Web音遊人(みゅーじん)

小野リサさん

今月の音遊人:小野リサさん「ブラジルの人たちは、まさに『音で遊ぶ人』だと思います」

1989年のデビュー以来、ボサノヴァを歌い続ける小野リサさん。2013年には日本でのボサノヴァ普及の功績に対し、ブラジル最高勲章のひとつであるリオブランコ国家勲章を受勲。日本のボサノヴァブームの立役者である小野さんにお話をうかがいました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

アントニオ・カルロス・ジョビンの『イパネマの娘』ですね。演奏するのを含めれば、ですけど。今まで何百回、何千回歌ったかわかりませんが、いつでも新鮮に歌えるんです。この曲には軽快さもあるし、メランコリーもある。その時の自分の気持ちを映し出してくれるような気がします。この歌はほんとうに多くの人が歌っていますが、人によっても味わいが違います。ですから何回聴いてもまったく飽きることがありません。
そういえばボサノヴァを聴き始めた中学生の頃、ジョビンのアルバムを買いに銀座のヤマハに行ったことを覚えています。当時はボサノヴァのアルバムが買えるお店があまりありませんでした。都内では渋谷のレコード屋さんか、銀座のヤマハくらいでしたので、お小遣いをためてはよく銀座にジョビンやジョアン・ジルベルトなどのブラジルのレコードを買いに行きました。

Q2.小野さんにとって「音」や「音楽」とは?

音楽は私にとって生活の一部ですね。演奏も聴くことも大好きですが、「聴く」で言えばヘッドフォンステレオが発売された時の衝撃が忘れられません。それまで音楽は家でスピーカーの前で聴くか、自分で演奏する以外にはなかったんです。でもある日突然、外で歩きながら聴けるようになった。初めて外で音楽を聴いたとき、自分の視野が急に広がって「全部私の空間!」みたいな気分になりました。
「演奏」に関しては、中学生の頃、ブラジル音楽の演奏家になりたいと思い、1日に8時間以上、寝る時と食べる時以外はギターを弾いていましたが、練習というつもりはなく、とにかく毎日楽しくてしかたありませんでした。そしてプロになった今も、音楽を作ることが楽しいんです。そう思うと音楽は私自身の一部と言ってもいいかもしれません。

小野リサさん

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人をイメージしますか?

ジョアン・ドナート(※1)です。彼はとにかくずっと遊んでいるみたいに音に反応して、ケラケラ笑いながら音楽を作っているんです。アントニオ・カルロス・ジョビンもそうでした。ジョビンの家に行ったら、いきなりピアノでコードをジャーンと鳴らして「チャイコフスキー!」って叫んでニコニコ笑っている。彼らのような天才は、きっと子どものようなピュアな感性をそのまま大切にしているんだと思うんです。だから自然の音にも敏感で、普通の人なら気にとめないような音、たとえば鳥の鳴き声を聞いても彼らはそこから何かを感じ、インスピレーションを得て、メロディに昇華してしまうんです。
でもそういった天才たちだけでなく、ブラジルでは普通の人たちも、音で遊んでいる気がします。バーなどにサンバを演奏する流しのミュージシャンたちがやって来ると、そこで飲んでいる人がほとんど立ち上がって踊り始めるんです。もうカラダが自然に動いてしまう。まさに「音で遊ぶ人」だと思います。

※1 ジョアン・ドナート:ボサノヴァ黎明期から活躍する天才ピアニスト。1995年、小野リサはジョアン・ドナートと共にアルバム『サウダージ』を制作した。

小野 リサ〔おの・りさ〕
ブラジル・サンパウロ生まれ。10歳までブラジルで過ごし、15歳からギターを弾きながら歌い始める。1989年デビュー。ナチュラルな歌声、リズミカルなギター、チャーミングな笑顔で瞬く間にボサノヴァを日本中に広める。ボサノヴァの神様、アントニオ・カルロス・ジョビンなど著名なアーティストとも共演。日本におけるボサノヴァミュージシャンの第一人者としてその地位を不動のものにしている。
小野リサオフィシャルサイト http://onolisa.com/

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:今井美樹さん「私にとって音楽は、“聴く”というより“浴びる”もの」

4096views

ジャズとデュオの新たな関係性を考える

音楽ライターの眼

ジャズとデュオの新たな関係性を考えるvol.6

6613views

豊かで自然な音と響きを再現するサイレントバイオリン「YSV104」

楽器探訪 Anothertake

アコースティックの豊かで自然な音色に極限まで迫る、サイレントバイオリン™「YSV104」

10237views

楽器のあれこれQ&A

きっとためになる!サクソフォンの基礎力と表現力をアップする練習のコツ

14138views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

6812views

コレペティトゥーアのお仕事

オトノ仕事人

歌手・演奏者と共に観客を魅了する音楽を作り上げたい/コレペティトゥーアの仕事(後編)

6307views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

19215views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

4740views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

9640views

練馬だいこんず

われら音遊人

われら音遊人:好きな音楽を通じて人のためになることをしたい

4955views

山口正介 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

この感覚を体験すると「音楽がやみつきになる」

7233views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

26188views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

6514views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

20911views

船越清佳

音楽ライターの眼

「音楽があるから世界が美しい」そこを目指すフランスのピアノ指導とは/船越清佳インタビュー

814views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

楽器のデモンストレーション、解説、管理までをこなすマルチプレイヤー/楽器博物館の学芸員の仕事(前編)

9447views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

5751views

STAGEA(ステージア)ELB-02 - Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンで初めてオーディオファイル録音機能を装備

11504views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

4978views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

4596views

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンの取り扱いについて

楽器のあれこれQ&A

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンを安心して運ぶには?

91698views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

4106views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

22302views