えば、どこかの原住民の歌だったり、どこにもレコーディングされないであろう音楽だったり、誰のために歌っているかわからないもの。子どもの歌もそうですよね。「これはレコーディングされる」と思って歌うと、いい歌がなかなか録れないものです。ある写真家の方が、撮影で訪れたアフガニスタンの子どもたちは、カメラが何であるかもわからないし、どんな風に写っているかも気にしない。「そういう子たちの瞳って本当に美しいんだよ」って教えてくださいました。音楽も一緒で、「これが後々世に残るからうまく歌わなきゃいけない」なんて考えずに歌っている人たちの歌こそが最高。音楽を心から遊んでいる真の音楽家だなと思います。春の陽気に誘われて鼻歌を歌ったりね。私にとって唯一そうなれるのがライブかな。後にも先にもこれ1回きりという場が好きなんです。

平原綾香〔ひらはら・あやか〕
父はサックス奏者の平原まこと。祖父はジャズトランペッターでホットペッパーズの平原勉。2003年12月17日にホルストの組曲『惑星』の『木星』に日本語詞をつけた『Jupiter』でデビュー。2004年の日本レコード大賞新人賞や、2005年日本ゴールドディスク大賞特別賞をはじめ、様々な賞を獲得。2017年4月26日に10枚目のオリジナルアルバム『LOVE 2』を発表、5月からは13度目の全国ツアー『平原綾香 CONCERT TOUR 2017~LOVE 2~』(全20公演)を開催。夏にはミュージカル『ビューティフル』(帝国劇場)の主演も予定されている。
平原綾香オフィシャルサイト http://www.camp-a-ya.com/

 

特集

児玉隼人

今月の音遊人

今月の音遊人:児玉隼人さん「音ひとつで感動させられるプレーヤーになれるように日々練習しています」

9534views

音楽ライターの眼

連載10[多様性とジャズ]1960年代の公民権運動で結ばれたジャズと多様性の強い絆

3651views

NU1XA

楽器探訪 Anothertake

アコースティックピアノを演奏する喜びをもっと身近に。アバングランド「NU1XA」

3625views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!トランペットをうまく鳴らすコツと練習方法

130072views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

9804views

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

オトノ仕事人

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

6571views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

12718views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

3544views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

33246views

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う 結成30年のビッグバンド

われら音遊人

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う、結成30年のビッグバンド

10338views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6138views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10809views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

9804views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

23619views

ヨーロッパを活動の拠点にしているヴァイオリニスト佐藤俊介、オランダ・バッハ協会の次期音楽監督に決定

音楽ライターの眼

ヨーロッパを活動の拠点にしているヴァイオリニスト佐藤俊介、オランダ・バッハ協会の次期音楽監督に決定

10075views

重田克美

オトノ仕事人

スポーツやイベントの会場で、選手やお客様のためにいい音環境を作る/音響エンジニアの仕事

10241views

われら音遊人:Kakky(カッキー)

われら音遊人

われら音遊人:オカリナの豊かな表現力で聴いている人たちを笑顔に!

8717views

楽器探訪 Anothertake

人気トランペッターのエリック・ミヤシロがヤマハとタッグを組んだ、トランペットのシグネチャーモデル「YTR-8330EM」

5979views

アクトシティ浜松 中ホール

ホール自慢を聞きましょう

生活の中に音楽がある町、浜松市民の音楽拠点となる音楽ホール/アクトシティ浜松 中ホール

15596views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5815views

CLP-825WH

楽器のあれこれQ&A

はじめての電子ピアノを選ぶポイントや練習を続けるコツ

3341views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5883views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10809views