今月の音遊人
今月の音遊人:林英哲さん「感情までを揺り動かす太鼓の力は、民族や国が違っても通じるものなんです」
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2018年3月に8年ぶりのニューアルバムとなる『TRUE WOMAN』をリリースし、3月から初のフルオーケストラコンサートを開催中のNOKKOさん。新しい季節の始まりとともにさらなるチャレンジを続けるNOKKOさんに、特別な一曲や音楽についての思いを伺いました。
松任谷由美(ユーミン)さんの荒井由実時代の『卒業写真』ですね。私が小学5年生のとき、ユーミンさんがデビューしました。ほかにはない歌詞、そして絶妙なタイミングで出てくるギュッと胸を締めつけられるような切ないコードに魅了されました。そして、私が中学生のころにリリースされたのがアルバム『COBALT HOUR』。中でも『卒業写真』にはとくに惹かれ、何度も繰り返し聴きました。友だちとピアノの弾き語りもしていましたね。
ユーミンさんの曲はしばらくの間リアルタイムで聴いていたのですが、仕事として音楽を選んでからは、あまり聴かなくなりました。ロックバンドとして活動するようになり、ユーミンさんと自分とは違うジャンルの音楽だと勝手にくくっていたんです。ユーミン愛好家の自分を封印するというか……。ユーミンさんにお会いする機会があっても、彼女を好きな自分を出してはいけないんじゃないかと思っていたんです。
ところが2016年、主人*がユーミンさんとお仕事をさせていただく機会があり、家にいらしたんです。デモテープの音が漏れ聴こえてきて「私なんかが聴いてしまっていいのかしら?でも、出来ることならこの感動を中学生の私にメールしたい!」。そんな気持ちになりながら、ふと考えました。洋楽をベースとする曲調でも詞を書くときは日本語と対峙しなければなりません。その言葉は、一体どこから来ているんだろう、と。そして、子どもの頃に親しんだユーミンさんと別冊マーガレットがベースになっていることに気付いたんです。すると中学時代に抱いていた自由な気持ちが蘇ってきて、ずっと蓋をしてきた気持ちが解き放たれた気がしました。
このときユーミンさんに思いきって気持ちをぶつけ、今回のニューアルバムの収録曲『ふふふ』を書き下ろしていただくことになりました。『卒業写真』もカバーさせていただいたので、ますます特別な一曲になりましたね。
*世界的に活躍するミックス・エンジニアのGOH HOTODA氏
人と人とをつなげてくれるものですね。ミュージシャンって不器用な人が多いので、スタジオに入っても音に頼ってコミュニケーションすることが結構あるんです。
私もコミュニケーションが下手な方です。でも、音だと表現できたり、詩にすると言いたいことがうまく言えたり……。音楽でしか伝えられないことってありますよね。音楽には、さまざまな隔たりを超える力があるんだなって感じました。
娘が赤ちゃんのころ、泣いている声と同じぐらいの音量で歌うと、不思議と眠りにつきました。赤ちゃんに言葉で言っても、ね(笑)。それも母娘のひとつのコミュニケーションだったのではないでしょうか。
子守唄や童謡、バンドも、そして今春挑戦するフルオーケストラとの共演でも「歌う」ことで最高のコミュニケーションができればと思います。
他人から見たらそこまでやるの!?と思うようなこだわりを持つ人たちをイメージしますね。超越しているところがあるというか。ドラマーの屋敷豪太さん、ギタリストの是永巧一さん、そして今回の楽曲制作でも真の匠の仕事を見せてくださったユーミンさん。私の周りには「音遊人」が多いと思います。主人もそのひとり。「忙しい」とか「くたびれた」とか言いながらも、ミキシングやマスタリングが止められないんですよね。
という私自身も「音遊人」なんでしょうね。昔、歌入れをやっていたときの話ですが、朝になってどうしても直したい部分があったんです。ところがその日は大雪。タクシーでも途中までしか行けず、車を降りてからは雪を踏み越えてスタジオにたどり着いたことがありました。当然、そこには誰もいなかったんですけれど(笑)。
そうやって人を驚かせてしまうことが多々あるようなのですが、私にとってはいたって必然なんです。音楽に携わってからずっと「音遊人」だったと思いますし、これからも多分そうあり続けるのではないでしょうか。
NOKKO〔のっこ〕
歌手・作詞家・作曲家。1984年REBECCA(レベッカ)のボーカルとしてデビューし、女性ボーカルバンドの先駆けとして活躍。1991年にレベッカの解散以降、1993年からはソロに転身し、ロックからバラードまでを幅広く歌う。2010年にはセルフカバーを含むカバーアルバム『Kiss』、2018年3月21日には、8年ぶりのニューアルバム『TRUE WOMAN』をリリース。
NOKKOオフィシャルサイト http://nokko.jp/