今月の音遊人
今月の音遊人:大塚 愛さん「私にとって音は生き物。すべての音が動いています」
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卓越したテクニックと楽しいステージパフォーマンスで、ギター・インスト界のトップを走る押尾コータローさん。そのプレイスタイルの原点となった音楽や、押尾さんにとって音楽とはどんな存在なのか、お話をうかがいました。
曲というよりは、僕が影響を受けて、めちゃくちゃ聴いたアルバムを3枚、紹介させてください。
まず、僕の師匠である中川イサトさんの1981年のアルバム『Homespun Music』と、82年の『Acoustic Serenade』。
高校生のときにフォークソングクラブに入って、当時は長渕剛さんやチャゲ&飛鳥が大好きだったのですが、先輩が「ほかにもたくさんいい音楽があるから聴きなさい」と、かぐや姫や風、井上陽水さんとかを紹介してくれたんです。そうして聴いているうちに、どんどんフォークソングが好きになって。それで自分でも見つけようと、いろいろ調べるうちに、岡林信康さんや加川良さんなどの“関西フォーク”にたどり着きました。ギター1本で完結していて、歌詞の自由な音楽に刺激を受けて聴き込んでいるうちに、イサトさんのギターに出会ったんです。ラグタイムをはじめとしたアメリカンスタイルのギターは、当時、ギターソロといったら『禁じられた遊び』くらいのイメージしかなかった僕にとっては衝撃的でした。そして、イサトさんが大阪でギター教室をされていることを知って、その教室に通いました。初めて教室に行った時、「僕、中川イサトさんの楽譜集の『ミスター・ギターマン』の1と2は完璧に弾けます!」と言ってしまって、イサトさんに「それは15年くらい前に出した本やな」と言われたんです。もうその時点ではさらに進んだ奏法をされていたんですよ。
もう1枚は、アメリカのアコースティックギタリストで、マイケル・ヘッジス(1953~1997)の1984年のアルバム『Aerial Boundaries(エアリアル・バンダリーズ)』にもすごく影響を受けましたね。完コピがしたくて、もう尋常じゃないくらいに聴き込みました。楽譜もアレンジも完璧で、そして深い。ギタークリニックに1回だけ参加したことがあって、そのとき間近で演奏を見たのですが、技術的には高度なことをやっているんだけど全然力んでない。あんなすごいギタリストはもう出てこないんじゃないかと思います。ヘッジスの影響でオープンチューニングのギターに興味を持った人も多いのではないでしょうか。
音楽って、その曲をよく聴いていた時の出来事の記憶とリンクしていますよね。その日の気持ちまで思い出したりとか。僕も聴く人の心に残るような曲を作りたい。そしてその曲の一音一音に思いを込めて演奏したいといつも思っています。
音楽は国境を越えます。たとえ言葉が通じなくても、そこに気持ちがあれば音楽で通じ合えるんですよね。何か楽器を「ポロ~ン」と弾けば、「おぉ、OK!」と反応して返してくれる、みたいな。音楽は世界を平和にできるものだし、人を幸せにしてくれるものだと思います。
思うんですけど、実は誰もが「音で遊ぶ人」、すなわち「音遊人」なんですよ。たとえ楽器ができなくても、みんな鼻歌を歌ったりするじゃないですか。人だけでなくて、たとえばウチで飼っていた犬も、焼きいも売りの車が来ると、その音と一緒になって遠吠えしていたから音遊人、じゃなくて音遊犬かな(笑)。
仕事が忙しかったり、いろんな事情で音楽から離れてしまったりするかもしれない。でも、みんな「音遊人」なんです。それを忘れなければ笑顔になれると思います。
押尾コータロー〔おしお・こーたろー〕
アコースティックギタリスト。1968年大阪生まれ。2002年にメジャーデビューすると、同年に全米でもメジャーデビューを果たす。オープンチューニングやタッピング奏法などのテクニックを駆使し、1本のギターで弾いているとは思えない鮮やかで迫力あるギターアレンジや、あたたかく繊細なギタープレイは世代を超えて多くの人々に支持を受けている。
押尾コータローオフィシャルサイト http://www.kotaro-oshio.com/
文/ 山﨑隆一
photo/ 福知彰子
tagged: インタビュー, 今月の音遊人, 押尾コータロー
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