Web音遊人(みゅーじん)

フジロック・フェスティバル 23年の思い出とベスト・アクト<後編>

フジロック・フェスティバルの23年の思い出と個人的ベスト・アクト、前編に続いて、後編では2007年から2019年のフェスについて綴っていこう。
毎年200組を超えるアーティストが出演するフジロックゆえ、1組のベスト・アクトを選ぶのは本来なら不可能だが、あえてやってみた。本記事をご覧になった皆さんもぜひ自分のベスト・アクトをピックアップして、フェスの思い出を蘇らせていただきたい。
そして2021年8月、また苗場で相まみえんことを!

●2007年
ベスト・アクト:イギー&ザ・ストゥージズ
イギー・ポップは1998年、2003年とフジロック参戦してきたが、この年はイギー&ザ・ストゥージズ名義での出演。最大のグリーン・ステージで暴れまくり、観衆に「上がってこい!」と煽動するが、あまりに大勢が上がって収拾が付かなくなって「お前ら降りろッ!」と、『蜘蛛の糸』のカンダタみたいなことを言っていた。

●2008年
ベスト・アクト:スパークス
スパークスと野外フェスというと相性が良くなさそうだが、夜のオレンジ・コートでスクリーン映写を含む2人編成でのショーは観衆の興味を拡散させることなく、じっくり集中して楽しむことができた。

●2009年
ベスト・アクト:メルヴィンズ
1999年の伝説の初来日から10年。奇をてらうことなく王道メルヴィンズ節で苗場の山々を揺るがしたが、2年後の来日時には大阪・名古屋公演を行った後、東京でサウンドチェック中に東日本大震災に遭遇、そのまま無念の帰国を果たすことになる。

●2010年
ベスト・アクト:ジョン・フォガティ
惜しげもなくCCRの名曲を連打に次ぐ連打。ロック・ファンなら誰もが知っているクラシックスが続き、ちょうど雨の降りが激しくなってきたところで「雨を見たかい」という、フジロック史上に残る奇跡のタイミングが実現した。熱いステージの後、再結成ロキシー・ミュージックがおとなしめの曲中心だったせいか、冷たい雨に凍えるほど寒かった。

●2011年
ベスト・アクト:フェイセズ
ブリティッシュ・ロックの伝説が、ロニー・ウッド(ザ・ローリング・ストーンズ)、イアン・マクラガン、ケニー・ジョーンズ(ザ・フー)、グレン・マトロック(セックス・ピストルズ)、ミック・ハックネル(シンプリー・レッド)からなるスーパーグループとなって蘇った。

●2012年
ベスト・アクト:ジェイムズ・ブレイク
2011年に初来日している彼だが、キーボードの音が大自然に染みわたり、グルーヴと共に異世界にいざなうライヴは野外ならではの幻想的なものだった。なお彼は英国ロックの重鎮コロシアムのギタリストだったジェイムズ・リザーランドの息子。

●2013年
ベスト・アクト:ナイン・インチ・ネイルズ
まだ発売前の『ヘジテイション・マークス』から「コピー・オブ・ア」でスタート。髪の毛が逆立つ緊張感とスペクタクルはフェス史上屈指のものだった。

●2014年
ベスト・アクト:アーケイド・ファイアー
とてつもなくビッグで、ベタなほどのメロディがあって、歌って踊れるアート・ロック・バンドで、グリーン・ステージを舞う紙吹雪が美しかった。

●2015年
ベスト・アクト:モーターヘッド
同年12月に亡くなったレミー・キルミスター、日本最後のステージ。明らかに体調が良くなかったが、残る生命のありったけを振り絞ってマイクに向かう彼からは滅びの美学が漂っていた。

●2016年
ベスト・アクト:デフへヴン
新世代エクストリーム・メタル・バンドがフジロック参戦。この日はレッド・ホット・チリ・ペッパーズがメイン、BABYMETALも出演するなど、ヘヴィなバンドが集まった。

●2017年
ベスト・アクト:クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ
2003年の単独ツアーの後、3回連続でフェス出演をキャンセル、14年ぶりとなる来日(ただしジョシュ・ホーミは2010年にザム・クルキッド・ヴァルチャーズでフジロック出演)。まさに待望のライヴは待った甲斐のある凄演だった。クイーンズは2018年の“サマーソニック”にも参加した。

●2018年
ベスト・アクト:ボブ・ディラン
ノーベル賞受賞後、初の来日公演。世界のどこであろうが、彼のいる場所が“ボブ・ディランのステージ”であり、彼が立っているあいだ、フジロックは彼のものとなった。ライヴ中の写真撮影はNGで、ステージ両脇のスクリーンでも映さないという徹底ぶりだったが、その演奏は観衆の胸に永遠に刻まれた。

●2019年
ベスト・アクト:CHON
新世代ギター・インストゥルメンタル・グループのCHONは前年の朝霧Jamで日本のフェス初参加を果たしたが、今回も鮮烈なインパクトを伴うステージを披露。さらに2020年2月の単独来日公演でもギター・ミュージックの新たな時代を、そして未来のフジロックを担う存在としてクローズアップされた。

< 前編に戻る

FUJI ROCK FESTIVAL’20オフィシャルサイト

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
ブログインタビューリスト

特集

今月の音遊人 小沼ようすけ

今月の音遊人

今月の音遊人:小沼ようすけさん「本気で挑まなければ音楽の快感と至福は得られない」

23954views

音楽ライターの眼

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、“本物の”『ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール』が半世紀を経て初公式リリース

2896views

ヤマハギター50周年を機にアコースティックギターのFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギターFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

20683views

楽器のあれこれQ&A

いつも清潔にしておきたい!ピアニカのお手入れ、お掃除方法

389839views

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

10441views

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

稽古から本番まで指揮者や歌手をフォローし、オペラの音楽を作り上げる/オペラ劇場の音楽スタッフの仕事(前編)

33863views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

8467views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

4124views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

26390views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

2804views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

6437views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28129views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

9671views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

16771views

音楽ライターの眼

連載45[ジャズ事始め]アジアをジャズの発信源にしようとした“エイジアン・ファンタジィ・オーケストラ”という試み

2132views

オトノ仕事人

ピアノを通じて人と人とがつながる場所をコーディネートする/LovePianoプロジェクト運営の仕事

19801views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

6882views

ヤマハギター50周年を機にアコースティックギターのFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギターFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

20683views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

7761views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6536views

楽器のメンテナンス

楽器のあれこれQ&A

大切に長く使うために、屋外で楽器を使うときに気をつけることは?

62039views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

7256views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11756views